B美の場合



【理想パート】

 B美は高校時代からの友人です。ずっと独身で、印刷会社のデザイナーをしています。給料もよくて、子どもにかかるお金もないから、私なんかよりも貯蓄がたくさんあって、持っているものは高級品ばかり。そんな彼女が家を買ったというので、さっそく遊びに行ってみることにしました。


 場所は中心部から離れた郊外。駅から車を走らせて30分程度の場所だけど、広い庭付きで平屋の一軒家です。一人暮らしするには、ちょうどいい広さ。庭はバラ園になっていて、とてもきれいに手入れされていました。


 私はB美と一緒に庭でお茶をしました。まるで英国の庭園みたいで、優雅な暮らしです。子育てに追われている私とは大違い。憧れます。


 周囲には、昔ながらの農家が立ち並ぶけれど、とっても静かでいい場所です。


「退職したら、もっと庭いじりするんだ。ここに友達呼んでハンドメイドの教室もやるつもりだから。あなたも来て」


 彼女は退職後は、ずっとあこがれていた郊外のスローライフに夢膨らませているようでした。


【現実パート】

 老後、庭いじりをしたいって人は大勢います。けれど、庭ほど大変になってくるものはないです。日々の草むしりはきつい作業です。膝は痛いし。腰がやられます。農家現役の人ならまだしも。炎天下の元、長い時間草むしりをするのは素人にはきついのです。


 夫が作った立派な日本庭園を更地にした奥さんに会ったことがあります。年に数回、庭師に頼む資金がないそうです。夫が生きていた頃は二人の年金でまかなえたそうですが、それも難しくなったそうです。それに、庭を楽しむほど心の余裕もないとのこと。毎日生きていくので精一杯。そう言っていました。


 B美もあの庭に苦しむことになることが予測できます。それに、周囲の家は昔ながらの農家です。新参者が受け入れてもらえるか。仕事をバリバリしているB美はリタイアした後、地域デビューがうまくできるだろうか心配です。


 それにB美の家から一番近いスーパーまで車で5分はかかります。免許返納をしたら買い物が大変になるでしょう。路線バスはあるけれど、1日二往復くらいの少なさ。バス停までも距離があります。買い物をしてバスで帰宅するのは高齢者には難しい作業です。今の内にネットスーパーなどを検討しておかないと。買い物難民決定です。


 そして最後。身寄りの問題。甥っ子が遠方にいると言っていたけれど、全然交流はないようです。老後、必ず親族に連絡が行くときがくる。その時を考えて、甥っ子とは仲良くしておいたほうがいいかもしれないです。





 

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