第13話 私は異議を唱える

 俺は鬼屋椿との出会いからからバートランドと戦った今に至るまでの『最近異世界からの転生者が多すぎる件!』をこの『転生の書』が絡んでいると踏んでいる。


 世界安全支配機構の役員会議を開くことには俺も賛成だ。

 各地に散らばっている役員たちにもこの事を伝えておかないと。


「セントドグマに戻るぞ。役員たちに招集をかける」

「それがいいと思うわ。あっ、でもこの人はどうするの?」

「ん? あぁ、そうだよな」


 役員を集める話をすると、サリナはゴンザレス国王の処遇をどうするか聞いてくる。


 この国の悲惨な状況を見てしまったからには、このまま放置することは出来ないか。

 ゴンザレス国王に任せたままでは、この国はいつか滅ぶだろう。

 ゴンザレス国王だけ痛い目に見るならそれでもいいが、心配なのは国民の方だ。


 俺がこの国の王になるってのは正直厳しい。まだ自分の支配してる国のことで手いっぱいなんだよな。

 いや、どうするかな……ん、サリナいるじゃん!


「お前に任せる」

「えぇ、私!?」


 そうだった、今回連れてきてるのはサリナじゃないか。

 ならゴンザレス王国の立て直し政策が作れるんじゃないか?


「戦いには向いて無いって言ってたよね? ならこういう仕事なら向いてるってことだよな?」

「ぐっ! もしかして逃げたこと根に持ってる?」


 サリナの言うことは正しい。

 社長置いて逃げしたことにちょっとは怒ってるよ。仕事しろって思ったし。

 でもそれを抜きにしても、ここはサリナが適任なんじゃないかと思う。


 法律を作るのと国の内政立て直しは違うと駄々をこねていたサリナ。


「……ギフト使ってもいいなら」


 サリナはギフトの使用許可を願う。

 俺もそれを期待してサリナに頼んでいる。もちろん許可だ。


「使っていいぞ。今回は許可する。てかギフトありきで頼んだんだよ。だからこの国をなんとかしてくれないか?」

「え、使っていいの!? ならやるわ! 大丈夫、任せて!」


 サリナにギフトの使用を許可すると態度が一変。喜んでゴンザレス王国の財政復興に携わると言い出した。


 サリナはやると決めたら行動が早い。

 ゴンザレス国王に国の権力者たちを集めるよう指示を出す。


 しばらくしてゴンザレス王国の権力者たちが宮殿内に集められた。

 集められた者たちはいきなり呼ばれたことに、皆文句を言っていた。


「欲にまみれてそうなヤツばっかりね、調教しがいがあるわ」


 綺麗な格好をした権力者たちを見て、サリナはボソッと怖いことを言う。


「ほどほどにしてやれよ」

「はいはい、任せといてよ。じゃあ私行くわね」

「役員会議は気にしなくていいからな」

「はーい。じゃあ、スタート!」


 サリナはギフトを発動。

 俺だけを残して、サリナと集められた者たちは一瞬で姿を消す。


 大丈夫って言ってたけど、ホントかな?

 俺は少しゴンザレス国王たちが心配になる。


 サリナのギフトは『私は異議を唱えるオブジェクション

 使用条件や制約などはまだ教えてもらってないが、どういう能力かだけは知っている。


 聞いた話では、『私は異議を唱えるオブジェクション』の能力はサリナ自身が間違いだと思うことを指摘して、その間違いを正す能力。

 元政治家のサリナらしいギフトだと思う。


 でも俺がこの能力を初めて聞いた時は、かなり恐怖したのを覚えている。


 どこまでのことが出来るのかは分からないが、『私は異議を唱えるオブジェクション』はかなり危険なんじゃないかと思い、俺はサリナを世界安全支配機構の役員にした後、緊急でない限りギフトを勝手に使うことを禁止しているのだ。

 その理由は2つある。


 まず1つ、サリナの考えが絶対的になること。

 

 自分に出来無いと思うことは面倒臭いと文句を言うが、得意分野である国の政治に関わる事は率先して動くタイプ。

 真面目で正義感の強いサリナの考える法案は、国を成り立たせる上ではとても必要なことである。


 だが、それをギフトの力で強制してしまったらどうなるか。

 それはサリナが思い描く理想だけが残る世界が出来てしまうということになる。


 悪いことはダメ。分かってはいるが、それを全てサリナの価値観だけで強制するのはどうだろうと思う。


 現にサリナが前いた国の法律は、サリナだけが考えたもので成り立っているのだ。

 その国は確かに平和で豊かな国になった。でも、行動を法で縛られ過ぎたせいで国民たちの不満もかなり高いのである。


 人はみんな考え方が違う。サリナが考える法律を間違いとは思わないが、それを1人で決める権限を持たせてしまうのは良くないと思うのだ。


 2つ目は、今のまま戦闘に向いてないと勘違いし続けて欲しいということ。


 サリナは政治的趣向で、どちらかといえば暴力反対主義。なので戦うとかって話になると、大抵イヤイヤ病が発動する。

 だがギフト『私は異議を唱えるオブジェクション』には秘めた可能性があると思っている。


「無敵なんてありえない。ずるい、そんなのチートよ!」


 サリナが2番星の能力『俺に敵はいないアンライバル』を聞いた時の反応だ。

 まぁ、無敵って言われたらそう反応するよな。


 でももしこの言葉を『私は異議を唱えるオブジェクション』を発動した上で言われたらどうなるか。

 下手をすると『俺に敵はいないアンライバル』の能力がありえないということで、消されてしまう可能性があるのだ。


 ギフトの能力は段階があり、その人間の成長に応じて力が増していく。

 チャムが門の前で見せてくれた実験がいい例だ。

 直に触った物を飛ばす能力から直に触れて無くても飛ばせる能力に進化していた。


 サリナの能力も極めるとギフトを消すところまで行くと俺は踏んでいるのだ。

 そうなるともうサリナが一強の世界まで見えてくる。

 

 世界を支配した最強の魔王と言われている俺だが、正直サリナは敵に回したくないヤツの1人なのだ。

 『私は異議を唱えるオブジェクション』を政治的にしか使えないと思ったままでいてくれと思い、俺はサリナに戦闘は強要しないことにしているのだ。


 今回はゴンザレス国王たちの『国民からの横暴な搾取はひどい件』に対してギフトを使っているはず。

 調教なんて言ってたが……多分大丈夫だろ。


 俺は俺でやれる事をするか。

 ゴンザレス王国をサリナに任せて、出発することにしたが……。


「やべ、ここってどの辺だっけ?」


 ゴンザレス王国をそもそも知らなかった俺は、セントドグマに帰る方法を全く考えていなかったのであった。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る