第33話 同じような感覚を覚えた
「す、純人……絶対そこにいるよね? 絶対にいるよね?」
「うん、いるよ」
お化け屋敷に入ると、恵花さんがか弱い声で俺にそこにいるかの確認をしてきた。
まさか、恵花さんホラーものが苦手とは……。
なんか意外だな。
「きゃーーー!!!」
すると右手と左目に眼帯をしたゾンビが恵花さんの前に現れ彼女を驚かそうとする。
そのゾンビに驚いた彼女はこの世界が壊れるほどの声量を上げて。いや、この世界が壊れるほどは流石にいいすぎだ。
その声量を上げたことで、目の前のゾンビ役の人をびびらせ、そのゾンビ役の人は思わず腰を抜かしていた。
「あ、あの……大丈夫すか?」
俺は腰を抜かしたゾンビ役の人に話しかけると。
「大丈夫です、ちょっと声量にびっくりしただけで……」
そう言って声をガタガタ震わせながら答えた。
よっぽど声量が大きかったんだな。
さっきもっと恵花さんの近くにいたら自分の鼓膜が割れてたかもしれん。
「きゃー! なんか動いたでしょ!? 今!?」
「え? 動いてないと思うよ……」
「純人……助けて〜〜」
ゾンビ役の人が声量でダウンするというアクシデントもあったが、俺と恵花さんはお化け屋敷の仕掛けに怖がりつつも、順調に進んでいた。
恵花さんは、さっきからいつもとは想像できないような声で囁くので、俺はそのギャップについついキュンキュンしてしまった。
「だ、大丈夫だから……」
「ねえ、純人……手繋いで……」
「え? うん」
恵花さんがそうか弱くおねだりしてきたので俺はその小さい手を取り、お化け屋敷を再度歩き始める。
「これで、少しは怖くなくなった?」
「……うん、ありがとう純人……」
俺は恵花さんと手を繋ぎながらお化け屋敷を進んでいると、先に行ったはずの高崎さん、渚ちゃんが引き返してくる。
「あ! 奈々お姉ちゃんと純人お兄ちゃん、二人で手を繋いで何してるんですか!? ずるいですよワタシも手を繋いで欲しいです!」
「え? でも渚ちゃんは別に怖くないでしょ?」
「……ワタシ、超怖いですよ〜! だから早く手を繋いでください!!」
渚ちゃんは俺の空いていた左手を取って、自分の右手と繋がせた。
「純人お兄ちゃんの手って意外と大きいんですね、なんだか男の子って感じの手っていうか……」
「うう〜純人……まだゴールはまだなの〜?」
なんなんだこの状況は。
左手は渚ちゃんと繋いでいて、右手は恵花さんと繋いでいる。
俺が今の状況に悪戦苦闘していると、俺の腹の周りらへんになにか感触がしたので、俺はかなりでかい声で叫ぶ。
「ひやあああああ〜〜!!!」
「純人お兄ちゃん!? どうしたんですか!?」
「ひややややや〜〜! 純人助けてー! ねえ、私のこと守ってよ〜」
俺が叫び声を上げたことで、俺と手を繋いでいる二人を相当ビビらせてしまったのか、渚ちゃんはびっくりしたような顔をして、恵花さんは俺の腕にしがみついてブルブル震えていた。
「ご、ごめん……お腹らへんに今、突然感触があって……」
「ごめん、それわたしかも」
「え? 高崎さん!?」
すると、俺の後ろ側から彼女の声がして、俺の腹の感触の正体が高崎さんの手であることが判明する。
「いや〜なんか、奈々も渚ちゃんもみんな純人くんにくっついてるから、わたしもくっつきたいなって思って! ダメだっかな?」
「いや、ダメじゃないけど、くっつくなら一言言ってほしい……ここ、ほらお化け屋敷だから、雰囲気とかそういうのもあってびっくりしちゃうから」
お化け屋敷や肝試しなどでびっくりする事件が起こると、いつも以上にびっくりしてしまうのは、あるあるなのかもしれない。
「あ、ゴールが見えたよ! 恵花さん」
「ほんと!? よかった〜!」
俺たちがしばらく歩いていると、外の光が差し込む扉を見つけたので、ようやく俺たちはゴールに辿り着いた。
それにしても、二人と手を繋いで、後ろから抱きついている人が一人いるので、なんというか身動きが取れないというか、動きづらいというか……。
「やっと外に出れた〜! 怖かったよー」
「よしよし、頑張ったね奈々!」
お化け屋敷を出ると、近くにあったベンチに座った恵花さんは横に座った高崎さんに抱きしめられて慰められていた。
なんだか教室とは立場が逆になっているな。
「あれ!? お前ら、こんなところにいたのか!? びっくりだぞ!」
俺が二人の様子を見ていると、そんな声が聞こえてきたことで、声のする方を見るとそこには、蓮と木南先輩が二人でポツンと立っていた。
「蓮、木南先輩……お久しぶりです」
「お前……なんで俺のことを置いて行っていきなり木南先輩と二人っきりにしたんだよ!?」
俺が二人に挨拶をすると、蓮がすごいスピードでこちらにやってきて、俺に肩を組んで小さな声で置いて行った理由を追求してきた。
「いや、なんか成り行きで、それを言うなら、なんで蓮はあの時、俺たちについてこなかったの?」 「あ、いや、なんか唖然としててよ、気づいたら木南先輩以外誰もいなくなってるし……まあ、木南先輩とアトラクションを回って前よりも仲良くなれたからそれはそれでいいんだけどよ」
「それじゃあ良かったじゃん」
「おう! だからありがとう!!」
「なんなんだよお前は……」
結局怒ってるのか感謝してるのかわからない蓮に俺は疑問を浮かべた。
「さあて! みなさん揃ったことだし、この後みんなであそこに見えるジェットコースターに乗りません?」
「渚! それ超いいアイデアじゃん行こうぜ!」
「確かにあたしさ、ジェットコースターさっきから乗っているお客さんの反応がすごいから気になっていたんだよ!」
ちょっと待ってよ、渚ちゃんの提案に蓮に続いて木南先輩も賛成し始めたんだけど……。
やばい、逃げようかな。
「あなた……大丈夫? ウォータースライダーの時あんなに怖がっていたから、きっとジェットコースターも怖いんでしょ? あれだったら私とここ抜け出して、二人で他のもの楽しむ?」
俺が怖がっている様子を見せていると、恵花さんが優しく俺にだけにしか聞こえない声で提案してくる。
まあ、その提案もとてもいいんだけど。
恵花さんもさっきお化け屋敷怖かったけど、無理して行ったのを見て、俺もジェットコースターに挑戦してみようかなと思いかけていた。
「純人お兄ちゃんも行きますよね?」
「わかった、行こう……」
俺は決心がついたので、渚ちゃんの問いに覚悟が決まったようにそう言った。
「あなた本当に平気なの?」
「うん、恵花さんも怖かったのに、頑張って行ったんだ、俺も頑張ることにした」
「うふふ、そういうことなら、安心しなさい! もしあなたが怖くなって逃げ出したくなっても、私がそばについているからね」
「あ、ありがとう」
俺はその恵花さんの優しさの溢れる声を聞いた途端、安心感やドキドキが一気に俺に襲ってきた。
なんだ、この感覚は。
俺は今、恵花さんに初恋の人と同じような感覚を覚えた。
「キャーーー!!!」
ジェットコースターの近くに到着すると、お客さんの絶叫する声が俺たちを包み込んだ。
やば、そんなに絶叫上がるほど、怖いのか?
やっぱりさっきの発言撤回して帰ろうかな。
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