第一章7話・初陣編「お前の人生経験でぇ、私の人生をぉ、語るなああぁぁぁ!!!」
「た、大刀流火さんっ!!!」
永遠は複数の正気を失った
穂緒は弾かれたように永遠の元へ急いで向かう。
災害因子をタックルし、馬乗りになる。
災害因子の抵抗の様子から、怒りの色が見える。
その人間的な反応に穂緒は一瞬怯むが、無理矢理に刀を振り下ろした。
災害因子は苦しそうな姿で固まったまま、黒い塵へと消える。
「た、
「ああ、なんとか」
彼女の持つ剣からも黒い塵が空中へ溶けてゆく。
彼女もまた災害因子を手にかけたのだった。
その視線を感じとった永遠は穂緒になんとか自分の気持ちを伝えようとする。
「あ、あの…私も、戦います…!こういう時、いつもは、し、尻込みしてしまうんですが、た、
胸の奥で温かみが広がっていくのを感じる。
「ああ。ありがとう……」
「……あ、あれ!!まだ来ます!」
大通りの方から狂気を滲ませた災害因子が、次々と歩いてくる。
中にはステッキを片手剣に変えて接近戦をしようとする者もいた。
「多いな……いけそうか?」
「な、なんとか……ガッツで、がんばります……!」
と、そこで
「そういえば……
ビルの壁際で、息を殺すように体育座りで
反応がないため、
「おい、
すると巫心都は、ぱたんと横に倒れてしまった。
「
「
災害因子が狂ったように次々と襲い掛かってきた。
穂緒は巫心都を
攻撃の合間に、声を張り上げる。
「
「…もう、いやだ………」
僅かに、
「
巫心都はしゃくりあげながら胸元のペンダントを握る。
そして、悲痛な声音で泣き始める。
「私は……何も…したくない。ここに、来たのは、し、死んじゃいたく、なかった、からで……、生まれ、変わるか、何とかをやるかって、生まれ変わるなんて、ぜったあい、いやだから、……でも、こ、こんなことを、する、…ためじゃない……わたしは、まだや、やりたいことが、あったのにぃい……ど、どうして、わたしがっ、死ななきゃ、なんないのおおぉぉっ!!!」
https://kakuyomu.jp/users/kamishironaoya/news/16818622171583809009
その間、
しかし穂緒は体力、精神ともに限界でいら立っていた。
疲労で限界の時、人に気遣う心の余裕がなくなるのは穂緒も同様だった。
穂緒は巫心都にあたるように、声を大にする。
「お前、さっきまで寝てるかと思ったら好き放題言いやがって!死んで辛いのは皆同じなんだ、俺だって辛いんだ、戦ってくれ!」
そう言うと
「さわんないでええぇぇぇーーー!!!」
巫心都は猛然と穂緒の手を払いのける。
「あんたと同じわけないだろぉぉぉ!!!」
巫心都は涙を
穂緒を殺さんばかりに睨みつける。
「お前の人生経験でぇ、私の人生をぉ、語るなああぁぁぁ!!!あんたは私の人生でぇ!私の立場でぇ!私の苦しみを受けてねえんだからあぁ、あんたの経験と比べてどんくらい辛いかどうかなんて、分かるわけないだろぉぉぉおおおおおお!!!!」
「あんたがこんなことやっても、なああんも意味ないんだよぉ!!!あんたたちの人生も!私の人生も!何もかも!全部、終わってんだよぉ!!!あんたが!なにしても、なにもぉ、とりもど…せ……ないぃぃ……わたしがぁぁぁ……なに…したって…いうの……」
巫心都は手で顔を覆って再び泣き始める。
しかし
「お前!俺がどれだけ辛い思いして敵を斬ってきたか分かってねえからそんな事言ってんだろ!自分のことばっかで、人のためにやろうとか思わないのか!?」
「他人のために今やったって、何になんだよぉぉ!!!まず自分が救われないでどうすんだよバーカ!!!……ねえ、あたし間違ってんの?……ねえ、ねえぇええ!!!!」
「そんなに死んだのが悔しいなら、災害因子に復讐すりゃいいだろ!?」
「だからそんなんやったって、なぁんも意味ないって言ってんじゃん!私は私の人生を取り戻したいのぉ!!!」
その言い争いは、致命的な隙を生む。
二人向かって半狂乱状態で片手剣を振り上げて迫る影。
穂緒が気づいた時はその凶刃が目の前に迫っていた。
その凶刃が腕を貫く。
——腕からナイフが出た「永遠」が、二人を守るように災害因子に立ちはだかっていた。
「
あの頼りなさそうな、うつむき気味の永遠が、自分の危険も顧みず前に出てきた。
穂緒は想像だにしていなかった。
永遠は苦渋に歯をむき出しにしながら顔を歪める。
「がああぁぁっっっっっっっっっ!!!!!!」
刃のほとんどが貫通していた。
今この一瞬も耐えがたい激痛が駆けまわる。
逃れられるなら、今すぐにでも死んでしまいたいと思うほどの激痛。
しかし、永遠は今この瞬間負けてはならないという一心だけで顔を上げる。
怪物のような唸り声を上げならその片手剣を引き抜く。
そして——地面に落ちていた自らの剣を災害因子の首に突き立てた。
災害因子は黒い塵となって消えてゆく。
顔中、脂汗をかいた
しかしその表情は、修羅場を乗り越えた戦士の、覚悟を持った顔つきだった。
今までの永遠はそこに存在していなかった。
「おまえら、……ごちゃごちゃうるせぇぇぇーーー!!!」
その叫びは一瞬にしてその場の音を
髪が
別人がそこに立っているのかと錯覚するほどだった。
「私はっ…!この状況でも、絶っ対、生き残るっ!!!だって私、もう一度、私としての人生を、ここで始めたいから!!!死んでそのまま、諦めちゃいたくないから!!!」
その涙は戦場に咲く花のように、一際美しく輝いて見える。
「私は、今まで消極的な人生でした。自分から動くことが苦手で、いつも誰かに助けられていました。そして死んでから気づいたんです。私、このままうじうじしたままで、次の人生を歩みたくないって!!!だから、私は神人になりました。私は、話しかけるのが苦手でも、
積極的に話かけていたが無理をしているようにも見えていた。
しかしそれは自分を変えるために人知れず踏み出していた一歩だったと、穂緒は今更ながら気づく。
「だから、私はここで変わる!今までの私は捨てて、自分から人生、掴み取りに行く!!!」
それが自分と関わってくれた二人の仲をつなぎとめると信じて。
「ここでの戦いは、意味、あります!……だから!二人も一緒に……戦ってくれますか?」
同年代の少女とは思えないその凄惨な手。
それは彼女の覚悟と決意を生々しく表していた。
「ああ…ああ…!もちろんだ…!」
少女らしからぬ強靭な意志が現れた勇姿に、穂緒は心を動かされていた。
「……ごめん、
「
「……分かった、もういいから。……私も、少し言い過ぎた、かも」
穂緒がすっぱりと頭を下げたのを見て、巫心都も反省の態度を見せる。
二人の仲はとりあえず修復されたのだった。
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