第46話 帰れない

 「私の話を聞いてくれたらそれでいいの」

 翌日の昼、ぬらりと起きてきた山野が絡んできた。


 昨日、山野はあれからずっと寝ていた。

 死にかけの状態であったのだから無理もないのかもしれない。


 「まだ帰らないのか」

 「帰れないの」

 「お前は元気だし、車もある。いつでも帰れるじゃないか」

 「夫のDVがあるの」

 「結婚してるのか」

 「子供もいる」

 「子供もいるのかよ」

 「だから、帰れない」

 「意味が分からない」


 こいつは全部失って、その恨みをぶつけるために来たはずだ。

 なんなんだ一体。家族もいるくせに俺を殺しに来たのか。

 どうかしている。


 「前の夫が息子を殺しちゃってさ、前の夫は濱本健太なんだけど覚えてる?」

 「そんな奴もいたな」

 「幸せだったのよ、あの頃は」

 「その話は長くなるか」

 「ここまできて話させないの?」

 「いや、飯の用意をしながらでいいか」

 「わかった、手伝う」

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