第45話 帰れ

 イモを食べていると、家から山野さんが出てきた。「イモ食べるか?」と聞くと首を横に振ったので無視する。

 元気になれば「殺してやる」とか騒ぎ出すのだろうか。だとすれば天晴、見事なり。僕は潔く首を差し出すので介錯してもらいたい。


 「気が済んだら帰ってくれ。それか、俺を殺したいなら切れ味のいいナイフでやってくれ」

 「ありがとうございました」

 「なんで礼を言うんだ」

 「殺そうとしたのに助けてくれたから」

 「死体をそのままにしたら川が汚染されると思っただけだ」

 「だとしても、布団とか、水とか、手当とか、ありがとう」


 山野は立ち尽くし、こっちを見て何かを考えている。

 「もういいか?帰ってくれ」

 「私ね、ちょっと精神的に参ってて」

 「言い訳はいい、帰ってくれ」

 「ちょっとくらいいいでしょ?家に帰っても話せる人もいないから」

 「俺には必要ない」

 「私には必要なの。じゃなきゃまた殺しに来る」

 「そうか、それでいいから帰ってくれ」

 「冷たいね」

 「さっさと帰れ」


 女はまた考える顔をして部屋に入った。

 イモを食べ終えて部屋に入ると布団にくるまっている。

 まったく、なんなんだ。

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