第15回 なぜ村上春樹は世界中で読まれるのか

 村上春樹はなぜ世界中で読まれているのだろう? なぜ世界文学として受容されたのだろう?

 評論家の東浩紀はラジオ番組*1 で以下のように語っていた。


「村上春樹は世界中で同じように読まれる小説。大体どこの国でも売れて、韓国でもある時期になると春樹が売れる。中国でもある時期になると春樹が売れるみたいな感じで、消費社会の進展がある時期まで来ると春樹的物語はウケる。ある種のテンプレートとして世界中で流通している」


「村上春樹の文学ってなるべく無国籍、なるべく匿名的に物語の空間を作っていた。特に初期の頃は。『ノルウェイの森』は初めて固有名として主人公が出てきた小説。そういった匿名的な都市の寓話みたいなものを嗜好する。簡単にいうと、マンガ的。マンガ的なところが彼のグローバル性を支えている。世界中の人が日本人が書いたものだと思わないで読んでいる作家だと思いますね」


 さらに、東は春樹の「匿名性」がマンガ・アニメと親和性が高く、マンガ・アニメも春樹から多大な影響を受けていることを指摘している。


 確かに、「無国籍」「匿名的」「都市の寓話みたいなもの」という言葉は、初期村上春樹をあます所なく表現しているように思われる。これらの諸要素が世界文学への扉を開いたのだ。



*1 SUNTORY SATURDAY WAITING BAR AVANTI PODCAST vol.190

2009/11/14

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