画用紙の六芒星~自称人殺しの異世界転移~
壊時/Kaito
0話 いせかい
「……」
暗い夜。
勉強机とベットだけの、かんたんな部屋。
義家族がみんな寝ていしまい、どこかひんやりした静かな深夜0時。
照明も付けないまま、黄色い紙に真っ赤なペンで絵を描く。
三角形がふたつ、六芒星。
真ん中には、〝飽きた〟。たったそれだけ。
私は今から、「異世界に行ける」という都市伝説を試す。
――毎日が、虚しかった。
つめたい家族のために家のことをして、
いじわるなクラスメイトに付き合って、
勉強のおかねをかせぐために働いて、
やりたい遊びはみんなのために我慢して。
でもしょうがないよね。
ほんとうは、私は生きてちゃいけないんだから。
……あの日。
あの子のお願いをことわりきれなくて夜の街に行ったのが、すべてのはじまり。
子どもっぽい私たちには、きらきらした街の光がお星さまみたいに見えた。
はしゃいで、調子に乗って、いつの間にかはぐれちゃって。
くらいロジウラでようやく見つけたあの子は、真っ赤でボロボロな服をきて、死んでいた。
私が、ころした。
友達一人もまもれなかったヒトゴロシ。
そんなのは、存在しちゃいけない。
住まわせてくれる義家族に、感謝しないと。
絶対に文句を言っちゃだめ。
話しかけてくれるクラスメイトにも、ありがたがって。
迷惑なんて、思っちゃいけない。
自分の学費を稼ぐのはあたりまえ。
だって、私はヒトゴロシなんだから。
赦してくれるみんなに感謝しないとだめなんだ。
……そう思って、頑張った。
いっぱい頑張った。
頑張って、頑張って、頑張って、頑張って、頑張って頑張って頑張って頑張って頑張って頑張って頑張って頑張って頑張って頑張って頑張って頑張って頑張って頑張って
──少しだけ、疲れちゃった。
ほんの少しだけのワガママと一緒に、書き終わったましかくの紙を枕の下に入れる。
おやすみなさい カゾクのみんな、
おやすみなさい クラスのオトモダチ、
おやすみなさい おそろしいセカイ。
思っちゃいけないことばをくりかえしながら、少しだけ穏やかな眠りにつく。
───
──
─
「んう……?」
気がつくと、小さな公園に寝ていた。
ブランコが風で揺られる、ギイギイという鳴き声。
周りの建物の隙間を流れる、つめたい風。
もう長くない電球が、街灯の中でチカチカと明滅している。
……どこ、ここ?
なにが、どうなってるの?
「い゙っ───!」
周りを見ようと体を起こしたとき、頭の奥からズキリと痛みが走った。
すごくクラクラする。
でも、その頭痛のおかげで、少しだけ目が覚めてきた。
私がいつからどこにいたのかは分からないけれど、
何があったのかは、少しだけ思い出せた。
……私。
いつから、ここにいたんだっけ?
──いや、そもそも。
私は、どうしてここにいるんだっけ?
ぼんやりと視界に映る、見たことのない景色。
せまい公園を囲む、普通の住宅。
だけどその壁にはところどころ、くろくてぐねぐねした魔法陣みたいなラクガキが描かれている。
とおくには、ねじれた形のビルが見える。
絵本で見た〝みらいのニホン〟みたいな、ちょっと変な形。
そのさきから聞こえる、おおきな音。
雷みたいに響くのに、何を鳴らしているのか、まったくわからない。
──そっか。
そういうことだったんだ。
まだ、信じがたい。
だけど。
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