静まり返った広間に…。

「殿!今川が来たら罠を仕掛けましょう!」

 声を上げたのは若手の有力者、前田利家だ。

「利家か?

 どんな罠を仕掛けるつもりだ?」

「はっ、今川が進軍してくれば桶狭間に陣を置くでしょう

 藤吉郎を使わせていただければ、必ずや今川の戦力を減らしてみせます!」

 利家は藤吉郎を指名した。

「猿を?…まあ、良いだろう

 そっちは利家と猿に任せるぞ

 他の者は出来るだけ武器と兵士を集めておけ!」

 会議は上洛してくる今川と対決する事でまとまった。 


 利家と藤吉郎は歳も近く仲が良かった。

「藤吉郎、あんな大見得を切っちゃったけど、本当に大丈夫なんだよな?」

 罠を仕掛ける案は藤吉郎の考えだった。

 利家は武士扱いだが藤吉郎はまだ付き人だ。

 そこで利家に発言させて作戦を行うように仕向けた。

「大丈夫さ、今川は戦力的には圧倒的に有利だから絶対油断してる

 そこに飯や酒を差し入れすれば…」

 藤吉郎はニヤリと笑った。



 会議から数ヶ月、遂に駿河の今川義元が京へ上洛を目指し進軍を始めた。



 今川義元は大軍を率いて桶狭間まで迫っていた。

「殿、この先には尾張の織田家があります

 何か仕掛けてくるやも知れません」

 家臣の一人が進言する。

「尾張の織田だぁ?あの戦馬鹿の信秀は死んだんだろ?」

「はっ、流行り病で亡くなったと…

 嫡男信長が跡を継いだそうです」

「だったら安心しろ

 あんな弱小大名の、しかも『うつけ』と呼ばれる小僧に何が出来る!?

 どうせ城に籠って出て来やしない……

 出て来たところで、俺は『東海一の弓取り』今川義元だぞ!返り討ちにしてくれるわ!

 わはははっ!」

 今川義元は豪快に笑い飛ばした。



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