第18話 訓練場
「――確かに、不思議に思いますよね?」
突然、落ち着いたが鋭い声が響いた。
私はハッとして声の主を見る。
そこにいたのは――
蓮見 静華だった。
「この広さのお屋敷なのに、警備が少ないと思いませんか?」
蓮見は、いつもの冷静な表情のまま、静かに問いかける。
「……そうですね」
私は素直に頷いた。
屋敷の規模を考えれば、もっと警備員がいてもいいはずだ。
だが、今までの案内で、警備員らしき人影をほとんど見ていない。
「それには理由があります」
蓮見は、静かに言葉を続ける。
「どうしても信用できる人間以外は雇えないのです。」
「……」
「天ヶ崎財閥の名に傷をつけるようなことは許されません。
この屋敷に仕える者は、徹底した信用調査を経て採用されます」
「……ということは、私も?」
「当然です」
蓮見は、私をじっと見つめる。
「あなたに関しても、最初は不自然な点があれば、即刻追い出すつもりでした」
「……」
さらっと怖いことを言われた。
「ですが、働きを見た限り、なかなかのものでしたので」
私は、心の中で叫んだ。
(いや、男ってことは見抜けなかったんですか!?)
そのツッコミを飲み込みつつ、私は深く頷く。
「では、この訓練場は?」
私は中庭のダミーを見ながら尋ねる。
「使用人たちの訓練のためです。」
蓮見メイド長は静かに言う。
「この屋敷で働く者には、緊急時にお嬢様を守れるよう、最低限の訓練が義務付けられています」
「なるほど……」
私は納得しつつも、少し違和感を覚えた。
(でも、メイドが実際に戦う場面なんて……)
その時、蓮見がこちらをじっと見つめ、ふっと微笑んだ。
「あなた、見る感じ何かしら武道経験をお持ちのようですね」
「……!?」
私は思わず動揺する。
(なんでバレた!?)
見た目は完全に女性のはずだ。
だが、蓮見は確信を持ってそう言った。
「いえ、そんな……私は、別に……」
「謙遜なさらなくても結構です」
蓮見静かに言葉をつづける、
「軽く手合わせをしましょうか?」
「えっ」
「……まさか、怖気づきましたか?」
私は思わず口を開きかけ――
(いやいやいや、マジか!?)
心の中で絶叫した。
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