第14話 エヴォル商会の影
俺はゴンザレス王国にある店を周り、バラムの世界地図を探した。
ゴンザレス王国には飛行船なんて物は無いらしい。残念ながらセントドグマには自力で飛んで帰るしかないのだ。
「セントドグマ、セントドグマっと。うげっ、ここから結構遠いな」
店で見つけた世界地図を見てみると、ゴンザレス王国から東へ6000kmほど離れたところにセントドグマを確認した。
風のギフトで飛んで帰るつもりだったが、流石に遠すぎる。
全開で飛んでセントドグマに着くのは4、5日ってところか。
バートランドとの戦闘でまぁまぁ疲れてるし、ずっと飛んで帰るのはちょっと嫌だなぁ。
俺は別の方法を模索するため、再び地図に目をやる。飛行船でも船でも乗れそうなところを探してみる。
「おお、ここならすぐ行けそう!」
ゴンザレス王国とセントドグマを繋いだ線上にある国を見つける。
そこは世界安全支配機構の加盟国であり、飛行船も手配して貰えるはず。なんなら俺の知らない乗り物もある可能性が高い。
ちょっと買いたい物もあるし、うん、いいじゃないか! この国に行こう!
俺は地図を買い取り、店を出てギフトを発動。
ゴンザレス王国から東に1000kmほど離れた位置にある文明先進国に向けて、俺は風に乗り、急いでゴンザレス王国を出発するのであった。
◆◆◆◆◆
「……あらら、見えなくなってしまいましたね」
姿を隠し、遠くでトールを見ていたタキシード姿の男は、「早いですねー」と言いながら、見えなくなるまでトールを見つめていた。
「あれが魔王トールか。底が知れんな」
タキシードの男と一緒になってトールを見つめていたガタイのいい男も言葉を発する。
「貴方でも敵わないですか?」
「んん、直接やってみないと分からん。だがヤツの能力はあれだけでは無いはず。もっと情報が欲しい」
ガタイのいい男はトールと自分の力量を比べるが、まだ能力の全貌が見えないと思い、勝つと断言することは出来なかった。
2人は元々ゴンザレス国王が召喚した勇者がどれほどかを視察に来ていた。
するとそこにたまたま現れた魔王トール。
トールとバートランドの戦闘を2人は一部始終監視していたのだ。
「予定外でしたが収穫はありましたね。さて、私たちも行きますか」
タキシードの男はラッキーしたと思い、もういる必要の無いゴンザレス王国を自分たちも出るかと提案する。
「行くってどこにだ? 魔王を追いかけるのか?」
ガタイのいい男はタキシードの男に尋ね、タキシードの男はそれに答える。
トールが飛んで行ったのはセントドグマ方面。そのまま飛んで帰るかもしれないが、乗り物を求めてどこかに立ち寄るとしたら2つの国に絞られる。
その2つの国のどちらかに行くのはアリじゃないかと提案する。
「んー、こっちだと厄介だな。あの国の王様には関わるなと会長に言われてるしな」
「そうですね。ですから我々はもう1つの国に行きましょう。魔王に会えるかは別にして、ここの王様には用がありますので」
タキシードの男は手に持ったカバンから『転生の書』を取り出し、見せびらかす。
それを見たガタイのいい男は、もう1つの国に向かうことに納得する。
「魔王トール、そして世界安全支配機構か。我々エヴォル商会の敵に成り得る者は放ってはおけませんよね」
「だな、会長の作る世界にアイツらは邪魔だ」
「そうですね。では私たちも動きますか」
「おう」
タキシードの男とガタイのいい男は意見が一致。
エヴォル商会にとって魔王トールは消しておく必要があると考える。
だが相手は世界の半分を支配した魔王と呼ばれるほどの存在。
一筋縄でいかないことは分かっている。
直接対峙するのはまだ先にするとして、今は『転生の書』を使ってトールたちに揺さぶりをかけることにした。
「ふふっ、次に出てくる転生者はもう少しやってくれる方だといいんですがね。バートランドのような雑魚ばっかりだと、我々が直接手を下す方が早いと思ってしまいますので」
『転生の書』をカバンに入れ、タキシードの男はガタイのいい男を引き連れ、次の国へと出発するのであった。
◆◆◆◆◆
「そういやサリナって、どうやって帰るつもりなんだろ?」
風に乗って次の国を目指すトールは、ゴンザレス王国に置いてきたサリナについて考えた。
俺はギフトのお陰でなんとか帰れそうだが、サリナに飛行能力など無い。
今までも外交やら転生者の対応やらで他国に行くことはあったが、その都度飛行船や船でセントドグマに帰ることが出来ていた。
自力で帰るのはサリナには無理そうだな。
ゴンザレス王国の
そんなことを考えながら、次の国の近くまで来ると
「そこのお前。何してる、止まれ!」
俺は誰かから呼び止められたのだ。
周りを見渡しても人はいない。
そりゃ、海の上だから当たり前かと思っていると、頭上から謎の物体が飛来してくる。
鉄のように硬そうな、ブーメランみたいな形の物体に、4枚のプロペラが備え付けられている。プロペラは回転し、その物体はしっかりと空を飛んでいるのだ。
「何だ? 乗り物か、これ?」
珍しがってその小さな物体を突っついてみると、また人の声がするのであった。
「貴様、何をしている! 不法入国者か!?」
どうやら声はその飛んでる物体からしているようだ。
でもどうなってんだ?
人なんか乗れるわけないし
その飛行物体をじっと眺めてみると、俺が行く国のシンボルが刻まれていた。
他国に興味があまり無い俺でも知っているそのマーク。
白い背景に赤で中塗りされた丸が1つ。
「俺はトール・フォン・ブルム。セントドグマの王である。貴国の王、セイシロウ・リトル・スプリングに会いに来た。入国を許可してくれ」
俺はその飛行物体に話しかける。
するとその飛行物体の向こうにいるであろうヤツは思ってた通りの反応を示す。
「トール……魔王トール様!? し、失礼しました! 入国を許可します!」
飛行物体は俺の入国を許可して、どこかへ飛んで行っていしまう。
やっぱすごい国だな。
あれに国周辺の警備をさせているのか。
あんな小さい物でも飛ばす技術があるなんて。
どうやったらあんな物考えられるんだ?
入国の許可を得てしばらく飛行、そして国の上空に到着する。
「うへー、やっぱスゲーとこだな。おっ、なんか見たことない物見っけ! セイシロウさんのとこ行く前に見てみるか」
俺は珍しいものを発見し、超文明国家『ダイニッポン帝国』へと降りていくのであった。
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