(十七)お話は食事が冷めない程度に?
「はい、お待たせしました~」
花世ちゃんと色々お話していると、注文していた料理が運ばれてきた……ギャルのお姉ちゃんによって。
「餃子定食、2つで~す」
「ありがとうございます」
「ほあぁ~、うまそう……今日も」
今回オレがオススメしたのは、餃子定食だった。餃子5個にライスとスープそして漬物のセット。花世ちゃんとオレが、この餃子定食を頼んだ経緯は……。
「龍治くんのオススメとか食べたいものを教えてくれますか? それを、わたしも注文しようかな……」
花世ちゃんに頼られたことと、食べ物の話ができることに嬉しくなったオレはノリノリで花世ちゃんにオススメのメニューを紹介したのだが……。
「全部おいしそうで決められない……」
「はい、そういうことになりますね……。オレも花世ちゃんに食べてもらいたいもの、いっぱいあります……。今、自分が食べたいものも……」
あまりに楽しくなってしまったオレは、自分でも想像していなかったくらいの数のメニューを、花世ちゃんにオススメしてしまったのだ。こういうときは2、3個の紹介が平均的だと思われるが……食い意地の張っているオレは、どうしても語り過ぎてしまう。
「何か、すみません……」
「えっ! そんな……謝らないで、龍治くん! わたしのために色々オススメを教えてくれて、ありがとう!」
「そ、そうですか……」
オレが花世ちゃんの優しさに救われていると、
「ぷはーっ! やっぱり餃子には、ビールだなぁ~!」
「何を言っているのよ、お父さん! 餃子にはライスに決まっているじゃないの!」
「ハッハッハッ。大人になれば、お父さんの気持ちが分かるさ! でも、お父さんは餃子とライスも好きだぞ!」
「なぁ~んだぁ。それなら、いーやっ!」
とあるお父さんと娘さんの会話が耳に入ってきた。続けて「フフフ」という、お母さんの声も。その家族の微笑ましい会話を聞いたオレは、パッと閉じていた口を開いた。
「花世ちゃんは餃子とライス、いけます?」
「はい! というか、いつも餃子は白ご飯と食べています!」
「オレも同じです。めっちゃ好きです」
「うんうん、やっぱり良いよね~」
「何だか、あの会話を聞いたら食べたくなっちゃいました……」
「わたしも! それなら今回は、餃子定食にしようかな?」
「そうですね! そうしましょう!」
そしてオレは「すみませーんっ」と餃子定食2人分を注文したのであった。
「いただきまーすっ!」
再び声が揃ったが、そんなこと花世ちゃんは気にもせず、笑顔で箸を伸ばしていた。オレは「あっ、またハモったぞ!」と、つい花世ちゃんをチラッと見てしまったが。まあ確かに……そんなことは、どうでも良いのかもしれない。気にせず、オレも食べよう。
「おいしい~っ」
「うまっ!」
花世ちゃんもオレも、餃子の味に感激していた。やっぱり皮も餡も最高だ。この店の餃子の皮は厚めだが、白飯が欲しくなってしまう。ご飯が進む。せっかくおいしくて幸せなのだから、炭水化物の過剰摂取だなんてツッコミは野暮とさせていただきたい。
「オレは25%中国人ですが……餃子ライスはやめられません。大好きです」
「ああ! そういえば中国だと、餃子は主食なんだっけ!」
つい語ってしまったオレに驚きもせず、花世ちゃんは言葉を返してくれた。しかも中国の文化の話を振っていただけるなんて……! 驚いたのは、逆にオレの方であった。
「ご存知でしたか……!」
「うん。前にテレビで放送されていた、中華料理の特集で知ったの。中国では水餃子がメインで、焼き餃子は……おまけのようなものとか。だから焼き餃子を人に出すのは失礼に値する、らしいね」
「おお……!」
オレは花世ちゃんの知識披露に、ついつい拍手をしてしまった。
「あっ、ごめんね。気を遣わせちゃって」
「い、いえ! 全然!」
「みっともないよね……。おばさん、調子に乗っちゃったみたい……」
あれだけ楽しそうに会話をしていた花世ちゃんが、恥ずかしそうに俯いてしまった。顔が赤くなっている。
「そんな……頭、上げてください! 中国や料理の話ができて、オレは楽しいし嬉しいです! あと花世ちゃんは、おばさんじゃないです! お姉さんです!」
「あ、ありがとう……」
花世ちゃんは顔を上げてくれた。まだ顔は少し熱そうだけれど、笑っていたのでオレはホッとした。
それにしても花世ちゃん、また自分のことを「おばさん」だなんて……。わざわざ言ってしまうのは、やはりオレが年下であるからだろうか。
「また気を遣わせちゃったね。わたしってば何してんだろ」
「オレは思っていることを、はっきり言っただけです!」
あ、その言い方は生意気だったかな……と気にし始めたら「そっか。ありがとう」と花世ちゃんは笑って返してくれた。
やっぱり良い人だ、花世ちゃん……。
「じゃ……じゃあ冷めないうちに食べましょうか……」
「うん!」
食事を再開させようとしたオレに、花世ちゃんは明るく頷いてくれた。その後は花世ちゃんもオレも、夢中になって餃子定食を食べていた。
更に、その後……自分が自責の念に駆られるということを、まだオレは知らずにいる。
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