第33話 みんなと海へ行く3 海辺でご馳走食べます

「セレナちゃんは、どういう食べ物が好きなの?」

「いろいろな食べ物好きだけど、磯貝も好きな食べ物に入れようかな?」


 すかさず、レティが突っ込んだ。

「なかなか渋いねぇ…。」

「まぁ、おいしいけどね!」

「この世界には、もっとおいしい物がたくさんあるよ。」

「ヴェス! いろんなお店に連れてってあげてないの?」

「色々銃の訓練とかしてまして…。」


 この前、セレナちゃんと色んな所にデートに行ったってことは言えなかった…。

「銃の訓練がすべてじゃないでしょ! もっとお店に連れてってあげなよ!」

「はい…すみません…。」

「今度三人で私の知ってるおいしいお店に行きましょう!」

「え? いいの? やったー!」


 いつも思う。セレナちゃんは、素直に喜ぶ。そういう素直な女性は俺は好きだ。


 そういえば、セレナちゃんとお店に食事をしに行ってなかったので、素直にうれしい。もちろんレティと食事に行くのもうれしい。それを3人で一緒に行けるなんて…。


 前世の俺の状況から考えれば、夢のようだ。事故にあった後、女神さまのお願いを聞いてよかった。


 そんな話をしていると、レーザー先生が、

「そろそろ昼だ。みんな飯だぞ!」


 生徒みんなから歓声が上がった。


 料理人による昼食が出てきた。

 前菜は、ブラッドアップルサラダか。ブラッドアップルは、その名の通り血のように赤い皮だけでなく、中も赤いフルーツだが、甘いのは甘い。なので、単体でフルーツとして食べるのもよし、サラダに入れるのも良しで、色々な料理に意外と出てくるフルーツだ。


 スープはブルーホーン肉のスープだ。ブルーホーンは、青い角を持った鹿でどこにでもいるが、出汁をよく取れることで有名な鹿だ。安価な料理から高級料理まで使われる食材である。


 肉料理は、グリーンドラゴンのステーキか。グリーンドラゴンのステーキはタレにしてもおいしいが、好みが分かれるかもしれない。やはり一番おいしいのは、塩コショウだ。何の肉に近いといえば、説明は難しいが、上品にした牛肉のような感じだ。とにかく、上品なのにうま味がしっかりある高級食材だ。俺もあまり食べたことはない。


 魚料理は、ライトフィッシュを焼いたものか。ライトフィッシュは真鯛のような見た目だが、夜になると目だけが光るのだ。前世でいうアフリカンランプアイみたいに。これもブルーホーンの肉と同様に様々な料理に使われる。


 グリーンドラゴンのステーキも塩コショウだけだったが、ライトフィッシュも塩だけかけてあるシンプルなものだ。シンプルな味が好きな俺にとってはありがたいことだ。そして、各々に料理が運ばれた。


「セレナちゃん、どれが気になる?」


 レティが聞いた。

「やっぱりステーキかなぁ。」

「やっぱりそうだよね! ステーキおいしいもんね。レッドドラゴンのステーキもおいしいよ!」

「じゃあ、さっそくいただきますー。」

「おいしい! おいしいよ、レティちゃん!」

「でしょ! まぁ、私が作ったわけじゃないけど。」

「私は結構グルメだから、食べ物のことは何でも聞いてね。」

「わかった、ありがとう! 私もこれからこの世界の色々な食べ物を食べてみたい!」

「まかせて! さっきも言ったけど、いろんなお店に食べに行こうね! もちろんヴェスも一緒にね。」

「うん!!」


 磯の香りと海風を感じながら、女性に囲まれつつ食事をしていると、本当に何とも言えない気分の高揚を感じてしまい、少し涙が出た。


 すると、セレナちゃんが俺が涙を流しているのに気づいたのか、「ヴェス、泣いてる? 大丈夫?」と聞いてきたので、

「ヴェス、どうしたの?」

「我が弟よ、どうした?」


 とレティと姉が聞いてきた。


「砂とかが目に入ったのかな」とごまかした。


「ほんとー? 海辺で女の子と食事してるから、嬉しくて涙が出たんじゃないのー?」と姉が言ってきた。


 なぜ分かる…。さすが我が姉だ。俺のことを大好きと言ってるだけあって、俺のことを分かってるのか。と、うれし涙を流しながら食事を終えた。そうして俺たちは、海を後にしたのだった。


 次の日、昨日はおいしいものも食べたし、父にもらったこの銃で強くなって、セレナちゃんに頼りきりにならないように頑張るんだと思い、姉とともに銃の練習を再び始めた。


 この世界の銃は、身体能力が高い俺でも前の世界よりも反動が大きすぎるから、魔法弾を使ったり、銃に魔法を込めるともっと反動が大きくなる。だからまずは、.500 S&W マグナム、通称「草銃」に慣れなければいけない。とはいえ、すでにほとんど慣れてはいるが。


 海に学校のみんなで行って帰ってきて、数日銃の練習をして何日か経ったある日、姉と銃の練習をしてると、セレナちゃんが覗きに来た。


「ヴェス、がんばってるね。」

「うん。何かあった時、セレナちゃんに任せっきりは嫌だし、申し訳ないから。」


 セレナちゃんがふざけて言った。

「そうなんだ。お主、私に追いつくのは大変であろう。頑張って精進するがよい! ってね。銃の練習、がんばってね。」


 と微笑んでた。


 ふざけてるセレナちゃん可愛かった。この笑顔が毎日見たい。だから俺は、魔族にこの笑顔が見られなくならないように、魔族からみんなを守るんだ!!




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