第13話
「ちょ、ちょっと待って! わたしが稼ぐって……どうすればいいの?」
まさか変なことをやらされたりしないよね? 不安になっていると、ミレイユは言う。
「簡単なことさ。特技を活かせばいい」
そう言うとミレイユは路地裏に入っていく。
「よし、ここなら見えないな」
そう言って、頭上に手を伸ばすと、凛とした声で唱える。
「レウェルティ(おいで)」
すると空から何かが降ってくる。ミレイユはそれを片手でキャッチすると、わたしに手渡してきた。
「これがあれば、できるだろ」
そう言って差し出したのは、なんとわたしのギター。
「えええ、なにその技!」
「魔女にはこれくらい普通だが」
ミレイユはそんなことを言うけど、なんだかずるいと思ってしまう。
「じゃあ、早速行くぞ」
ミレイユはそう言って、わたしを街の中心部に連れて行く。
この街の中心部には噴水のある広場があって、そこが人々の交流の場にもなっているみたいだった。
つまりミレイユが言いたいのは、ここでわたしに楽器を弾けということのようだ。
路上ライブなんてやったことがないし、そもそもわたし、そんな大勢の前で弾けるほどの実力じゃないのに……。
なんだか気が進まなかったけれど、お腹も減ったし、お金を稼がないといけないなら、ここでギターを弾いて、街の人たちに投げ銭でもしてもらうしかない。
わたしは仕方なく、ベンチに腰掛けて楽器ケースを開ける。ギターを取り出してポロン、と軽く音出しをした。
すると、広場が急にざわつき始めた。
なるべく気にしないようにして、チューニングを始める。軽く指鳴らしをして、まずは練習曲からやってみることにした。
ポロン、ポロロン。
そうこうするうちに、わたしたちの周りには、1人、また1人と、人が集まってきた。たくさんの視線を感じるけれど、なるべく意識しないようにして、わたしは演奏に集中する。
その間に、ミレイユは袋を持って人々の間をまわり、お金を集めているようだった。
演奏が終わる頃には拍手が起こり、人々はわたしの周りに寄って来て話しかけてきた。それはなんという道具か、とか。今の音は一体なんなんだ、とか。いつものわたしと演奏した後のミレイユみたいに、みんな頬を赤らめ、息を荒くして、中にはわたしに触れようとしてくる者さえいた。
思わず固まってしまっていると、ミレイユがわたしを庇うように割って入ってくる。
「はい、今日の演奏はここまでだ。続きはまた今度」
ミレイユがそう言うと、人々はさーっとその場から離れていなくなった。
「お疲れ、よくがんばったな」
ミレイユはそう言うと、わたしの肩にポンと手を乗せる。反対側の手には、お金がぎっしり詰まった袋が握られていた。
「すごい、こんなに!?」
「それがお前の実力ってことだ。自信を持て」
ミレイユは袋からお札を一枚取り出して、それをひらひらさせながら。
「よし、飯を買いに行くぞ!」
そうして、満面の笑みを浮かべるのだった。
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