第一章8話・初陣編「チーム」
「……じゃあまずは、こいつらをどうにかしないとな」
災害因子達はまだまだ襲ってくる気配がある。
「巫心都ちゃん、戦える?」
しかし力なくぶら下がる右腕を見て、ためらってしまった。
永遠の方が肉体的に大変なのに、手を差し伸べてくれている。
申し訳なさと、己への不甲斐なさを巫心都は感じていた。
しかし永遠は巫心都を安心させるように笑い、頭を軽く横に振る。
「私は大丈夫。握って」
「……うん…やる…私も」
巫心都はこれ以上、守られるだけで
だから、巫心都は自分を奮い立たせ戦う決意をした。
「よし、そうと決まれば…」
刀の先を背後に向け右腰に構え、「
敵からは刀身が隠れて見えない構えだ。
そして
すると一気に全身からエネルギーのような青白いオーラがほとばしる。
「私も
そして。
——穂緒と永遠は勢いよく災害因子の集団に突っ込んでいく。
何もかも強制的に信じられなくさせられ、精神を殺された
しかしいかに
突っ込んでくる穂緒達を見た災害因子達に、動揺が波のように伝わる。
そして穂緒達にステッキを向けて乱射してくる。
そして次々と
もう、穂緒は
一方、
それを爆発させると一瞬で敵の射線を
そして、突然、——剣が変形、光の弦が現れて弓の形をとった。
使えない右腕の代わりに、弓の弦を口で引き絞ると光の矢が出現。
撃ってくる災害因子に狙いを定め、矢を放つ。
矢は複数に分かれて災害因子達に命中した。
敵は矢が命中したことで怯み、攻撃の手が緩む。
右腕は使えないが、永遠は戦い方を考えていた。
その隙に、
巫心都はその矢を弦に
その矢は狙いこそ甘いが、
巫心都の攻撃を初めて見た
わがままだが、そのポテンシャルを見せつけられた。
三人は急ごしらえのチームだったが、敵を順調に倒せていた。
あっという間に十体ほどを黒い塵に還した。
これが、みんなで戦うことでできる景色なんだ——。
私、もう一人でちぢこまっているだけの子じゃないんだ——。
永遠は必死に戦場を駆けまわる。
——自分はここで変わる。
それを言葉だけでなく現実にするため。
彼女は考えられる限りの全力を出した。
永遠は休む暇もなく、災害因子を倒していく。
次へ、次へ——。
……次第に疲れて、永遠のスピードは衰え、左腕も力が入らなくなってくる。
そして味方への注意が緩んでしまった。
「ちょっとあんたッ、避けて——!?」
——
振り上げられる片手剣。
いかに武装をしても、武装と武装の間、例えば首や関節を狙われればひとたまりもない。
しかし。
——ダメだ、間に合わない。
片手だけでは剣を振るのもままならず、限界にきていた。
自分の力を過信しすぎた。
だから罰が当たったんだ。
……やっぱり、調子に乗っちゃったのが悪かったのかな。
皆で一つになれて、一人じゃどうしようもなかった状況も、簡単に変えられて。
自分が皆の一員になって、自分が変われた気がして。
でも、それは一瞬だけだった。
すぐ、自分が危険な状況を作って。
良かった状況が壊れそうになる。
みんな、壊れる。
ああ……
ああ、ああ……
叶うなら。
もう少しでも、
ほんの少しでも、
届いて。
少しでも届くように。
……しかし伸ばした手は、届かない。
それでも
届け、
届け、と。
————空間に、電撃が走った。
その電撃のようなエネルギーは、
災害因子達は黒い塵へと還っていく。
空間に残ったエネルギーは
永遠の傷ついた右腕を覆うように。
それは永遠が作り出した、新たな右腕だった——。
それが腕の形をとり、彼女の新たな力となって現れた。
「はあああ……良かった…」
「すごい……これ、私がやったんだ。すごい……」
手を閉じたり、開いたりしてみる。
「
……しかしそうしている内にも、災害因子は手を緩めず、急襲してくる。
すると先程のように、エネルギー体の右腕は空間を電撃のように走る。
災害因子をまとめて三体、貫いてみせた。
腕は
「もう、やらせないよ——」
永遠は目の前に数十と残っている災害因子をねめつける。
……今なら、全てやれる。
その確信が、傷つく以前よりも心強くなった右腕から、強く感じられる。
「ああ。ここからは俺達の番だ」
「うん、いこう
永遠はエネルギーの腕を横に構え、歩き出す。
一陣の風が通り、永遠の服を躍らせる。
エネルギーの腕を握ると、周囲の空間に電撃のようなエネルギーが走る。
「全て、
腕が、巨大な矢に変形した。
永遠はエネルギーたなびくその大矢を、放つ。
矢は目にも止まらぬで飛んでいき、無数の矢に分かれて災害因子達を強襲した。
数々の災害因子が、一瞬にして黒い塵へと還っていった。
「らああああッッッーーーー!!!」
二人の足止めにより、
穂緒と永遠を襲おうとする者も、巫心都が事前に仕留められる余裕もできた。
それを槍のように変形させ——一気に伸ばして突き刺す。
空間を
——三人は、一つのチームとして災害因子を完全に圧倒していた。
災害因子は成すすべなく次々と消えていく。
そこで流石に
しかし、その隙を逃さず
チーム全員が災害因子を討つ覚悟を持っていた。
完璧な連携を備えた三人は、数多の災害因子を
「これで……」
「最後だッ!!!」
その背中から心臓を狙うように
災害因子は手足をジタバタさせ、必死に抵抗を見せる。
が、やがて動かなくなり、黒い塵へ還る。
そこには仲間の顔。
そして災害因子は一体たりともいなかった。
——そう、やったのだ。
やり遂げたのだ。
「やった……遂にやったぞ……遂に、俺たちは生き延びた……!」
死ぬ思いで掴み取った勝利。
心に染み入るような達成感があった。
「皆さん、お疲れさまでした……!」
「
「こっちこそ、
「……うん」
「それじゃあ、この辺りの敵も倒せたので、この都市の中から抜け出しましょう!」
これだけ
ここでまたひょっこり
ここは災害因子によって意図的に形成されたフィールドのど真ん中。
敵がどのように自分たちを追い詰めてくるか分からない。
それならば荒野に抜け出て身を隠した方がはるかに安全と言える。
「そうだな、ここからさっさと立ち去ろう」
三人は顔を見合わせて、お互いの了承を確認する。
「それじゃあ、みんな、行こう!」
二人も永遠について走り出す。
俺たちは、まだ強くなれる。
穂緒はその確信があった。
「……うっ」
突然
そして——先を行く
「……
光に照らし出された
「おい、どうした、
——
「ああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!」
武器をとり落とす、カランカラン、という音が響く。
顔は真っ青になり、顔中が絶望の色で染め上がられていた。
「どうしたんだ
「来ないでぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!!!!!」
しかし
「そ、そうだ、わた、わたしは、わたしは……このどん詰まりの人生なんて、変えられるわけが、な、無かったんだ。こんな、死んでまで、どうにかしようなんて、浅はかで、
空を
先程まで
「もう、全てがどうでもいい……もう、何もしたくない……もう、もう、もう……ああ…あああ…ああああああああああああ!!!!!」
光に向かって許しを請う姿は、神話の一節のように見える。
やがて、右腕は槍に変形し……。
「あがぇっっっ…………!」
——自らの胸を貫いた。
前に進むために手に入れた力で、
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