第7話 結果は大きくは変わらず

「さてと、準備が整ったらはい終わりじゃないし、行こうか」


俺たちがここにくる理由はこの先に進むことにあるはずだ。


「ここで待てばどうなるんですかね?」

「さぁ?何もせずに終わらせてくれるんならわざわざ人をここに呼び出さないと思うけど」

「昨日はこの箱のディスプレイから帰れたんですよね?」

「そうだな」

「試してみませんか?」


まぁ、試してみるだけならいいか。

このダンジョン、そういう試行は自由にしていいっぽいし。


というわけで、カードリーダーにカードを読み取らせてみたんだけど。


「ダメだな」


帰りますか、の表示は出るけど選択肢自体がグレーアウトしていた。


やはり条件を満たさないと帰らせてくれないらしい。


「時間経過で帰れるとかはないんですかね?」


「さぁ?試してみれば?」


「ご冗談を。目の前にお兄ちゃんの仇がいるのにノコノコ帰れますか?」


「それはそうだな」


まぁ、俺の方も俺の方で試してみる気にはならないけど。


「佐々木さんはどうして戦うんですか?」


「分かんないけど。この状況を楽しんでる自分がいる。ぶっちゃけクッッッッソ楽しい」


今まで死んだように生きてきた。

刺激もなく、スリルもない。山なし谷なしの人生。

そんな人生に突然こんな非日常が現れた。


「別に死んだっていいんだよ」


元々俺は自殺しようとしてたくらいだし、生に対する執着は無い。どうしても生きたいなんて思わない。


「だから今のこの状況を楽しみたい。戦った結果ここで死ぬならそれはそれで構わない」


「なら行きましょうよ佐々木さん。この先に我々が倒すべき敵がいるのですから」


頷いて扉に手をかけた。

その先は昨日と同じような部屋が広がってる。


だが中にいたモンスターが昨日とは違う。


「グォォォォォォォォォオォォ!!!!」


「オーガか」


昨日はギリギリ犬か狼に見えたからケダモノとか思ってたけど、こうなってくるとはっきりモンスターだって分かる。


「さぁ、モンスターちゃん?お兄ちゃんの仇を討たせて下さいね?」


氷堂さんが杖を構えて魔法を発動させた。


「アイスバレット」


(いきなり魔法使えるの?!)


無数に飛んでいく氷の礫。

全てがオーガに命中していく。

まるで銃弾の嵐を受けているかのようにオーガの体が削れていく。


「グォォォォォォォォォオォォ!!!」


しかし、オーガは弱点である首を守るようにして防御を固めていた。

そのため、トドメを差しきれない。


「しぶといですね」


「俺が行くよ。君のおかげであいつは防御に徹することしかできないはずだ」


そのため俺が近付いても奴は俺に対してなにもできない。


「はい、お願いします」


オーガに駆け寄る。

やはりオーガは防御をやめる様子は無い。


辞めてしまえばその瞬間に首を氷の礫が抉り致命傷となるからだろう。


俺が近付いたのを確認してから氷堂は魔法を止めてくれた。


タッ!

駆け寄ってオーガの体をよじ登り、そして


「死ね」


オーガの首筋を引き裂いた。


断末魔を上げることすらなくオーガは倒れた。


「やりました!お兄ちゃんの仇討ちました!」


駆け寄ってくる氷堂。


(こいつは仇じゃないと思うけど、まぁ野暮だろうな)


オーガを見ているとやはり死体は光の粒となって天へと登っていく。

そして、コトリと落ちる宝箱。


「これはなんでしょう?」


「いわゆるドロップだよ。俺は昨日受け取ったから君が受け取るといい」


「いいんです。倒したのは佐々木さんですから、佐々木さんが受け取ってください」


「そう?なら遠慮なく受け取るよ?」


この先何があるか分からない以上アイテムは多いに越したことがない。


俺はそのまま氷堂さんを連れてまた上の階へと移動した。

そして、昨日と同じように箱にカードをかざした。

昨日と同じように解放した称号とかがズラっと並んでいた。


そして、最後に表示されたのはやはり昨日と同じもの。


生存者:2/21


(相変わらず悲惨な結果だな。俺たち以外は全滅か)


「この中にお兄ちゃんがいるんですね」


氷堂さんが箱の前で手を合わせる。


「安らかに眠ってください兄さん」


話に困っていると氷堂さんは俺の方を見た。


「佐々木さん、じゃあ帰りましょうか。お話通りならこれから帰れるんですよね?」


「うん」


身内が死んだのに意外にもケロッとしてるんだなって思うけど、


「くよくよしてたって兄さんに怒られますからね」


心の底からそう言ってるようだ。切り替えが速い子だな。


街に戻ると俺は家の中にいた。

氷堂さんからメッセージが届いたけど向こうも家だったらしい。


この自動で家に戻してくれる機能は考えてみれば意外と便利な機能かもしれない。


時刻は夜中の3時。


今すぐにでも永遠の眠りにつきたいところだが、やることがある。


(このまま俺たち以外の生存者が全滅し続けるのは俺が困る)


現に警察でもマトモに相手にしてくれなかったし、氷堂さん以外の味方はいない。

このまま俺だけが騒ぎ続けても頭やべぇやつと思われて終わりだ。

そこで生存者をできるだけ増やしたいと思う。

そして、


「日本中にダンジョンの存在を広める」


見てろよ毛利。


「お前に土下座させてやる。泣いても許さん」


カタカタカタカタカタ。

俺は匿名掲示板にスレッドを立ち上げた。


タイトルは……


【夜が開ければ赤い鬼、オーガが9匹。日本に現れる】


本当はダンジョンがどうのこうのも書きたいけど、ねみぃ。

ということで、スヤァ。


流れは見なくていい。レスがつかずにスレッドは落ちてもいい。

俺がこの日この時間にこのスレッドを立てたということが重要である。

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