結婚適齢期なので婚活冒険者となったリディアは理想のダーリンを探す旅にでた

zataz

プロローグ:おまえもかーーーーーー!!!

私は宿の一室で、ランパード——最近旅を共にするようになった戦士——と二人きりだった。


夕暮れの光が窓から差し込み、木の床に長い影を作っている。彼は寡黙な男で、冒険中もほとんど口を開かない。それがまた魅力的で、思わず目で追ってしまうのだ。


「少し休もう」とランパードが言った。彼の声は低く、耳に心地よい。


私たちはベッドに腰掛けた。


狭い宿の部屋には椅子が一つしかなかったからだ。少し緊張しながら、私は彼の肩にもたれかかった。彼からは戦いの後の汗と、かすかな松脂の香りがした。


「少し暑いな」


そう言うと、ランパードは黙ったまま上着を脱ぎ始めた。


ゆっくりとボタンを外し、肩から布を滑らせる。現れたのは筋骨隆々な上半身。日に焼けた褐色の肌に、いくつもの傷痕が走っている。


「あ…」


思わず声が漏れる。これは私の幻想ではなく、現実に起きていることなのだ。何度も夢見た場面が、今、目の前で展開している。


私の心臓は狂ったように鼓動を打ち始めた。


「これは…どういう…」


彼は答えない。ただ黙って、さらに服を脱ぐ。


私は思わず目を閉じた。


(どうなってしまうの!?これからどうなるの!?)


頭の中はパニック状態。


冒険で幾度となく恐ろしい魔物と対峙してきた私だが、こんな状況は初めてだ。炎の魔法使いとして名を馳せる私が、今は小さな火種のように震えている。


時間が経つ。しかし、予想していた展開は訪れない。静寂だけが部屋に満ちていく。


(もしかして…私の勘違い?)


恐る恐る目を開けると、ランパードはベッドにうつぶせに横になっていた。筋肉質な背中が私の方を向いている。


「さあ、君の炎で」


彼はシーツに顔を埋めたまま言った。一呼吸置いて、


「お灸を据えてくれ」


私は混乱した。


「お灸?」


「ああ。昨日の戦いで古傷が痛み出してな。君の炎魔法なら、痛いほどに熱く古傷の疼きを越え、快楽を与えてくれるはずだ!」


よく見れば、彼の背中は古い火傷の跡だらけだった。傷痕の間には治療用の灸点のような小さな印も見える。


「おまえもかーーーー!!!!」


思わず叫んでしまった。これで三人目だ。前回は冒険者ギルドの剣士、その前は領主の息子。皆、私に近づいてきたと思ったら、結局求めていたのは私の炎魔法の変態的利用。


大変な変態である。


「何か問題でも?」


彼は不思議そうに顔を上げた。


「問題だらけよ!」


怒りと恥ずかしさで頬が熱くなる。私の炎魔法が制御できなくなるのを感じた。


「ちょ、ちょっと待ってくれ。その魔法は…」


ランパードの声が聞こえたが、もう遅い。私の周りには炎の渦が巻き起こり、一瞬で部屋全体に広がった。


「インフェルノフレア!」


爆発音と共に、宿の一室が吹き飛んだ。


私は煙の中から飛び出し、通りを走り抜けた。背後では宿の主人や他の客たちが騒ぎ立てている。後で弁償するつもりだが、今はただ逃げることしか考えられなかった。


街の外れまで来て、ようやく足を止めた。夕焼けの空を見上げ、深く息を吐く。


「次こそ見つける!理想のダーリン!!!」


力強く拳を握りしめた。この世界のどこかには、私の炎魔法ではなく、私自身を求めてくれる人がいるはず。


そう、次の街では絶対に見つけてみせる。


私の冒険はまだ始まったばかり。心の中の炎は、決して消えることはない。

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