第34話 だからあたしからのお礼だ!
「ついにきたぞー!」
俺たちは一時間ほど並んだ後、前の人たちが乗っていたジェットコースターが一周して、出発地点に戻ってきたので、蓮がそれを見て元気よく叫んだ。
それから俺たちは並び順的にジェットコースターの先頭三列が俺たちの座る場所になったので、一番前に蓮と木南先輩、真ん中に渚ちゃんと高崎さん、その後ろに俺と恵花さんがそれぞれ座った。
俺が怖さを紛らわすため、建物の外から見える遊園地の景色を見ていると、ついにジェットコースターが動き始めてしまった。
「あなた、ほんとに大丈夫?」
「うん、大丈夫って言いたいところだけど、大丈夫じゃないかも」
「もう、仕方ないわね、ほら」
正直に気持ちを打ち上げると、えはなさんは軽く笑って俺に手を差し出してきた。
「ん? なにこれ?」
「さっきまで手を繋ぐのよ、今度は私があなたの手を握ってあげるから、さっきあなたに手を握られて私かなり安心したのよ、だから今度は私があなたを安心させてあげる」
「……!?」
俺は今この一瞬、怖さより安心感が勝った。
「ほら、早くしないと天井つくわよ」
恵花さんはジェットコースターがゆっくりと最高到達点付近に近づいているのを見て呟く。
その発言を聞いた俺は、えはなさんの手に自分の手を近づけると、恵花さんが優しく俺の手を包み込む形で握った。
「どう? 怖くないでしょ?」
「不思議だ……」
思わずそんなことが飛び出すほど、彼女と手を繋いだことによって、怖さは吹っ飛び、安心感が俺のことを包み込んでいた。
「不思議ってなにが?」
「恵花さんと手を繋ぐとすごく安心する……それにすごく懐かしい気分になる」
「……えへへ、そ、そう……それはよかったわ」
恵花さんが恥ずかしそうに笑った瞬間、ジェットコースターは最高到達点に到着して、そのまま下に向けて急落下した。
***
「観覧車に乗るの久しぶりだな……」
俺たちはジェットコースターを体験した後、高崎さんの提案で遊園地に乗ることにした。
「うわ〜でかいですね!」
「なんかゲームのラスボスみたいだな〜!」
「ちょっと兄貴、それどんな例え?」
蓮や渚ちゃんは目の前に大きく存在する観覧車を見て、びっくりしたような声をあげる。
「それじゃあどうします? この観覧車、最大六人乗りですけど! もしよかったら、ワタシと純人お兄ちゃん! あとそのほかで分けて乗ってもいいんですよ〜!」
「あなたね……それを言うなら、私と純人よ、私たちは先ほどのパープルカートのアトラクションの感想について積もる話がいっぱいあるからね!」
「ああ〜先ほどお化け屋敷で純人怖いよって〜乙女っぽく振る舞ってた奈々お姉ちゃんじゃないですか〜! あれは可愛かったですよ〜思わずワタシも可愛いって思っちゃいました〜! もう、可愛いんだから奈々ちゃ———」
「ねえ、蓮……この子どっかの森に捨ててきていいかしら?」
「いや、やめてくれ……」
恵花さんはからかう渚ちゃんの口を押さえて、蓮にそう尋ねる。
蓮はそれに対して苦笑いしながらそう答えた。
俺たちはしばらく六人で話をしていると、観覧車のゴンドラが一周してきて、乗っていお客さんを下ろしたのち、俺たちの前に現れたので、前にいた恵花さん、高崎さん、渚ちゃん、蓮が先に乗り込む。
俺もそれに続いてゴンドラに乗り込もうとすると、後ろで空を見ながら木南先輩が佇んでいたので、俺は彼女の元に行き話しかける。
「あれ? 木南先輩は、乗らないんですか?」
「いや、ちょっと考えことをしててね、ごめん今から乗るよ」
「それじゃあ俺たちも乗りましょうか」
俺と木南先輩が遅れて恵花さんたちが乗ったゴンドラに乗ろうとしたら、そのゴンドラの扉はすでに閉まっていて、俺たちを置いて先に動き出してしまった。
「あれ……? これ、置いてかれたやつ?」
「そ、そのようだね……」
俺と木南先輩はだんだんと遠ざかっていくゴンドラを見つつ唖然とする。
するとそんな俺たちを見た係員の人が。
「ごめんなさい! もしかして先ほどの団体のお連れの方でしたか?」
「あ、はい、そうですけど……」
「ごめんなさい! 私あの団体で以上だと思って、まさかそれ以上いるとは思わず……」
係員の人はそう言って俺に向かって頭を下げた。
「い、いえ! 顔をあげてください! 別に怒ってませんし、ねえ木南先輩!」
「ああ、それでどうする? あたしたちもせっかくだから二人で観覧車乗るか?」
「そうしましょうか……」
まあ、このまま待っているぐらいなら、観覧車に乗った方がいいよな。
こうして、俺と木南先輩は一緒に観覧車に乗ることになった。
俺は木南先輩と向かい合う形でゴンドラに乗り、話を始める。
「あの……そういえば木南先輩は、さっきなんの考え事をしていたんですか?」
「うん? ああ、蓮のことだよ!」
「蓮のこと?」
「ああ、あたしさっき蓮とアトラクションを楽しんでて、すごい楽しかったんだよ……それでもっと二人で色々楽しみたいって思って……それでその気持ちが恋だってさっき気付いたんだ」
「え? それって——?」
「ああ、あたしはどうやら蓮のことが好きみたいだ……」
おいおい、まじか……。
両思いですよ! 蓮!! 蓮!!!
「それで、あたしは蓮に思いを伝えてもいいのかって考えてしまって」
「ええ? なんでですか?」
「だって、蓮には恵花さんや、高崎さんなどの仲やいい女の子がいるし、その子たちがもし蓮のことが好きだったら——そんなことを考えていると、蓮に告白するのが怖いんだ」
なるほど。
でもその心配はいらないと俺は思うけど、高崎さんは蓮の恋を応援するって言ってるし、恵花さんは……。
あ、でも恵花さんは……。
もしかしたら、蓮のことが好き——は、ないと思うけど、夏祭りの時彼女の話を聞いてるうえでは。
でも絶対に好きじゃないっていう保証もないな。
「まあ、そう言う心配はいらないと思います、それよりも自分がどうしたいかだと思います! あんまり人に気を使いすぎて、自分が幸せになれないのもどうかと俺は思うので!」
「間遠くん……わかったよ、あとで蓮に思いを伝えてくるよ……」
「はい、木南先輩なら、絶対大丈夫ですよ!」
蓮きっと喜ぶだろうな。
だってあの自分がずっと好きだった先輩から告白されるんだもんな。
「あ、間遠くん、そういえばもうすぐ文化祭じゃないか!」
「あ、はい、そういえばそうですね」
今は十月中旬、十一月初旬にに控える文化祭まで後三週間を切った。
「君たちはなんの出し物をするんだい? 各クラス出し物するだろ?」
「え? いや、俺たちまだ決めてなくて」
「ええ!? まだ決めてないのかい?」
「はい、うちとクラス色々と立て込んでるから」
「なるほどね」
「木南先輩のクラスは何をするんですか?」
「あたしのクラスは、ボーリングをしようと思っててね」
「ほえ〜ボーリングですか! すごいですね!」
文化祭でボーリングなんて聞いてことないな。
「あ、君、もしも君に好きな人がいたらあたしに相談してくれよ!」
俺が文化祭のことを考えていると、急に木南先輩がそう言ってにっこり笑う。
「え? どういうことですか?」
「いや、蓮に対する思いを自覚することができたのってきっと、今日の遊園地があったからだと思うんだよ、だから遊園地についてきてくれた君には感謝してるからね!」
俺は遊園地で蓮と二人っきりになれたからこそ、彼女は思いを自覚できたので、元々二人っきりで行く予定だったから、自分に感謝される言われはないと思った。
「いや、でも俺たちがついて来なくても、木南先輩は蓮に対する思いを自覚していたのでは?」
「いやいや、そもそも君が遊園地についてきてくれなかったらこの遊園地の話は無しになってたかもしれない——だからあたしからのお礼だ!」
木南先輩はそう言ってにっこり笑った。
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