【kac20254】告白したくて、春

麻木香豆

第一話

 ……あの夢を見たのは、これで9回目だった。 







 それは卒業式の前の朝の出来事から始まった。……長く退屈する校長や来賓の挨拶。


 待ちに待った卒業証書授与式で大好きな先輩の名前が呼ばれるだけでテンションが上がった。

 先輩のほうが緊張してそうだけどあいも変わらずのクールフェイスでそれらしさはわからないのは流石だ。


 それを見るだけでテンションが上がるだなんて変だけども。

 何故ならこの式が終わったら私は先輩に告白するのだ。2年した片思い、その間に色々と機会を使ってアピールをしてみたり偶然を装って会ってみたり、生徒会に入ってみたり。接点はたくさん。たくさん話もした。


 でもなかなか進展しない。思わせぶりな先輩……。


 だからこそ……彼が卒業する前に告白するの!


 そして式は終わった。


 先輩はこの後部室に向かって荷物を取りに行くのだ。3年生一人の唯一の弓道部。流石に弓道は出来なったけど応援に何度も行った。


 ライバルもたくさん……ライバルに先に越される前に……!!!


 先輩に告白して第二ボタンもらうんだから!!!!


 だから……部室まで坂道を登って……




 えっ……?


 何か足にぬかるみが。


 しまった。

 慌てて走ったから上履きのまま走ったからだ。この時ばかりは大雑把な自分を呪った。


 そして私は足を滑らせ坂の上からゴロゴロと落ち、一番下の岩に頭をぶつけた。

「わー!!!」

 誰かの叫ぶ声。誰……?!


 意識が……遠のいていく……。





 先輩……せんぱ……

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