ハグフレンズ、おじさんとわたし(完)

みずか🎼

第1話 おじさんと私

「脱がせて?」

私は万歳ポーズを取る。

上司は、私が羽織っていたコートのボタンをゆっくり外して脱がせてくれた。

ハンガーにかけるとそれを壁についているフックに引っ掛けた。

「コーヒーいれるね」

上司がキッチンへ向かうところを、私は服の裾を掴んで止めた。

「全部脱がせてほしいんだけど。」

上目遣いに見て、おねだりをした。

「わあ。悪い子だね?」

その言葉にキュンとした。

上司は笑ってかわすと、キッチンに向かった。

仕方ないのでついていく。

スイッチを押すだけで豆が挽かれて、いい香りがたちこめた。

電気ケトルがあっという間にお湯を沸かして、コポコポと音をたててコーヒーが作られていく。

「ねえ、早くして」

待ってられなくて2回目のおねだり。

「じゃあ、コーヒーができるまでの間ね。」

上司は、そっと優しく私を抱き寄せた。

「ねぇ、さっきのもっかい、言って?」

「悪い子」

ああ、聞けた。今日も聞けた。

これがいい。満たされる。

私は悪い子なんだ。

ここは、一人暮らしの上司の家。

この時間だけは私はただの年下でいられる。

上司と部下でもない、おじさんと年下の女の関係。

母親でもない、わがままを言ってもいい関係。

そして絶対に一線を超えないからこそ、許される関係。

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