第12話

でもお友達の話を聞くと、みんな逆だよって言う。


普通は違う人間が同じ家で暮らせば、少しずつずれていくものだよ、って。歪みは埋まらないよ。広がっていくものなんだよ、って。



好きの気持ちだけじゃ自分自身は変えられない。


誰かを好きになる事は、悲しいくらい自己中心的になる事だ。



私にも陸くんにも、それぞれ積み上げてきた生活があって、それを軸にして私たちが存在している。


陸くんは、それを事も無げに捻じ曲げてくれた。


或る意味で自分を失うことを厭わない陸くんは、本当に凄い。



ねえ、陸くん。だから私は陸くんが大好きなんだよ。


でもやっぱり少し不安にもなるよ。


私は、いつまだ経っても自己中心的だから、どうしても約束してほしくなるんだ。



おじいちゃんとおばあちゃんになるまで一緒に居たいなあ。居れると良いなあ。


居てくれるかなあ。こんな私と。












「――――……ひなた」



とびきり優しい声が、私を呼んだ。



「ひなた。おい、ひなた」



軽く肩を揺さぶられて、眠りの中に沈んでいた意識がゆっくりと浮上する。

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