第20話【天罪視点】レガシィの言う通り


「あれ、本当にひとり追加されるんだ。レガシィの言う通り」


今夜のセールルームは昨日とは違った。

昨日はひとりしかいなかったセーフルーム。今日はもうひとり追加されてた。


「ひ、ひぃぃぃ!!」


ひどく脅えている男。

制服を見るに警官のようだ。


「こ、ここは」


「ダンジョン。」


「お前がレガシィか?」


「違うけど」


「な、なんだっていい。俺を助けてくれ。死にたくない」


「やることは分かってる?」


「確か、部屋の中にある箱で自分のステータスを確認できる、だよな」


警官は箱に手を伸ばした。

必死になってるのが笑える。そこまで必死になって生きていたいのだろうか?


「ねぇ、警官さん、そんなに息をするのって楽しい?」


「楽しいとかじゃない。呼吸しなきゃ、死ぬ。お前だってそうだろ」


「別に死んだっていいじゃん。あはっ」


声を聴いた瞬間、警官の顔から血の気の色が引いた。


「警官さんって頭いいんじゃないの?」


私は歩いて警官に近寄った。


「と、当然だ。頭はいい。それ以上近付くな発砲するぞ」


警官は服をまさぐり始めた。


「くすくす。笑える。ここに武器なんて持ち込めないよ?残念だったね?」


箱を指さした。


「武器はそこにしかないし、そこから出た武器しか使えないみたい」


「なにかないのか?!」


「警官さん、名前はなんて言うの?これから長い付き合いになると思うから、名前くらい知っておきたいなぁ」

「毛利だ」

「へぇ、毛利ねぇ。でさぁ、話は戻るんだけど。頭良くても死ぬ事の素晴らしさって分からない?」

「な、何を言ってるんだ?お前は」


「どうして死んだこともないのに死ぬ事が悪いこととか、やばいことだって思うの?」


「……」


「もしかして死ぬことって素晴らしいことかもしれないじゃん?なら人生一回しかないんだからさ、死んでみてもいいじゃん?」

「話しかけるな。お前の言いたいことがひとつも分からん」


「死んでみてもいいじゃん?」


「(無視)」


それからは私が何か言っても何も答えてくれなかった。


「ねぇ、周りの人はなんで私のことを無視するのかなぁ?」


「私と会話するのがそんなに無駄なの?」


「つまんないなぁ。どうして私のことを誰も理解してくれないんだろう?みんな頭悪いよね」


「でも、レガシィは違ったんだよね」


「レガシィだけは私の話を聞いてくれた」


「それどころじゃない。レガシィは死というものの素晴らしさについて知ってる。私は彼と語り合いたい。死ぬことについて」


そこでやっと警官が口を開いた。


「おい、やばい女」


「なに?」


「お前この先について詳しいんだろ?説明しながら先に進め」


「いいけど」


私は扉に手を伸ばし、そして開けた。

その先にはよく分かんないけどラミアってやつがいた。


「こいつがそうなのか?倒さないといけないモンスターってやつか?完全に化け物だな」


「こいつを倒さないと。帰れないよ」


「なら、早く倒せよ」


「えぇ?なんで私が?私はやる事あるから自分でやってよ」


「やることってなんだよ」


「レガシィへの最上級のプレゼントを用意しないといけない」


「最上級のプレゼント?」


「レガシィが欲しいっていった時に何時でも上げれるように素晴らしい死に方を考えてあげないと。ほら、愛しい人が欲しいって言ったものはあげないとね?ダンジョンってその実験のために丁度いいんだよね」


「はっ?」


「【ポイズン】」


私はラミアに向けて魔法を放つ。


ラミアの体が毒に蝕まれだした。


「毒殺ってどうなんだろうね?」


「知らねぇよ」


そのとき、ラミアが力を振り絞り【パラライズ】を警官に放った。


「ぐがっ、」


警官は麻痺して動けないようだ。


「女、早くラミアを倒せ。痺れて動けん」


「私は今毒魔法使ったじゃん。あとはあれが死ぬまで待つだけ」


「どんだけ時間かけるんだよ」


「さぁ?くすくす。でもそのうち死ぬでしょ」


「その前にお前が死ぬかもなんだぞ?」


「それならそれでいいじゃん」


「……は?」


「レガシィに贈り物を送るのは大切だけど、その前に私が死んでみて死ぬ事の素晴らしさを魂になってから教えてもいい。そのためには私が死ぬ必要がある。あー考えただけでゾクゾクする」


ラミアが這う。

警官に向かって。


「お、おい!近付いてきてるぞ?!こいつ!」


私はラミアを見ていた。

ラミアは両手を使って警官の体を掴んだ。


「お、おい!離せ!女!黙って見てないで助けろ!」


この人たち、ほんとに都合がいいよなぁ。

私が話しかけてたときも無視してたのに。困ったら助けてって。でもさぁ。


「もう助けてるじゃん」


「え?」


「この現世じごくから救われるのを手助けしてるじゃん。きっとこの先には辛いことも苦しいこともない天国が待ってるんだよー。ワクワク」


「女ぁぁぁぁ……」


バキバキと音をたてて警官は食われていく。


「ねぇ?痛い?痛いのって気持ちいい?ぜひ聞かせて欲しいな」


「このクソ蛇!この女から先に食えよ!」


「そうだよね。私から先に食えばいいのに、なんでそっちからなんだろうね。私って運が悪いんだよね。死んでみたいって思った時になぜか助かるし。今だってそう」


ラミアは警官の胸部くらいまでを食らっていた。


「そろそろ、最後だろうし。教えてよ。どう?気持ちいい?その死に方」


「あ、あぐぅ……」


ゴクリ。

ラミアは警官の死体を飲み込んだ。


それと同時だった。


「……」


ラミアはグラりと揺れて倒れた。


「あーあ、死んじゃった。毒殺ってどうなんだろうなぁ」


セーフルームに向かう。


「それにしても、今回も私は死ななかったなぁ」


ダンジョンに招待された時、私はすぐに死ぬんだと思ってた。

でも、今日もなんだかんだで生き残ってしまった。


お財布の中から、なんとか教が崇拝してる神様のイラストを取りだした。


ライターで火をつけて燃やす。チリチリと燃えていく。こんな事をしていても私にはなんの天罰もない。神様なんて存在しないんだよね。


「バイバイ、愚かなる神様。あはっ」


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