第二話 「好きかもね。遥みたいな子」
私の瞳に映る女子生徒、
彼女に倣うように、私はグラウンドに視線を戻す。
そこに、あの部員の姿はない。
いつ姿を現すのだろう、と私が心の中で言葉を漏らすと、純玲がグラウンドを眺めながら口を開く。
「仙谷の硬式野球部って、ほとんどの部員が県大会ベストエイト以上の舞台を経験した部員なんだって。中には、全国の舞台を経験した部員もいるみたいだよ。そんな部員と
続く話を聞き、純玲が彼と小学校時代から同じ学び舎に通っていたことを知る。
たまたま瞳に映った人物が、友人の友人。
このような偶然もあるものなのだな、といったことを私が心で呟くと、あの部員が姿を現す。
そう、数分前までバッティングケージに囲まれながら右バッターボックス内で構えていた硬式野球部員、吉田君だ。
彼は三塁側ベンチ内から姿を現すと、教室の窓に横顔を見せるように立ち、チームメイトと言葉を交わす。
やや離れた位置のため、吉田君の顔ははっきりと瞳に映らない。
だが、雰囲気のようなものだけは伝わっていた。
「優しそう……」
抽象的なイメージだが、その言葉が一番当てはまっていた。
純玲は私の言葉に微笑みを浮かべると、グラウンド眺めながらこう話す。
「吉田君、好きかもね。遥みたいな子」
やがて、純玲の視線が私の横顔に向く。
私は純玲の視線に気付いていないことを装いながら、自身の頬が赤くならないように心の中で念じた。
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