12月27日 池袋
「部長。どうして阿蔵を確保しないんですか」
天粕からの率直な質問。
「
私は、天粕が当然に理解しているマニュアルの内容をそのまま伝える。
「中でも、対象の周辺で
天粕は無言である。私は、その眼の奥に灯った火の意味を理解した上で受け流す。
天粕をはじめ、他の職員たちも頭で理解することはできても、なかなか納得できない根本的な理由は、つまるところ
人間側と吸血鬼側で利害が一致しているからこそ、
しかし、
人間を一方的に隷従者扱いするようなことを表立ってやる者はさすがにいなくなったが、吸血鬼一人の為に数百人の人間が犠牲になっても、大勢には影響がないと本気で思っている者もいるのが事実である。
吸血鬼の「渇き」による狂騒、
だが、ある
「誰にも過ちはある。若い者であれば
私に隠れ、侑子や天粕たちが国内にいる
人間と吸血鬼では、人の命の重さの捉え方が決定的に違う。人間と
天粕の携帯電話が鳴った。重くなった空気に穴が開く。
「
侑子が頷く。
「僕だ。…………はい。……。…………はい。…………そうか。わかった。一度電話を切る。すぐ折り返せると思う。ちょっと待っていてほしい」
表情を無くした天粕が言う。
「元ホシゾラソリューションズのメンバーだった3名、そして、高岡の死亡が確認されました」
御手洗からの報告によると、3名は自室で死体となって発見された。高岡の死体は、この内のひとり、阿蔵の元交際相手と同じ部屋で見つかっている。
死因は全員が失血死。全ての死体の首筋に二つ並ぶ傷痕。そして、失血死にも関わらず、死体周辺に血の跡がほとんど見受けられないといった状況などから、吸血事件と判断された。
現場は
「部長。これは」
私は天粕に答える。
「そうだ。阿蔵の
天粕は香椎と頷きあい、侑子が景気づけに拍手をした時、今度は榊の携帯電話が鳴った。
「
私は応対を促す。要も
「榊です。どうされました。…………はい。…………………………はい。わかりました。その場で待機をお願いします」
電話を切ると、榊は表情を変えず、淡々と私に報告する
「部長。ホストクラブから阿蔵が消えたそうです」
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