ちがう誰かの愛だとしても

KOMUGI

第1話 出会いの始まり

春は出会いと別れの季節、今年の私は出会いの多い季節になった。


「今回の人事異動でハワイ勤務だった営業部の人が戻って来るらしいよ」

「えー!その人って独身のイケメンだったりしますかね?」


22歳で大学を卒業してから就職した旅行会社に勤め始めて約5年、この4月で6年目に突入しようとしている年の事だった。

本社で経理課に所属している私達は3月の人事異動の話で盛り上がっていた。

支店と比べると人事異動の少ない本社勤務、応援で支店に行かない限りあまり出会いの場が少ないので女性陣はテンションが上がっていた。


本社の営業部は各支店の取りまとめで、営業企画部という扱いで各支店の企画やイベントを精査したり、それに伴う営業をしていたりする。

私も最初は企画部の方に所属していたのだけど、あまり向いてなくて経理課に異動させてもらったのだ。

企画も営業もバイタリティーが無いと折れてしまうと思う。私以外の女性社員は男性社員にも負けない勢いで働いていたけど、私はオドオドしてしまい足を引っ張ってしまっていたんだ。


「明日着任らしいよ?コッソリ見に行ってみる?」

「いやー、難しくないですか?営業の女子に睨まれますよ絶対」


私を挟んで会話をする2人は先輩と後輩。私より2つ上の先輩は最近、年齢的に焦っているらしく常に恋愛のアンテナを張っている。


「仕方ないよね、営業の女子社員は縄張り意識高いしね…自分達は美しい!とか思ってるし?」


確かに営業部の女性陣はキレイな人が多い。スラッとスタイルもモデルみたいで顔面偏差値も高い。本当は美容とかをかなり努力しているらしいけど。


「営業って美男美女多いですよね~」

「…謎よね、経理課は地味な集まりだし」

実奈みな先輩は地味なんかじゃないですよ?」

佳澄かすみだってフワフワで可愛いよ」


実奈先輩は営業部の女子に負けないくらい女子力があるし、1つ下の佳澄も小さくてソレを武器にした女子力がある。実は2人共ガツガツな肉食系女子なのを私は最近知った。


「桜も…その眼鏡とか1つに髪をまとめるの…止めてみたら?」

「そうですよ、桜さんは化粧も薄めだし」

「わ、私は…この方が落ち着くから」


突然自分に話が振られ慌ててしまう。

私は出来るだけ目立ちたくはないので地味になるように装っている。


実は23歳から27歳になるまでこのスタイルを貫いているのは理由がある。

22歳で入社した時は…企画部にいた時はメイクもスーツもキッチリしていた。容姿で印象をマイナスにしたくなかったから。

ただ…私は男運が正直無いらしい。その頃、同じ部署の男性社員に交際を申し込まれ付き合ったのだけど、実は体目的の浮気相手としての交際だと判明して別れたという黒歴史。

学生時代にも似たような経験があり、その原因が童顔なのにスタイルが良いからという意味がわからない理由。

だから正直、自分の容姿にコンプレックスがあり好きじゃない。


「桜スタイルいいのに勿体ない」

「桜さんの体型バランス良いですよね~羨ましい!私なんて胸が無いのに…」


2人は褒めてくれるけど苦笑いしか出来ない。私はチラリと時計を確認する。


「あ!18時になったので私先に上がりますね!」


退社時刻になったのを確認すると急いで帰宅の準備を進める。


「なぁに?デート?」

「違いますよ!幼馴染みの家でご馳走になる事になっていて。最近婚約したから旦那さんになる方を紹介してくれるらしくて」

「結婚?いいなぁ」

「入籍と結婚式はまだなんですけどね」


幼馴染みの亜依あいが住む新居は比較的、ウチの会社から近い隣の駅。私も会社から近い場所に一人暮らしをしているので一度着替えてから手土産を持って行くつもりだ。

次の日も仕事だからあまり長居は出来ないのだけど、タイミングが合わなくて今日になった。


「じゃあ、お先に失礼します!」

「お疲れ様でーす」


私は颯爽と帰路についた。あまり到着が遅くならないように。

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