『コールドスリープ装置で眠ってる間に人類滅びてた少女が、ポストアポカリプス世界の街を探検するやつ――のプロローグ』
龍宝
「かくして、眠れる棺の少女は天使と出会った」
ラド・シュトリの降臨。
古代の神話から名を
〝神による終末の訪れ〟だとか、〝傲慢な人類に対する地球の答え〟だとか、はたまた〝宇宙からの侵略行為〟だなんて説もあったけど、何が起きたのかは分からない。
確かなのは、かつて半島に落ちた隕石によって恐竜が滅びたように、今度は人類が滅びてしまったらしいということだけ。
肝心なところがあいまいで申し訳ないけど、わたしもつい先日に目覚めたばかりで混乱している最中なのだ。
名前から察せられる程度には親馬鹿だった、資産家の両親のひとり娘。
われながら恵まれた環境に生まれたものだが、その代わりに神様が与えたのは、当時の医学では治療の不可能な難病を抱えた
そして、忘れもしないあの日。
このままでは成人まで
病気自体は途中で治療に成功したようだけど、何故か目を覚まさないわたしを再凍結させたらしく、こうして
記憶を頼りに廃墟と化した街を歩く。
どれだけ時が経ったのか、移り変わりは激しかった。
昔と同じ位置にショッピングモールを見つけ、思わず入ってみる。
室内だからか、比較的原型を保っていた。
吹き抜けのあるエリアで足を止め、半円状のステージによじ登る。
送り迎え完備のお嬢様生活+重病人だったわたしにとって、普通の学生みたいに放課後みんなでショッピングモールに寄り道するというのは
不完全とはいえ、夢を叶えたわけである。
妙な気分になって、わたしは思わず無人のステージで歌を口ずさんでいた。
凍結前にテレビで特集されていた流行りの曲。
歌い終えたわたしに送られる拍手は、もちろんなかった。
――パリン。
不意に聞こえてきた音にびっくりして見上げれば、吹き抜けの天井部分の割れた隙間から、何かが下りてくるところだった。
音もなく、客席に着地したその正体は。
真っ白い翼を背にした――――とびきり可愛い女の子だった。
『コールドスリープ装置で眠ってる間に人類滅びてた少女が、ポストアポカリプス世界の街を探検するやつ――のプロローグ』 龍宝 @longbao
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