大好きな幼なじみ(2人)に告白されました

日諸 畔(ひもろ ほとり)

これは夢です(たぶん)

 あの夢を見たのは、これで9回目だった。ちゃんと数えたわけではないけど、うん、たぶんそれくらい。

 白昼夢に近いものだと思う。それか、膨らみすぎた妄想で見た幻覚かもしれない。

 どちらにしても、現実では考えられないような幸せな体験だった。だから、今回も同じだと思っていた。

 大好きな二人の友達が、同時に自分のことを好きと言ってくれた。そんな都合のいいことなんて、あるはずがないから。でも、夢に見るほど、望んでいたことだから。


「そっかー、嬉しいよ二人とも大好きだよ。ずっと前から」


 昼休みは終わりがけ。校舎と校舎の間にあるベンチには、柔らかい日差し。


「えっ?」

「えっ?」


 右側に座る芳人よしとと左側に座る沙知さちが、揃って声をあげる。

 短く刈り込んだ髪が素敵な芳人と、少しだけふっくらした頬の沙知。二人とも大切な友達だ。実は、友達以上を望んでいたりするけど。


「それは、オーケーと、受け取っても?」


 芳人がひとつずつ言葉を区切って質問してくる。いつもはハッキリ話す彼にしては珍しい。たまにはそういうのもいいかもしれない。


「うん、芳人のことずっと好きだったし」


 全力でニッコリ笑って、芳人の後頭部を触る。刈り上げた髪がシャリシャリして心地いい。


「待って、私は?」


 沙知がこちらに身を乗り出す。石鹸なのか、シャンプーなのか、すごく良い匂いがした。


「もちろん沙知も、前から大好きだよ」


 今度は沙知の方を向いた。左の膝に置かれた、柔らかな手を握る。


 夢なのだから、いつもより大胆なことをしても許されるはずだ。こんなこと、現実なら恥ずかくてできるわけがない。


「ええと、つまり、亜紀あきは俺と沙知が好きと?」

「私と芳人、二人とも?」

「うん、小学生の時からね」


 とてもかっこいい芳人と、とても可愛い沙知。恋愛的なものか、友情的なものかはわからない。でも、知り合いった頃からずっと惹かれていたんだ。


「おいおい、どうするよ?」

「ね、まさかこんな展開になるなんて」


 二人が困ったように視線を合わせている。夢なのに、不思議だ。


「ええと、亜紀、私の事わかる?」


 沙知が目の前で左手を振る。


 ん、なんかおかしい。

 いつもなら、妄想はそろそろ終わって、嬉しい気持ちと寂しい気持ちで現実に戻る頃だ。


「亜紀、くすぐったいから、そろそろ……」


 右手のシャリシャリした感じも、なかなか消えない。


「んんんんんん?」


 思わず首を傾げたところで、気付いてしまった。もしかして、これは現実なのかもしれない。

 背中に冷や汗が伝う。

 とどめを刺すように、午後の始業五分前を知らせるチャイムが鳴り響いた。


「ああと、ええと」


 右と左を交互に見つめる。二人は揃って真面目な表情を浮かべている。


「そうか、亜紀は俺の事好きなのか」

「亜紀、私の事好きなんだね」

「……うん、すごく」


 今更嘘もつけないし、つきたくもなかった。

 二人とも好きだなんてワガママ、きっと受け入れられないと思う。両方から嫌われてしまってもおかしくない。


「じゃあ、俺らずっと一緒だな」

「ねー、離さないよー」


 芳人が肩を叩き、沙知が抱き着いてきた。


「えっと……いいの?」

「もちろん。な? 沙知」

「芳人の言う通り。むしろ、嬉しいくらいだよ」


 二人の反応は、予想外だった。喜ぶ前に困惑がきてしまう。もしかしてまだ夢なのかと疑ってしまうくらいだ。


「そろそろ教室戻らないと」

「だね、怒られちゃう」


 大好きな友達以上になった二人に、左右から手を引かれ、ベンチから立ち上がった。

 たぶん、いや、絶対に、この温もりは夢じゃなかった。


「ねぇ、亜紀はどうする?」


 廊下を歩きながら、沙知が問いかける。同じ質問をするように、芳人もこちらを見ていた。


 両方選べる事もあったけど、どちらかしか選べない事もある。だって、芳人と沙知はもう決めているから。


 十四歳の春、自分の性別を自分で選べる社会。選べてしまう社会。

 ジェンダー論と生物化学の行き着く先は、愛情と友情を明確に区別させる。


 優柔不断な自分は、まだ決められずにいた。

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大好きな幼なじみ(2人)に告白されました 日諸 畔(ひもろ ほとり) @horihoho

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