## パート3:黄金の無双

砂金蠍が咆哮を上げ、最初の攻撃を仕掛けてきた。その尾から放たれた金色の光線が神殿の柱を貫き、石を溶かしていく。


「危ない!」エリザベートが素早く氷の壁を作り出し、次の攻撃を防いだ。


「私が前に出るわ!」リリアが赤い髪を靡かせながら前進し、両手から炎の渦を放った。


炎が蠍に当たるが、その金色の外殻はほとんど傷つかない。


「効かない?」リリアが驚いた声を上げる。


「この魔獣は通常の魔法への耐性が高いわ」シャーロットが冷静に分析した。「零、あなたの力を!」


俺は深く息を吸い、左手を前に突き出した。内なる虚無に意識を向け、力を呼び起こす。指先から漆黒の光が放たれ、光の刃となって蠍に向かって飛んでいった。


黒い光が蠍に触れると、魔獣は苦しげな悲鳴を上げ、一歩後退した。その金色の外殻に小さな亀裂が入っている。


「効いてる!」アリアが喜んだ声を上げた。


蠍はさらに怒りを増し、巨大な鉤爪で俺たちに襲いかかってきた。シャーロットが闇の障壁を作り、アリアが風の刃で応戦する。


激しい戦いの最中、俺の中で何かが目覚め始めた。これまでにない力の流れを感じる。


「みんな、力を貸してくれ!」俺は叫んだ。


エリザベートがすぐに反応し、「みんな、零に魔力を!」と指示した。


四人が一斉に自分の魔力を俺に向けて放つ。氷、炎、闇、風の四つの力が俺の体に流れ込んでくる。


その瞬間、俺の周りに七色の光が現れた。体が浮き上がり、左手から放たれる漆黒の光が虹色の輝きを帯びていく。


「これは...!」エリザベートが驚きの声を上げた。


完全な力の調和。四人の魔力と俺の虚無の律動が完璧に融合した状態。


「行くぞ...無双奥義!七色虚無波動!」


俺の両手から放たれた虹色に輝く漆黒の波動が、砂金蠍を包み込んだ。魔獣は悲鳴を上げ、その巨体が光の中で溶けていくように消えていった。


波動が収まると、魔獣の姿はなく、そこには小さな金色の宝石が残されていた。


「黄玉の封印石...」シャーロットがつぶやいた。


俺はゆっくりと地面に降り立った。全身から力が抜け、膝から崩れ落ちそうになる。


「零!」


四人が一斉に駆け寄り、俺を支えた。


「大丈夫?」エリザベートが心配そうに尋ねた。


「ああ...」俺は弱々しく笑った。「ただ...力を使いすぎただけだ」


「すごかったわ」リリアが目を輝かせた。「あんな力、見たことない!」


「まさに...無双ね」シャーロットが感心した様子で言った。


アリアが黄玉の封印石を拾い上げた。「これで三つ目よ」


俺はポケットから紅玉と碧玉を取り出した。三つの宝石を並べると、それらは互いに共鳴し、美しい光を放ち始めた。


「三つの封印石」エリザベートが感嘆の声で言った。「あと四つで...」


「レインの封印が解けるんだ」俺は小さく微笑んだ。


力を使い果たし、俺はエリザベートの腕の中に倒れ込んだ。


「零!」四人が心配そうに叫ぶ。


「大丈夫...少し休めば...」


意識が遠のく中、俺は彼女たちの優しい声を聞いていた。


どれくらい時間が経っただろうか。目を覚ますと、俺は神殿の一室に寝かされていた。周りには四人の姿があり、彼女たちは交代で俺の看病をしているようだ。


「目が覚めた?」エリザベートが安堵の表情で言った。


「何時間...寝てた?」俺は体を起こそうとした。


「丸一日よ」リリアが答えた。「心配したんだから」


「すまない」俺は申し訳なさそうに言った。


「謝ることないわ」シャーロットが静かに言った。「あなたのおかげで私たちは助かったのだから」


アリアがお茶の入った杯を差し出した。「これを飲んで。体力が回復するわ」


俺は感謝しながらお茶を飲んだ。温かい液体が体に染み渡り、力が少しずつ戻ってくるのを感じる。


「あの力は...」俺は言葉を探した。「みんなのおかげだ。四人の力が俺の中で一つになったんだ」


「私たちの絆が生み出した力ね」エリザベートが微笑んだ。


「でも、あんな強力な魔法...」リリアが言った。「零、あなた本当に最強になりつつあるわ」


「レインの生まれ変わりなら、納得できるわね」シャーロットが付け加えた。


俺は三つの封印石を見つめた。「残りは四つ...」


「ええ」エリザベートが頷いた。「次は『翠玉の封印石』ね。南の密林に眠っているという伝説があるわ」


「まずは体力を回復させないとね」アリアが優しく言った。


「そうね」リリアが意味深な笑みを浮かべた。「特別な方法で回復させてあげましょうか?」


「リリア!」エリザベートが顔を赤らめて叱った。


「冗談よ...半分は」リリアはくすくす笑った。


四人が俺の周りに集まり、それぞれが愛情を込めてキスをした。その温かさと優しさが、俺の疲れた体と心を癒していく。


「みんな...ありがとう」


俺は彼女たちを見つめ、心から感謝の気持ちを伝えた。今や俺の全てである彼女たち。この絆がある限り、どんな敵も倒せるという確信があった。


「砂嵐は収まったようね」シャーロットが窓の外を見た。「明日には帰路につけるわ」


「そうね」エリザベートが頷いた。「とりあえず学園に戻って、次の遠征の準備をしましょう」


夜、四人は交代で俺の看病をすることになった。最初の番はエリザベート。


「零...」彼女が俺の横に座った。「あなたが気を失った時、本当に怖かったわ」


「心配かけてごめん」俺は彼女の手を取った。


「あなたを失うなんて...考えたくもないわ」彼女の目に涙が浮かぶ。「だから、無理はしないで」


「わかった」俺は約束した。「でも、みんなを守るためなら...」


「わかってる」彼女は微笑んだ。「それがあなたなのよね」


エリザベートが俺の傍らに横たわり、そっと抱き締めてきた。「少し眠りなさい。私がついてるから」


彼女の温もりに包まれ、俺は安心して目を閉じた。


翌朝、体力がある程度回復した俺たちは、サンドクレイドルを後にした。三つの封印石を手に、アルマサへと戻る道を進む。


「次はどこに行くの?」アリアが尋ねた。


「南の密林...ヴェルダントの森よ」シャーロットが答えた。「そこに翠玉の封印石があるとされているわ」


「また冒険ね」リリアが嬉しそうに言った。「今度はどんな敵が待ち構えているのかしら?」


「どんな敵でも」俺は自信を持って言った。「俺たちなら倒せる」


エリザベートが俺の手を握り、「ええ、一緒に乗り越えましょう」と言った。


砂漠の朝日に照らされながら、五人は次なる冒険へ向けて歩み続けた。

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