8. 回帰



「生物の死体を普通にアンデッド化させると絶対ゾンビかスケルトンになっちゃうんだよね」


「へー」


「けどこのアンデッド猫はさ、アンデッドの性質は全部持ってるのにどれでもないじゃん?それで、同じ手法だと勿論この種類が出来たけど、その後普通に猫の死体アンデッド化させてもこれと同じになったん!だから、私という術者のイメージが凝り固まってたせいなのかなって」


「なるほど。それで?」


「人間を同じ手法でアンデッド化した結果として、これまた私のイメージのせいだと思うんだけど、吸血鬼になっちゃって。とりあえず動物召喚して血吸わせてるんだけど……」


「……俺を吸血鬼にしたいの?」


「…………はい。でもでも、日光が弱点とか十字架がどうのってのはかっこいいけど普通に弱すぎだし、それが無い吸血鬼にしようかなって。やってみたらできたし!」


「ふーん。まあ俺は熱海がやりたいって言うならなんでもやって欲しいし、いいよ。日光とかが平気なら熱海とのデートも今まで通りできるしな」


「あ、わかった。これってさ、つまり、異世界に来て得た知見を元に、足立をもっと最強にできるってことでは?例えば、魔力が無限の吸血鬼、とか……ごめんちょっと色々試して来るから、待っててね!」


…………吸血鬼か。でも弱点を消されるとなるとそれって、ただ趣味で血を吸ったりする人みたいな感じじゃないか?


 血を使うくらい魔法がある世界じゃ普通だしな。身体能力が上がっても、肉体強化ずっと使い続けてる人なんてそこまで珍しくもないし。


 まあ、熱海は俺に血吸われたいくらい思ってるだろうし俺を吸血鬼にしたいのは分かるけど。


 それから数時間経って、熱海が戻ってくる。


「なんでアンデッド化が禁断魔法なのか分かったわ。これ、死んだ生き物を好きなように作り替えて生き返らせられる魔法です。マジでイメージさえできればなんでもできる。つよい……」


「そりゃ強いな。んで、結局俺をどうする事にしたんだ?」


「ドッペルゲンガーにする。つっても、元の姿は今の姿に設定するけど……前前世だと私の思ったように足立は変身できたじゃん?それを再現しようかなって」


「なるほど、じゃあ……ここでやると血がアレだし空間魔法の中とかでやる?」


「いいね!そしたら……」


 2人とも中に入っても出られるように、出口を残したまま熱海の空間魔法の中に入る。


「ふふ、恋人を自らの手で殺すってのもちょっとヤバいけど可愛い彼女って感じでいいよね……どんな殺し方しようかな〜♪」


 その価値観には同意できないが、熱海に限って言えばそれは大正解だな、と思うなどしていると突然視界がブレた。あー、いきなり首チョンパってマ?


「足立って最早頭が無くてもかっこいいな……」


 あ、これもしかして熱海が殺された時の再現なのか?


「ね、足立。私が殺すって言ってても全然警戒しないで居てくれるとこ、好きだよ」


 熱海は俺の頭に近付いてそう言うと、俺の頭を持ち上げて俺にキスをした。


 多分これ、熱海が俺に見せたくてわざわざ俺の意識だけ長めに保たせてるんだろうな。じゃないとこんなに長く意識を保ってられないはずだ。


「じゃ、またね!」


 その瞬間、俺の意識は消えた。


 

  §



「さて、ドッペルゲンガーにするとは言ったがどんな特殊能力をつけようか……思い付いたやつとりあえず足してくか?ゆっくりアンデッド化させればそれくらいの時間はあるだろ……あ、その前に首くっつけなきゃ」


 死体にも治癒魔法が効くって謎だよなー。便利だけど。そんなこと言ったら魔法とかそもそも謎しかないか。


 しかし、不意打ちで首に切断系いかれても私相手だと驚かないなんて……やっぱ足立って最高のパートナーだなぁ。


 あ、顔かっこいい……。


 えーと。まず種族はドッペルゲンガー……ドッペルゲンガーってこの世界に居るのかな?まあいいや。

 

 ドッペルゲンガーで……元の姿は足立のまま、それから……変身した相手の能力も元々持ってる能力も使えるように……えーと、あと……今より超頭が良いとか?いいね。


 それで……あ、声とかも変身した相手のにできるように……人間以外にも変身できて、能力の持続時間に制限は無し……それから……あー……どうしよ。あくまでドッペルゲンガーの強化版に留めたいし……じゃあ、見た事あるものにしか変身できないけど変身した相手の能力は一生使えるとか!


 よし……詰め切ったぞ……あっあと、元の姿の時は体温とかあるし心臓も動いてるし生きてる人間そのまんまで、成長もして!


 はあ……なんとかなった……。何も忘れてないよな……?ま、なんか付け忘れてたらまた殺せばいいし!


 お、そろそろ起きそう。起きた時足立が嬉しいように……馬乗りにでもなっておくか。


「……ふふ。おはよう、足立♡」



  §



 熱海の声で、意識が浮上する。いや……正確には、意識を取り戻す、か?まあとにかく、俺は生き返った。恐らくドッペルゲンガーとして。


「ああ、おはよう……」


 特に感覚に変化は無いが、変身の仕方ならなんとなく理解できる。とりあえず熱海に変身するか……。


「おー。すご。えてか私ってこんなかわいいん?鏡で見てるから可愛く見えるのかと思ってたわ」


「……まあ、確かに俺がいくら熱海に可愛いって言っても客観視できてるとは到底思えないよな」


「それ。足立はいつもは物事が割とちゃんと見えてるけど、私に関してだけはちょっと私がつけた設定のせいでアレだからなあ。しっかし実にかわいいですね……」


「そうだな」


「でもやっぱ、私可愛いってだけのヒロインじゃなくて可愛くて格好良いヒロインがいいなって!」


 どちらかというと可愛いでも格好良いでもなくちょっとヤバいとかその類じゃないか?勿論超可愛くはあったけども。


「え、そうかな?私そんなヤバい?」


「まあ……うん」


 しれっと突然頭の中読んでくるじゃん。いいけど。


「ど、どこが?もしかしてあのGG、あざしたってやつ?あれはちょっと格好付けただけのつもりだったんだけど……」


「……その感覚はヤバい、だよ。いくら転生者だっつっても他の人を首と胴体泣き別れにした直後なのにそんな事言うのヤバくない?」


「たしかに……めちゃヤバかも……」


……言われたら理解できるとこ、ヤバいのに常識人で好き。いや……もしかして俺もこの感覚変なのか?まあいいか……。


「…………ま、いいか!ちょっとおかしいくらいじゃないと格好良いヒロイン務まんないよな!」


 そうかな。別にそうは思わないが。おかしくなくて格好良いヒロインなんて沢山居るんじゃないか?


「いや、そりゃそーだけども。もー、さっきからマジレスしすぎだよ〜」


「あぁ、ごめん。確かにそうだな」


「……あ、そうだ。つけた能力説明しとかないとだよね」


「ああ、頼む」


  §


 それから説明を受けた俺は数ヶ月、とりあえず変身できる人と能力を増やす為に街に出て適当に歩きながら街の往来を観察した。その間熱海はアンデッド研究に没頭、って感じで……まあ、いつもの俺達だな。


「おつ〜」


「ん、熱海。おつ。どうしたん?」


「アンデッド研究が一区切りついたんで見て欲しくて来た。なんかいい能力とか手に入れた?」


「いやー、やっぱ市民にそういうの持ってる奴はそうそう居ないな。強い人がいっぱい居るとこ行かなきゃかねー」


「お、それはつまり闘技場に行くということですかい?」


「そうだね、この能力を活かしたいならそうするのが1番良さそう。そっちはどう?」


「生きてる物を死体判定にしてアンデッド化させたり生き物じゃないただの物とかをアンデッド化させたり、そりゃもう大変ですよ。なぁんでもできる!って感じ。この前の実験で超硬くしたボウルをアンデッド化して超硬いゾンビ作ったりしたよ。こら禁断魔法の風格出とりますわ」


「それはすごいな……」


「……待って、帝国の闘技場ってもしかして魔術師だけのとかもある?」


「あー……確かあったような気がする。」


「そしたら私達も出れるやん!まあ足立は観察に専念してもらうとしても……私どれくらいいけるかなー。言うて私そんな強くないからな……アンデッド軍出せてもなんだよな……」


 確かに、魔術師同士の戦いは熱海くらいのレベルになると空中戦が当たり前だしな。一撃に全てを込めて魔力量勝負するか、いかに防御貫通攻撃をするか、或いはいかに防御結界やら式やらを外させるか、無効化するか。


「無効化なあ。試験の時の罠に使われたアレは同意無いと使えないし……魔力量勝負かあ。そりゃ赤ちゃんの時に増やしまくりはしたけど才能には勝てねーし。いくら魔力消費と威力の効率良くしても才能あったら2倍って。転生者が魔力量チート貰って更に赤ちゃんの時に最大量増やしたらそんなん負け確やん!」


「それなー。禁視とか闘技場で使えるわけないし」


 そういや説明してなかったか?

 学園に入学する前魔法の本沢山読んでた頃に、息抜きで読んだ別ジャンルの本のいくつかにこう書いてあったんだ。

 

 この世界には他にも転生者が居て、この100年で突然現れるようになった。

 その転生者達がこの世界の魔法理論を急激に発展させているために、魔法理論の歴史は浅く、学ぶことも12年あればできてしまう。

 

 それからその転生者達はそれぞれ何かしらの才能に秀でていて、

 そしてそれらの記述から推測できたこととして、どうやら俺と熱海は魔法を扱う才能がずば抜けているらしいこと。


 俺と熱海の、転生者特典的なアレが同じってのは、元々俺達が1人の人物だったからなんだろうか。


 まあそれはいいか。要は、この世界って強さにおける魔力量の比重デカすぎるから魔力量チートとかある転生者が居たら、まあ居るだろうけど居たら、相当なことがないと勝てないよなあって事だ。


「まあ行ってみないことには、よな!大体全部魔法でどうにかできるし、金は研究資金のアレ使えばいいし、今行こ!」


 熱海は俺の了承も得ずに俺の手を握り、そのまま連続転移を始める。


  §


 数十分後、俺達は帝国の闘技場、その受付に立っていた。


「はい、魔術師杯ですね。ではこちらの規約をお読み頂き、御同意頂けましたらこちらにサインをお願い致します」


 渡された紙を魔法で読み取ったが……どうやら魔術師杯に機構員は出ちゃいけないらしい。過去に誰かがやらかしたとかか?他にも転生者は転生者杯にしか出れない、みたいなルールにも引っ掛かってるな。


「すみません、私達機構員とあと転生者なので出れないみたいですね。お手数お掛けして申し訳ありません……」


 熱海が受付のお姉さんに紙とバインダーとペンを返却する。


「では転生者様専用の観覧席へご案内致しましょうか?」


……機構員とか転生者とか言われて驚かないのは、受付やってるとそうなんのかな。機構員も転生者も普通の人なら驚く程度には少ないはずだし。


「あ、じゃあお願いします……」


  §


 その後はその日の試合が無くなるまで闘技場を見てたが、転生者が出てこなくてこの世界の強い人も居ない日に見てもしょうもないなって感じで。


 結局その日は帝国を観光して、宿を取って寝て、翌朝熱海の連続転移で統制機構本部に帰ったんだが……。


「リスティア・オープナーを追放しろ!!!」


 まあ、帰ったら村が火の海的な事が起こっていた。


 別に街は火の海じゃないが、統制機構本部は……酷い有様だった。今まで、街に住む人達は機構の恩恵があるから機構を攻撃するなんてしなかったが……。


「リスティア・オープナーは私欲に溺れて世界を破滅させようとしている!!!」


……一体何があったんだか。


「すみません、何があったんですか?私達さっき帰ってきたばかりで……」


 ちょっと後ろで困った顔して見てた野次馬?かなんかに熱海が聞きに行く。


「え?ああ……リスティアさんが転生者で人体実験してたってのが証拠写真と共にばら撒かれたんですよ、統制機構本部の屋上から。リスティアさんって転生者の味方ってイメージでしたからねー。」


「なるほど……」


「でも、あの写真ちょっと疑わしいなって僕は思ってて。だって、まあ転生者に人体実験してるなら日常的に見てて当たり前になってそうな場所を興味深そうに見てるんですよ?まあ、仮にあれが嘘だとしても、そういうのを興味深そうに見てたってだけで良くないですけどね。いやあ、この街結構好きだったんだけどなあ……」


「……教えてくれてありがとうございました。今払えるものは持ってないんですが、そうだな……僕達機構員なので、何かあったらメールしてください。力になれるかもしれません」


 熱海は、メールアドレスをその人に共有した。熱海ってなんかこういう時に聞く人を選ぶのと邪魔にならない相槌打つの上手いんだよな……。


「では。ありがとうございました」


 熱海が俺の元に戻ってくる。


「もう機構がこうなって研究できないとなったらさ、やりたいことリスト(仮)に居座ってる国への復讐だけ済ませてスローライフせん?」


「ああ、いいね」


「そうと決まれば王国へGO!」


 またもや唐突に手を握られ、転移。


 あー、やっぱ王国って街の雰囲気は最高だよな。


「そういえば金のことも考えなきゃなあ。あれ、そーいやドラゴンの金って結局どうしたんだっけ?」


「スマホ買った後は使ってないまま冒険者証に入ってるはず」


「おー。もしかして私らって意外と強い?」


「さあ……一般人なら沢山見たけど強い人ってまだ俺達を殺した奴ら以外に見れてないからな。そいつだってちゃんとは見れてないし」


「だよなー。しかし、王国への復讐かあ。アンデッド軍でいけるかな?」


「…………分からない。ただ、負ける可能性は大いにあるよ。前に配信で聞いた0ランクの人達が俺たちより強い可能性は高いし」


「そっかあ。まあ、機構の支援がないならこれ以上強くなる気起きんしやってみて負けたらそん時考えりゃいいよ。死んだら死んだでラッキー、捕まったらまあそういう時もあるよねって感じで。ほら、主人公やるなら自業自得からの長い苦しみはやっとかなきゃでしょ?」


「……分かった。なら、やろう」


「させないよ」


  §


 気付いた時には、俺達は森の中に居た。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る