第2話 初恋の人



 次の目的地 稲荷町に向かうバスに乗り込む。

 一瞬 息を飲む。

 さっき三岡神社で見かけた黒いポロシャツの人が 後部座席に座っている。

 でも 後続の乗客に押され ウチは運転席近くへと追いやられる。


 少し遠くから その人を見るけど サングラスと大きめのリュックを前に抱えてるせいで 目鼻立ちは ようわからへん。

 チラッと見える鼻筋は あの人に似ている気がした。

 

 ウチの初恋の人は 4つ年上。

 小さい時から いつでもウチを守ってくれる 優しい人やった。

 勉強もよーできて 中学受験して 京都駅のすぐそばの スゴい進学校に合格した。

 中学校に入ってからは テニス始めて スラッと背も高くて 筋肉質に。

 カッコええなぁって思った。


 そして 気づいた。

 自分が恋してるって。

  

 当たり前やけど なんにもなかった。

 もちろんモテたから 当時から彼女いた。

 それでも 一緒に出かける時は 精一杯オシャレして。

 買ってくれた安物のアクセサリーとかも 宝物にして 机に仕舞ってた。

 

 ……今 考えたら アホみたいやけど。

 

 でも その時は 本気やった。

 今の汚れた感じからゆーたら あの頃の方が なんぼか純真やったし。

 誰にも言えへんけど それが ウチの初恋。


 今 その人は 東京にいる。

 東京の有名な私学 受験して 東京で就職した。

 なんか 素敵な彼女さんできて その人のツテで ええ会社に就職できたらしい。

 ホンマ お正月くらいしか帰省してこーへんし 帰ってきても 友達と飲みに行ったりして あんま 喋らへんし よー知らんけど。



 ♡♡♡ 



 さっき三岡神社で引いた御神籤を もう一度見返す。

 女性用の十九番 吉。

 『牡丹 手折る人有り 薫り芳し』

 

 願望:叶う。高望みせよ。

  強気で行けってことか。

 待人:来る。座して待て。

 恋愛:うまくいく。

 走人:あり。よろし。

  まぁ こっちからフッたったけど。

 縁談:縁無し。諦めよ。

  諦めよ……って あんまりやろ。

 商売:しばらくは悪し。

  就活 まだ続くんやろか……?

 失物:手元にある。

 転居:よし。夫婦で住め。

  縁なしちゃうんかいな……ツッコムで。

 旅立:風強し。伸びる。

  もう来たけど。帰りの便 出えへんとかやったら いややな。

 健康:回復早し。子宝に恵まれる。

 学問:可もなく不可もなく。

  卒論なぁ……無難に越せたら ええねんけど。

 



 そんなこと考えるうちに バスは2つ向こうの〈北本町〉に着く。

 降車ボタンを押し バス停に降り立つ。

 しばらく 待ったけど あの人は降りては こーへんかった。

 

 ……当たり前やな。

 

 まぁ ええわ。


 SNSをチェックすると糺さんからレス。


 糺>奇遇です。オレも光岡旅行中です!

 糺>もしかしたら 何処かでスレ違うかも?


 糺さんは 社会人で神社やお城巡りが趣味の人。

 たぶん男の人で 仕事で大事なプロジェクト任されたりしてるみたいやし 30代かなぁ? 知らんけど。

 関東エリアの神社とか よう行ってはるみたいやし たぶん 東京か埼玉か そこら辺に住んでるんやと思う。


 ……今 光岡に来てはるねんな。


 SNSの過去ログ見たら

 

 糺>星光市の三岡神社に来ました。

 糺>古式ゆかしい式内社だそうです

 

 ってゆーのが上がってた。


 上げた時刻は ついさっき。

 ウチが神社に居たくらいの時刻。


 ……もしかして さっきの黒シャツの人やろか?


 夢みたいな淡い期待が胸に湧くけど さしたる根拠も無い。

 もう少し時間経ってから 糺さんの三岡神社の写真にレス入れてみよ。

 もっと歳上のオジサンかも知れんし 期待し過ぎは禁物。

 

 まぁ 旅を続けよ。

 次の目的地は稲荷町の骨董街。

 この〈北本町〉から 西側の路地に入ると 画廊や骨董品店が並ぶ界隈らしい。

 京都で言うたら〈三条寺町上ル〉みたいな感じちゃうかな?

 なんか 掘り出し物のアクセサリーとか 見つかると ええねんけどな……。

 まぁ 見てるだけでも 心潤うし。

 

 

 

 ♡♡♡♡♡

 

 この作品は単体で読んでいただいても

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 『紬と糺』【side Tadasu】第2話〈白いタンクトップの女〉へhttps://kakuyomu.jp/works/16818622170937753049/episodes/16818622170940147903

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