第31話 森の調査
何をすればいいのかも分からないまま、三人は「終わりの森」へと足を踏み入れた。
調査といっても内容はあやふやで、気が滅入る。
とはいえ、自分を含めて実力者が三人いる。その安心感だけが心の支えだった――そのときまでは。
「うあぁあーーー、キツイ!!」
意外にも、最初に音を上げたのは浪人だった。
「お前ら、なんで平気なんだよ!? 寝れねぇし、休めねぇし、最悪だぞ!!」
「この森、ソレガ普通。」
オークさんが落ち着いた様子で答えると、僕も自然と頷いていた。
この森で“寝る”なんて自殺行為。
“休む”という選択肢は、そもそも存在しない。
気を抜いた瞬間、殺される。それがこの場所の“当たり前”だった。
「……4級って、たいしたことないな。」
「いやいや、お前らが異常なんだって! 自分の格好見てみろよ!
靴も履かずに、全身に草巻いてんだぞ!?」
何を言ってるんだ?
靴なんて履いてたら動きに制限が出るし、地面の振動も察知しづらくなる。
草を巻くのは体臭を自然に溶け込ませるためだ。
カルカッソン育ちの浪人からは、まだ“街の匂い”が漂っている。
オークさんと顔を見合わせ、つい苦笑した。
「なんで俺が異常者みたいな扱いなんだよ……
頼むから、哀れむような目で見ないでくれ……」
――こうして、今回の探索は賑やかに幕を開けた。
文句ばかり言っていた浪人だったが、戦闘では頼もしかった。
ゴブリン、オーク、果てはオーガまで――
すべてを一刀のもとに斬り伏せる。
居合術と、スキル「バリア」を足場にした立体戦闘は見事の一言。
多対一でも悠々と制圧し、その実力は本物だった。
「飯は?」
「オーク肉だ。」
「……二日連続!?」
「嫌なら、自分で用意しろ。」
「いや~、ほら……当番じゃないし、俺そういうの柄じゃないし……」
浪人の曖昧な言い訳には興味もない。
僕が冷ややかな視線を向けると、浪人はしぶしぶ矛先を変えた。
「なぁ、オークさん。あんたも同族を食べるのは、さすがに嫌だよな……?」
「オーク、ウマイゾ。」
一言。
それだけで、浪人の心は折れたようだった。
その後、黙ってオーク肉を口に運ぶ彼からは哀愁が漂っていた。
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