第十話 武田滅亡

 朝倉浅井連合軍が織田に敗れたニュースはすぐに将軍義昭の耳に届いた。

「ちっ!名門朝倉も地に落ちたか…

 浅井も使えない奴だったな」

 義昭は吐き捨てるように呟いた。

「義昭様、本願寺を使って織田の領地を一向一揆で混乱させます

 その隙に武田か毛利を上洛させれば…」

 側にいる比叡山の僧侶が入れ知恵をする。


 しかし数ヶ月後、日の本中に衝撃のニュースが走った。


『甲斐の虎』と恐れられた武田信玄が急死していた事が分かった。

 武田は影武者を使い信玄が亡くなった事を隠していたのだ。


 武田軍が織田徳川連合と戦った後、上洛を中止し甲斐に撤退したのは、この時に信玄が病死したからだ。

「なんと、あの時に亡くなっていたのか…

 会ったことはないが、武田軍の戦いを見れば、信玄がいかに優れた人物かは分かる…

 …出来るなら信玄と一緒に戦のない日の本を作りたかったな」

 信長は信玄の死を惜しんだ。

「信長様…、どんなに優れた武将でも死んだ者は敗者です

 あなた様はこの戦乱の世を生き抜いて、真の勝者となって下さいませ…」

 帰蝶は信長に寄り添った。



 信玄の死で東側の軍事バランスが崩れた。

 武田家は嫡男、勝頼かつよりが後を継いだが、信玄程の力はなかった。

 代わりに上杉家が上洛の準備を始めたと噂されたが、元々政治に興味がない謙信は乗り気ではなかった。

 北条家は武田と和睦した後、関東制圧に忙しく上洛する気はなさそうだ。


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