第21話 純人の初恋
「ねえ、間遠くんって好きな人いたりするの?」
彼女はしばらく泣いて後、泣き止むとスッキリしたのか、俺に好きな人について尋ねてくる。
「俺は……今はいないかな」
「今はってことは、昔いたってこと?」
「ま、まあ……」
「へえ〜! それってどんな子?」
「え、まあ……とっても楽しそうに笑う人だったな」
***
俺は中学生の頃、約二日間。
同じ市町村同士が競う合う、合同運動会なるものが開催されていた。
その時、俺はある一人の女の子と出会った。
その女の子は、みんなが楽しそうに競技で競い合う中、一人寂しそうにみんなを見ていた。
そんな彼女に俺は何を思ったか話しかけた。
「ねえ、そんなところでなにしてるの?」
今思えば俺はどうしてその子に話しかけたのかわからなかった。
俺は女子と話す免疫なんてまだその時にはなかったのに。
でも不思議とその子には話しかけられた。
「みんな楽しそうね」
「え? うん、楽しそうだね」
「そ、その、あなたはこんなところでみんなを見て何をしていたの?」
「え、えーと、私、道に迷ったっていうか、みんなと逸れちゃったのよ……だから現実逃避してた、みんな楽しそうだなって……」
俺はそれを聞いて、いきなり何を言い出すんだこの子はと思い、思わず吹き出してしまった、
「ぷふふ、アハハハハ!!」
「な、なによ! 私今深刻なのよ! もうすぐ私が出る種目が始まるんだから! 下手したら私のせいで私や学校負けちゃうかも!」
「ご、ごめん……面白くてつい」
「あ、そうだ! せっかくならさ! 私と一緒にこの運動会潰さない!? そうしたら私がいくら逸れて種目に出れなかったとしても、私の学校が負けることなんかないじゃない!」
「そ、それは無理だよ! アハハ、君面白いね」
「なによ! 笑いすぎよ!!」
これが俺の初恋の子との初めての会話だった。
それから俺とその子はお互いゲームをやっていることもあり話が弾んで盛り上がった。
俺たちは種目が終わった後の時間ここに集合してゲームおすすめのテレビ番組などを語り尽くした。
「それじゃあさ! デラックスファイターズの新作出るって知ってる!?」
「うん! 来年でしょ!? 楽しみだよね!」
「えへへ、もし来年会うことがあったらやろうね!」
「え? うん」
結局、俺とその子は、デラックスファイターズを一緒にやろうと約束はしたけれど、あの運動会以降その子とはあっていないので一緒にやることはなかった。
「ああ! こんなところにいた! ちょっと探したのよ! もうちょっとで種目が始まるから早く行きましょ!!」
すると初恋の子と同じ学校と思われる人が、その子のことを迎えにきた。
その初恋の子は同じ学校の子に連れられてこの場を離れる際。
「ねえ、明日もここで会いましょう! ゲームの話たくさんしましょ!!」
そう言って俺に嬉しそうに手を振った。
「うん、そうだね」
「じゃあ約束ね! えへへ」
俺はこの時その子と約束をした。
俺はその時のその子の笑顔が今でも忘れられない。
俺はその時その子に……生まれてはじめて恋というものを体験した。
***
「ちょっと……ちょっと……ちょっと……間遠くん!? 聞いてる?」
「うわ!? ごめん、なんだっけ?」
俺は初恋の人との初めての会話を思い出して、固まっていると、横にいた高崎さんに心配そうに声をかけられた。
「もう、いきなり間遠くん反応もなく固まっちゃったから、何が起こったのかと思ったよ!」
「ご、ごめん、何か懐かしいことを思い出していたんだ!」
「それって好きだった子の?」
「う、うん……」
俺が相槌を打つと、高崎さんは何か思うところがあったのか、暗い空を見上げる。
「へえ〜間遠くんが好きだった人か……どんな名前だったの?」
「ええ……っと、な、名前……」
あれ? 名前……。
あの子の名前なんだっけ? あれ? そもそも俺、あの子から名前教えてもらったっけ?
「わ、わからない」
「わ!? わからない!? それはなんで!? どうして!?」
「そ、そもそも名前教えてもらった記憶がないっていうか……いや、多分教えてもらったんだけど、俺が忘れてるっていうか、名前そこまで重要そうに思っていなかったから」
俺はそれを高崎さんに伝えると、あの子が言っていた名前の苗字の一部分を思い出した。
確かあの子の苗字の一部分に花っていうワードが入っていたことを今思い出した。
でも思い出せたのは、苗字の一部分だけで、名前に関することは一ミリも出てこなかった。
「……花……確か、花って漢字が入ってた気がする……苗字に!」
「花……苗字に花か……」
彼女にそう伝えると、高崎さんは何か思うところがあるのか考えた素振りを見せて、俺に再び口を開いた。
「間遠くんの好きだった、その子の正体、奈々だったりしてね!」
俺はいきなりそんなことを言われて固まる。
確かに、恵花さんは名前に花が入っているけど、それは流石にないだろう。
「あはは、それは絶対に無いと思う!」
俺はそれをすぐさま否定して笑った。
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