## パート4:愛の深まり

学園への帰路、一行は王都アストラリアに立ち寄った。装備の補充と、次の遠征の準備のためだ。


「せっかく王都に来たんだから」リリアが提案した。「少し観光しない?」


「いいわね」エリザベートも同意した。「零もまだ王都の名所は見ていないでしょう?」


「ああ」俺は頷いた。「楽しみにしてたんだ」


五人は荷物を宿に預け、王都の中心部へと向かった。王宮を囲む大通りには高級店が立ち並び、貴族や裕福な商人たちが行き交っている。


「ここが『星の広場』ね」シャーロットが説明した。「王国創設時に天から星が降り注いだという伝説にちなんで名付けられたのよ」


広場の中央には巨大な噴水があり、水滴が星のように輝いていた。


「きれい...」アリアが目を輝かせた。


「零、一緒に写真を撮りましょう!」リリアが俺の腕を引っ張った。


五人で噴水の前に立ち、記念写真を撮る。エリザベートが恥ずかしそうにしていたが、最終的には俺の右側に立ち、リリアが左、シャーロットとアリアが両脇に並んだ。


「ハイ、チーズ!」


閃光と共に、五人の幸せな瞬間が写真に収められた。


「次はどこに行く?」俺が尋ねた。


「お買い物よ!」リリアが即答した。「零に素敵な服を買ってあげたいの」


「え?俺に?」


「ええ」エリザベートも嬉しそうに言った。「あなたにはもっと似合う服を着てほしいわ」


五人は高級衣料店に入った。店員は最初、若い五人組に警戒心を抱いていたが、エリザベートがクリスタル家の紋章を見せると、態度が一変した。


「クリスタル様!どうぞごゆっくり」


次々と衣装を試す俺。フォーマルな燕尾服、カジュアルな上着、そして騎士風の衣装まで。四人の少女たちは目を輝かせながら、様々な意見を出してくる。


「この紺色のスーツが似合うわ!」

「いいえ、このシルバーのベストよ!」

「黒のロングコートも素敵よ!」

「この白シャツに青いネクタイも...」


それぞれの意見を取り入れながら、最終的にいくつかの衣装を購入した。


「次は...」シャーロットが言った。「零に贈り物を選びましょう」


「そんな、もう十分だよ」俺は慌てて言った。


「ダメよ」リリアがきっぱりと言った。「私たちの気持ちなんだから」


宝石店に入ると、四人はそれぞれ俺への贈り物を選び始めた。エリザベートは銀の懐中時計、リリアは赤い宝石のカフスボタン、シャーロットは黒檀の杖、アリアはエメラルドのネックレスを選んだ。


「みんな...こんなに高価なものを...」俺は言葉に詰まった。


「大丈夫よ」エリザベートが微笑んだ。「私たちはそれぞれ家から十分な資金をもらっているもの」


「それに」リリアが意味深に微笑んだ。「これは私たちの『夫』への贈り物だもの」


「リリア!」エリザベートが真っ赤になった。「まだそんな関係じゃないでしょ!」


「でもそうなるんでしょう?」リリアが茶目っ気たっぷりに言い返した。


俺は照れながらも、心の中で温かな気持ちが広がるのを感じた。かつて「魔力ゼロ」と蔑まれた落第生が、こんな幸せを手に入れるなんて...


夕暮れ時、五人は王都一の高級レストランで食事をすることになった。「クリスタルパレス」というレストランは、王族も訪れる名店だという。


入口で、エリザベートがまた名前を告げると、店員は深々と頭を下げた。「クリスタル様、お待ちしておりました」


特別席に案内され、豪華なコース料理が運ばれてきた。シャンパンで乾杯し、五人は楽しい会話を交わした。


「これから先の冒険も、きっと乗り越えられるわね」アリアが嬉しそうに言った。


「ええ」シャーロットが頷いた。「残りの封印石を全て集めるわ」


「そして...」エリザベートが俺を見た。「私たちの絆は永遠に続くわ」


「永遠に...」俺はつぶやいた。


リリアが立ち上がり、グラスを高く掲げた。「私たちの愛に乾杯!」


「乾杯!」


四人それぞれの顔を見つめながら、俺は心から幸せを感じていた。


夜、豪華なスイートルームを予約し、五人は一緒に過ごすことになった。


バルコニーから夜景を眺めていると、エリザベートが寄り添ってきた。


「零、楽しかった?」


「ああ、最高の一日だった」俺は彼女の肩を抱いた。


リリア、シャーロット、アリアも加わり、五人は夜景を眺めながら、静かに語り合った。


「砂漠での冒険、怖かったけど」アリアが言った。「零の力を見られて良かったわ」


「ああ」リリアが頷いた。「あの『七色虚無波動』は圧巻だったわ」


「でも、次はもっと気をつけて」エリザベートが心配そうに言った。「私たちはあなたを失いたくないから」


「約束するよ」俺は四人を見つめた。「これからも、みんなを守るから」


夜が深まるにつれ、五人は寝室へと移動した。キングサイズのベッドに並んで横になり、お互いの温もりを感じながら、幸せな時間を過ごした。


「零...」エリザベートが小さな声で言った。「私、本当に幸せよ」


「俺も」俺は彼女の髪を撫でた。「みんなと出会えて、こんな関係になれて、本当に幸せだ」


リリアが俺の胸に頭を乗せ、シャーロットが手を握り、アリアが腕に抱きついた。五人の絆は、言葉では表せないほど深いものになっていた。


翌朝、俺たちは学園へと戻る準備を始めた。


「次の遠征までに、しっかり準備しましょう」エリザベートが言った。「翠玉の封印石は密林の中深くにあるわ」


「今回はどんな冒険になるかしら」アリアが期待に目を輝かせた。


「どんな困難も」俺は自信を持って言った。「俺たちなら乗り越えられる」


四人の少女たちが笑顔で頷き、俺たちは次なる冒険への期待を胸に、王都を後にした。

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