第三話 ショートカットの女の子

 私は黒髪のショートカットだ。


 この髪型は小学生の頃から変わっていない。


「吉田君、ショートカットの女の子が好きって話していたから」


 純玲はそう話すと、意味ありげな笑みを浮かべる。


 その表情が瞳の片隅に映った私は彼女に視線を移す。


「純玲もショートカットじゃん」


 私が純玲につられるように笑みを浮かべると、彼女は外の景色を眺め、こう口を開く。


「私と吉田君は仲の良い異性の友達同士。向こうは私に恋愛感情なんか持っていないと思うよ。遥みたいに優しい雰囲気を持ち合わせていないからね、私」


 そう言葉を続けた純玲はやさしい笑みを浮かべ、私に視線を向ける。


「私って優しいの?」


 私が問うと、純玲は「うん」とこたえるように頷く。


「遥には敵わないな……可愛いし、頭良いし、優しいし……!」


 純玲はそう話し、左手で頬杖をつきながら再び、窓の外を眺める。


 私はそんな彼女の姿を見つめ、こう尋ねる。


「ねえ、もしかして純玲って、吉田君のこと……」


 私の問いから十秒ほどして、純玲はこちらに視線を戻すと再び、意味ありげな笑みを浮かべる。


「なんのことかな……!」


 純玲のやさしい口調の言葉からしばらくして、グラウンドから吉田君の溌剌はつらつとした声が窓を通して、私の耳に届いた。

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