【KAC20253】妖精と莉菜子さん ~俺を追い出したい事故物件の莉菜子さん~

マクスウェルの仔猫

一人ぼっちは寂しいもんな。


 うわああああん!


 ん?

 どこのテーブルだ?


 ……あそこか。

 6番の家族連れ、小さな女の子。 


「ぐすっ……うわあああん」

「もう食べられないでしょうに。ダメよ」

「うわああん!」

「お客様、どうかなさいましたか?」

「あ、ごめんなさい! この子が景品付きのデザートセットをもう一つ食べたいって聞かなくって……すぐに静かにさせますから!」


 ああ、今回のコラボは女の子に大人気のアニメらしいからな。よくわからんけど。


「大丈夫ですよ」


 手に持ってる人形じゃ満足できなかったのか?

 どれどれ。


「どうしたのかな? 他のお人形さんが欲しかったの?」

「妖精さんひとりぼっちじゃかわいそうなの! お友達も連れて帰るのぉ!」


 ああ、そういう事か……となると、アレの出番か。このキャラ以外、ね。


「少々お待ちくださいね」

「え? あの……」



「タッチ決済でよろしいですか?」

「はい……あの本当にありがとうございます!」

「えへへ! お友達ぃ!」


 このキャラいらない、って置いてった人形の中にこの子のお気に入りのキャラがいてよかった。というか店長の優しさ成分のお陰だな。お客様の笑顔第一だもんな。


「『今日から一緒によろしくね。僕チルルっていうんだよ!』『私、リナ! 仲良くしてね!』」

「本当にありがとうございます。店長さんにもよろしく伝えてください。やっぱりこの店は最高です、また来ます」

「はい。またぜひいらしてください」

「ほら、美香。お兄さんにお礼言わないと」

「お兄ちゃん、ありがとう!」


 よかった。お父さんもお母さんもこの子もみんな笑顔だ。店長のお陰だな。

 

 それに一人ぼっちは寂しいもんな。







「だが、アンタを友達認定するつもりはない」

『帰ってくるなり何なの?!』

「妖精ってお札や塩で溶けないのか? ほら」

『またア〇シオ! というか溶けちゃったら妖精じゃなくてそれはナメクジなんじゃないの?!』

「アンタ、ナメクジだったのか」

『ねえ、言葉のキャッチボールって大切だよ? 投げて、キャッチ~。キャッチして、投げ返す~。ねえ、何で私が妖精なの? はい、投げ返してみて?』

「ふあ」

『聞いてもない?!』


 あ、また動きがカクカクしてきた。妖精というよりはホラー系が似合うなコイツ。幽霊とは認めんがな、いないし。


『でも妖精って言われると嬉しいかも! ふわりふわり〜ひらひら! 私は妖精。うふふっ』

「そうか、お大事にな」

『そっちじゃない! キャッチボールぅ!』


 ま、騒がしくもあるが……仕事以外の会話って案外必要なんだな。ま、コイツが出ていくまでは俺のに付き合ってもらうとするか。


「よし、ご苦労。後は自分の居場所に戻っていいぞ、ハウス」

『何でクローゼット?!』

「EDOさんみたいでいいだろうが」

『?! ……えへ、EDOちゃん、EDOちゃん♪ 私は歌姫〜♪』


 あ、入りやがった。

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