海賊少年ジャックは異世界人に恋をする
社会ゴミ²の下剋冗長
第1話 少年とボク
急に頰に鋭い痛みが走る。何事かと思いボクは目を開く。目の前には知らない男の人がいた。
この人怖い……。
今の状況から察するにボクはこの人に頰を叩かれたようだ。
「お前、どこから来た?」
「え、えっと……」
ここで返答を間違えると命が危ないことは容易に想像ができた。
「ちっ、まあいい、こっちに来い!」
いつに間にか腕を後ろ手で縛られており、右腕を力強く引っ張られる。
「……っ!」
痛いっ!
だが、ここで声を出すと男の気に触るとわかっていたので、なんとか声が出ないように努める。少し歩かさせられると、檻のようなところに五歳くらいの少年が閉じ込められていた。
ボロボロだ……痛そう。
悠長なことを考えていると男はボクを檻の中に投げた。
「いっ!!」
勢いがありすぎてボクは床に全身を打ちつけた。思わず男を睨む。睨み返されて恐怖で萎縮してしまい、檻の入口とは反対の壁へと下がってしまう。
目に涙が浮かび、上手に呼吸ができない。
「ひっ……ふ…………あぅ……」
やがて肩で息をするようになり、涙で視界がボヤけてきた。
「ふん」
男は檻の扉を閉めた後、部屋の扉を閉め消えていった。
助かった……?
荒れた呼吸をなんとか整える。袖で涙をぬぐい、状況を理解しようとあたりを見回す。ボロボロの光が通りにくい薄暗い部屋には檻に閉じ込められたボクと少年のみが存在していた。
少年を見てみると、身体中がボロボロで痛々しい。服はただの布切れと化し、顔や体も傷だらけで膿みができている。ウジが湧いていないのが不思議なくらいだ。
「あ、あの……」
意を決して声をかける。
少年はゆっくりと顔をこちらに向けてボクの目を見つめた。ボクを見つめる瞳はとても虚で輝きがないように思える。
「ここはどこですか?」
ボクの問いに少年は首をかしげる。
知らない、もしくはわからないってことかな。
「ええっと、じゃあ……ここに関して何か知っていますか?」
質問の幅を広げてみる。少年は首をかしげたまま、ボクをじっと見つめているままだ。虚な瞳にほんの少し輝きが映し出される。
まるで何かを期待するように。
その眼差しの真意はわからないがボクは口を開く。
「あの、ボクはウミって言うんだ」
少年に少しでも心を開いてもらえるようにタメ口で話す。
「君の名前を教えてくれる?」
少年はかしげた首を戻す。それまで閉じていた少年の口が開く。
「……」
が、少年は何も発さない。
もしかして話せない……のかな。
名前を教えてくれようとしてくれているのか、少年は何度か口を開いては閉じる。
「……ありがとう、話せる時に教えてくれる?」
少年はゆっくりと大きく頷いた。
ボクは少年の様子から、ここでどれほど酷いことをされるのかがわかってしまった。想像してしまい、身震いしてしまう。
体が身震いしているせいか、この場所全体がゆったりと揺れているように感じる。
あれ?もしかして船の中?
部屋の扉をみると写真とかで見たことがあるような船内の丸い窓がついている。
「あの、ここって船の中?」
再度少年に問うと、少年は頷いた。
船、なんだ……仮に檻が開いた時に走り出しても逃げ場がないんだ。
逃げられないことを悟り、さらに恐怖が襲ってくる。
ど、どうしよう……。
怯えながら悶々と考えているとバンッ!と勢いよく扉が開いた。さっきの男だ。
「良かったなお前、雑用係だ」
「ど、どういうこと……でしょうか……?」
恐る恐る聞いてみる。男は怪訝な顔をした。
「お前に質問する権利はない、だが今の俺は気分がいいから答えてやる。お前は今日から俺たち海賊団の奴隷だ、お前は容姿がいいからそいつと一緒に全ての雑用をこなすだけだ。わかったらついて来い」
「つ、ついて行かないとどうなるんですか……?」
男は振り向いてニヤッと顔を歪ませて、ボクの髪を掴んだ。
っ!?
「こうなるんだよ!!」
「いっつ!!」
何が起こったのかが理解できない。急にみぞおちに鈍痛が走る。痛みで頭が回らない。咳と涙で何もできない。
「わかったならついて来い」
殴られたんだ、ということに男の声で気が付く。
何もしてない……のに、殴られた……。
膝をついて呼吸を整えているボクとは違い、少年は毎日のことだとでもいうように檻の外に出て男についていく。
ボ、ボクも行かないと、さっきよりも酷いことが起きる……!
横になりたい体を無理やり気合いで起こして立つ。少年の後ろに追いつき、ついていく。
何?ここ?
廊下のような先が伸びていて先が見えない暗い道の左右には、ボクたちがいた部屋の扉と瓜二つの部屋がたくさんある。
な、なんだろう……他の人がいるのかな?
つんと鼻につく匂いで思わず顔を歪ませる。
何の匂い……?腐ったような……。
グニュっと柔らかい”何か”を踏んだ。
な、に……これ?
足元をみると赤黒い物体が部屋の先から伸びていた。男にバレないよう、音を出さずに背伸びをして丸い小窓から部屋の中を除く。
ひっ!!!
死体だった。
死体を見たことがないボクでも一瞬見ただけで、それだとわかるほど裂傷している。皮膚がただれ、顔らしきものは原型がとどめられていないほど酷く損傷している。腹から下はすでになく、小腸らしきやけに長い臓物が部屋の扉まで伸びている。
「ああ……うぅ……」
ジリジリと後ずさりをしてしまう。背中に反対側にある扉が触れる。
この中も……死体?
怯えていると男はこちらを見てニヤニヤと醜い顔を歪ませていた。ボクの反応を見て楽しんでるんだ……。
恐怖と涙で心も体もぐちゃぐちゃにされている。男は歩き出したのか足音がし出す。
何もできず泣きながら棒立ちしていると、不意に左手の薬指が軽く引っ張られる。少年がボクの薬指を引っ張っていた。引っ張っていると言ってももの凄く弱い力で、少年に覇気はない。
そ、そうだ、行かないと……。
ここにいる人は明日の自分の姿かもしれないのだから。
ボクは少年とともに男についていった。
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