第136話
街を出て、10日が経った。
「見えてきたわね。あの街よ。あそこに聖女様がいるわ」
隣に座っているシャネル様がそう言ってきた。
あそこに、聖女様が……。
「……なら、早く行こ」
俺もナナミと同じ気持ちだ。
……いや、ナナミは俺の腕に早く治って欲しいって思ってくれてるからこその言葉だろうし、正確には違うんだけど……早く聖女様のところに向かいたいという思いだけは同じだ。
「……私だって早く向かいたいけど、馬車の速度は変えられないわよ」
「……ん……街についたら、直ぐ聖女のところに行く?」
「私はそのつもりだけど……いいわよね? アルス?」
「はい、もちろんそれで大丈夫ですよ。俺も早く腕を治したいですしね」
俺が本当に治したいのは聖女様本人なんだが……そんなことを正直に言う訳にはいかないから、俺はそう言った。
なんでリノア様が……聖女様が苦しんでるのを知ってるんだって話だし。
そもそも、今言ったことだって嘘では無いしな。
もう腕を失ってから約40日が経ってしまっているとはいえ……やっぱり、腕が無い生活は慣れないからな。早く治して貰いたい。
……とはいえ、治して貰うってことは、リノア様にまた苦しい思いを……いや、俺がリノア様の体を治した後、嫌そう……というか、怖そうな思いをしてそうだったら、やめてもらえばいいだけの話しか。
そういえば、今更なんだけど、どうやってリノア様に治療を言い出そう。
さっきシャネル様やナナミに対して思ったように、なんで俺が体のことを知ってるんだって話になるよな。
……治癒魔法とはいえ、勝手にっていうのは不味い、よな。……いや、こっそりとなら、平気か?
「……お兄ちゃん?」
「ん? ど、どうしたの? ナナミ」
「……約束、覚えてる?」
「ッ……もちろん、覚えてるよ」
ナナミを抱きしめながら頭を撫でるって話だよな。
約束したかは……ちょっと微妙だけど、もちろん、腕が治ったらしてあげるつもりだ。
……大丈夫。最悪聖女様に治して貰えなくたって、腕のいい治癒士なら治せるだろうし、そっちに頼めばいい。
シャネル様やシャネル様の両親には迷惑をかけることになってしまうけど……それは謝ろう。
本当の最悪の最悪は本で欠損した腕の治し方、と調べれば出てくるとも思ってるしな。
「約束ってなにを約束したの?」
「……ギュッとしてくれながら、頭、撫でてくれる」
「…………それ、私にも……な、なんでもないわ。……ば、馬車が止まったわね。早く降りて、聖女様のところに行くわよ」
「あ、は、はい」
馬車から降りるシャネル様の後をナナミと一緒に慌てて追った。
そして、シャネル様のおかげで特に待たされることなく直ぐに街の中に入り……大きな教会が見えてきた。
あそこにリノア様がいるのか。
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