第135話
長いようで、短い時間だったなぁ。
大変だったけど、終わってみれば達成感だってある。
……リノア様のことを抜きにしても、行ってよかったな。
「ナナミ、疲れた?」
そんなことを思っていると、ナナミが俺の膝の上にこてん、と頭を乗せてきたから、優しくそう聞いた。
「……お兄ちゃんの方が、疲れてる。…………逆にする?」
逆?
……俺がナナミの膝に頭を乗せるってことか?
「い、いや、大丈夫だよ。ナナミの耳を触ってると、癒されるし、むしろそのままでいてくれる方が疲れが取れるよ」
ナナミは同い年ではあるけど、兄と慕ってくれ、俺だって妹みたいな存在と思っている子だ。……そんな子に膝枕をされるのは……流石に恥ずか──ッ。
「……ありがとう、お兄ちゃん。……お兄ちゃん?」
「い、いや、なんでもないよ。よ、よしよし」
ついナナミの唇を見てしまう。
……あれが現実だったのか、夢だったのかは未だに分からない。
でも、妙に現実味があって……ッ、だ、ダメだ。今は考えないようにしよう。
もしも、もしもあれが俺の妄想でも夢でもなんでもなく、現実だった場合はちゃんと向き合うつもりだけど、まだリノア様を助けられた訳じゃないんだから、今考えることじゃない……はずだ。
……シャネル様の方についても、考えなくちゃだしな。……もちろん、あれが現実だったら、だけどさ。
……ナナミは身分的にもまだともかく、シャネル様には本人に聞く訳にもいかないし、どうしたらいいのか全く分からないけど……が、頑張ろう。
改めてそう決意を決め、ナナミの頭を撫でていると、ナナミの体がある方とは反対側に突然馬車の中で立ち上がったかと思ったシャネル様が腰を下ろしてきた。
「し、シャネル様? え、えっと、何かありましたか?」
乗合馬車では周りに知らない人だっていたし、くっついて座っていたのは仕方ないとしても、今は知らない人なんて1人もいないし、そもそも場所はついさっきまでシャネル様が座っていた場所が空いている。
だからこそ、俺はつい困惑してしまいながらそう聞いた。
「……何よ。……理由がなかったら、私は隣に座っちゃダメなの? ……ナナミは良いのに」
「い、いえ、そういう訳では無いですよ」
「……なら、私の勝手でしょ。…………わ、わ、私が、あ、あんたの、と、隣が良かったのよ。……悪いの!?」
「ぇ、ぁ、い、いえ、わ、悪くない、です」
むしろ嬉しいとさえ思う。
……ただ、これを正直に言うことは……出来なかった。どうしても身分という言葉が俺を邪魔してくるから……なんてのは言い訳か。
「な、なら、尚更いいじゃない」
「は、はい」
そして、馬車を止め夕食を食べる時間まで、その日は殆ど会話が無く終わった。
とはいえ、全く気まずくはない……ゆったりとした時間だったと思う。
ナナミとシャネル様も同じ思いだったら嬉しいな。
─────────────────────
あとがき。
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