第17話
「別の世界から来たと……そんなことがあるものなのか」
わたしの話を聞いたガレンさんは、眉間に皺を寄せて難しそうな顔をする。
「……やっぱり信じられないですよね。わたしも、自分でもまだよくわからなくて」
「いや、しかし……」
ガレンさんはしばらくして、ふと思いついたというように顔を上げた。
「瑠衣。君は最初に気づいた時には、森にいたと言ったね?」
「あ、はい」
「あの森は『笛の森』と呼ばれていてね。今から百年ほど前、当時この国で脅威的な力を持っていた魔女を封印したと言われている場所なんだ」
それって……もしかして、いや、もしかしなくても、ミレイユのことだ。
ガレンさんは話を続ける。
「私もよく知らないが、『笛』というのは、この本に描かれているこの棒のような道具のことらしい。笛の魔女ミレイユはこの道具を使って人々の心を操り、多くの人々の命を奪ったということが、記録に残っている」
まさか、ミレイユがそんな恐ろしいことをするなんて信じられない。何かの間違いではないかと思った。
「わたし、その『笛』って知ってます。それも楽器の仲間で。このギターと同じように、音楽を奏でられるんです」
「『音楽』って……?」
「それは、ええと、こんな感じです」
リアナの問いに応えて、わたしが再びギターを出そうとすると、ガレンさんは慌てた様子でそれを止めてきた。
「いや、わかった。それはもう、やめてくれ」
「あ、はい」
ちょっとがっかりしながらも、わたしは手を止める。
「つまり、やはり君もこの魔女と同じような力を持っているということなのだな」
わたしの発言を聞いて、ガレンさんは顔を顰める。
「え……まさか、瑠衣にそんな力があるなんて……」
一緒に話を聞いていたリアナも、すっかり怯えた目でこちらを見ている。
「昨日広場で皆が夢中になっていたのも、魔法というわけか」
「いや、違うって……だから、わたしは、魔法なんて使えませんってば……」
一生懸命説明しようとしても、ちっとも信じてもらえない。
「瑠衣。……すまないが、これ以上君にここにいてもらうわけにはいかない。この街を出て行ってほしい」
ついには、そんなことまで言われてしまう。
「そんなぁ……」
そんなこと言われても、困ってしまう。ミレイユもいなくなってしまったし、わたしはこの先どこへ行けばいいのかわからない。
「こんな小さな街でそのような力を使われると、困るんだ。皆の穏やかな生活を奪わないでもらいたい」
ガレンさんは申し訳なさそうな顔でそう言う。
「瑠衣、王都に行ってみたらどうかしら? もしかしたらここにいるより、何かわかることがあるかもしれないわよ!」
リアナはそう提案してくる。
「おお、確かにそうだな。王都メロディアならば、ここよりも多くの文献が見つかるだろう。もしかしたら瑠衣が元の世界に帰る方法もわかるかもしれないぞ」
ガレンさんもそんなことを言う。
「そういえば、ちょうど昨日、メロディアからのお客さんが来ていたわよ! まだいると思うから、連れて行ってもらえるように頼んであげる」
そう言って二人は勝手に話を進めてしまうのだった。
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