第7話 アデリナ・グランハート

 多数の組合員が出入りする、市街地の大きな建物内にあるギルド。見るからに強そうな鎧をまとった傭兵男、血気盛んな若い少年少女、金を持っていそうな男性は受付で依頼を申請しているのだろう。

勇者カイ御一行様が来た瞬間、周りの者達の視線は彼らに集まった。


「おい、あれが勇者カイか……」

「そんなに強そうに見えないが」

「だが、前にいる男はオルレアン家の奴じゃないか、それに魔法使いのカリーナ・リフャルドに、弓使いのアデリナ・グランハートまで……」


勇者カイのお仲間はこの国では有名人らしい


「おい、この鳥はなんだ?」

「結構でかいぞ! おれの食い物喰うんじゃねえぞ!」



 アデリナが1人で受付まで行って、今受けられる依頼を聞いている。アデリナはAランクの冒険者だが、今回は1人で依頼をこなすていで進める為、受けられる依頼はⅭ級の依頼に限られる。


「しかし、意外だな! お前のような不愛想な奴は1人体制ソロの事が多いのに、意外と寂しがり屋なのか?」

「あ、あのその鳥は魔物でしょうか? アデリナ様の使い魔でしょうか?」

「ああ、気にしないでくれ、受付のお嬢さん。このようにちゃんと知性がある。」


俺は不愛想エルフに聞いてみた。この女がパーティを組んで上手くやっているイメージが湧かないからだ。それに森人は昔、迫害を受けていたこともある。この国じゃもうほとんどないが、他の国では未だに差別が残っている場所もある。


「ああ、弓使いは後方攻撃が主だからな、盾になってくれるやつがいると心強いし、なによりその方が効率がいい、それに私は自慢じゃないがA級の依頼モンスターを討伐出来るほどの力はない、ほんと……魔法の差異があったら良かったのにな……」

「魔法ね……確かに、幻術師じゃあ魔法弓使いマジックアーチャーにはなれないな、100年近くも生きているくせにA級いや、C級の冒険者か……、ちょっと辛いな。」


アデリナは「ああ、才能がなかったんだ」と、悲しい返事を返してくれた。

まあ確かに、今更他の仕事探すって言ってもキツイのは彼女が一番分かっているのだろう。C級と言っても食うに困ることは無い。

ただ、世界に名を残すとか、国をまたいでその名を轟かすとかは出来ないだろう。


「いっそ、男でも作って家庭でも持ったらどうだ?」

「おいおい、この鳥はデリカシーと言うものがないのか? まあ、良い相手がいたらな! 出来れば長命種の同じ森人がいい。」


森人という種族は長い寿命もあってか、生殖本能、性欲が薄い、年々酷くなっている気がするこの種族は、男は短小、女は貧乳と言う噂までよく聞くほどにだ。

現にこのアデリナも貧乳で貧相な体をしている。そっちが好きな男もいるだろうが、抱いたら骨ばっていて気持ちよくなさそうだという事は、鳥の俺でさえ容易に想像できる。

あと、コイツも言っていたが寿命が長いせいで他の種族と交わろうとしない、理由は早くにパートナーが先にいってしまうからだ。それを嫌ってエルフ共は、ただでさえ少ない種族を選んでいるのだから絶滅危惧種になるのは当たり前である。

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