07:最初の一歩/初心忘れるべからず

「こんきらー☆ キララだよー! 皆、今日も見に来てくれてありがとーっ」



 ランクマ勢御用達迷宮の一つ『ミカルダ生命街』にて、可愛らしい少女の声が響く。

 白をベースとして、明るいオレンジの差し色が入ったアイドル風の衣装に身を包んだ美少女だ。金色のふわふわロングヘアを濃いオレンジのリボンでポニーテールにしている。

 蒼色の瞳をきらめかせながらウインクした少女の笑みに、コメント欄は今日も大賑わいだった。……男くさいランクマ配信のコメント欄とは思えない雰囲気である。



「さて、今日はー……『ミカルダ生命街』に来てます☆ 企業迷宮だね。凸したい人は来てもいいけど、いつも通りランダムマッチだから注意! あと他の人の迷惑にならないようにね!」



 『ミカルダ生命街』は、その名の通り市街地タイプの異界迷宮ダンジョンである。

 ミカルダ生命という生命保険会社所属の探索者によって平定された迷宮で、平常異界濃度フロアレベルは条件付きでゼロ。空は切れ間のない曇天に覆われており、地上では四車線の広めの車道を挟むようにして、歩道と商業ビルがまるで並木道の木のように立ち並んでいる。商業ビルの内装は様々で、多くのビルでは現実相応にテナントや物品が揃っているのが特徴だ。

 当たり前のように人工物の塊だったが、これもまた単なる現象である。よく見ると看板の文字列は日本語のはずなのに存在しない配列になっていたり、入口のないビルが建っていたり、地下への階段が一〇段ほどで途切れていたり……まるで徹夜明けで半分寝ながら都市設計をしたような不気味なズレが随所に散らばっていた。

 この迷宮における『奥』は、車道の行き止まりに建っている電波塔──通称『ミカルダタワー』だ。そこまで行けば迷獣モンスターも出る(平常異界深度フロアレベル:3相当)のだが、それ以外のエリアに関しては完全に平定されている。そういった事情と、一度に色んな場所で屋内戦を繰り広げられるということで、ランクマ勢に人気のスポットとなっていた。

 探索技能スキルの応用って言っても結局は一つの能力だからな。ビルドを調整することで使用感を変えることはできるが、それでもマンネリは否めない。その点、屋内戦だと屋内の物品利用が重要になってくるから、相手の能力攻略と併せて毎回かなり新鮮な心持で対戦に臨めるのである。


 そして、絶世の美少女系配信者ことキララは、その中の一つ──カラオケ店のロビーにいた。

 まぁ、俺のことなんだが。



 ナツカと共に迷宮に潜り、あやつのデビューまで協力すると約束したのが昨日のこと。

 しかしながら、俺も俺自身キララの活動を疎かにするつもりはない。ただでさえ配信頻度が低いのに、これ以上配信しなかったらリスナーが離れちゃうからな。

 そういうわけで、今日はキララとして通常通りの配信の日。

 俺はコメントを確認する為の画面ドローンと撮影ドローンを伴わせながら、



「んー、マッチするまで少し時間あるし、雑談しよっか。えーっとねぇ、昨日は友達とお忍びで潜ってて~。あのね、めっちゃ楽しかった!」


『もしかしたら見かけたかも』


「いや~ナイナイ。キララめっちゃお忍びだったもん!」



 可愛らしい女子そのものの立ち居振る舞いをしながら、コメントを捌いていく。

 この八年弱で、すっかり女子のふりをするのも慣れたものだ。むしろ、今は演技という意識すらないかもしれない。

 ……我ながら遠くまで来てしまったものだ。伸びるからいいが。



『誰と行ったの?』


「えー? こないだ知り合った女の子。なんでか意気投合しちゃってね、ノリで一緒にー……」


『陰キャのキララがそんな陽キャみたいなことを……』


「えーっひっどーい! キララが友達と遊ぶのそんなおかしい? ていうかこんな可愛い子捕まえてどこが陰キャなのー?」



 『そのクソマンチド陰キャ戦法を改めてから言ってね』というコメントが流れて来たので、俺は『キララちゃん難しい言葉分かんなーい☆』と明後日の方向に視線を逸らして矛を収める。プロレスは、お互いにブーメランを投げているうちに収めておくのが一番芸術点が高いのだ。



 ──歴戦迷宮ランクマッチ異界迷宮ダンジョンに元からある現象ではなく、有志によって運営されているマッチングシステムである。

 参加者が対戦希望を出すと、その迷宮にいる登録者がランダムにマッチする。マッチまでの時間は平均およそ一〇分程度で、迷宮の混み具合によって多少前後する仕様だ。

 マッチした後は対戦相手と指定の場所で戦闘を行い、勝敗の結果でランクマのポイントが変動する。そうして三か月で一セットの『シーズン』があり、その中で一位を競うのである。


 なので、多くのランクマ勢ダイバーはマッチするまでは雑談配信、マッチしたらランクマ配信という配信形態をとることが多い。


 ……現在の同時接続数は二〇〇〇人。始めたてにしてはけっこう見られてるな。マッチして戦闘が始まると一気に伸びるから、この数字でも良い調子な方だろう。



『探索したの?』


「そだよ~。ガチ探索。久々だったから勝手とか全然忘れてた~! てかさぁ、これ言っていいのかな? 探索中に友達の探索技能スキル見せてもらったらめっっっちゃでっかい音して! もう一気にぶわ~~っ!! って周りに迷獣モンスター集まってきちゃってさぁ! マジでやられるかと思った! まぁキララが探索技能スキル使ってってお願いしちゃったんだけど」



 ところどころをぼかしたり脚色したりしながら、トークを繰り広げる。

 同時接続数も徐々に上昇しつつ、コメントの反応も良好だ。



「で、キララ対人戦ランクマ専門じゃん? 迷獣モンスターの相手の仕方なんて分かんないよ~~! ってなっちゃって」


『苦戦した?』


「いやいや。まぁ聞いてよ。その後頑張って逃げたんだけど五匹くらい追いかけてきてね。仕方ないから、こう……」



 そう言いながら、俺はカラオケ店内の壁に向かって跳躍し、壁に触れて街灯を生やしそこに足を乗せる。そしてそのままひょいと飛び降り、元の場所に戻った。



「こんな感じで迷獣モンスターの懐に潜り込んで、全部串刺しにしてやりました! ちなみにトドメは友達が刺してくれたよ」



 分かりやすく胸を張ってみせると、コメント欄も分かりやすく反応を返してくれる。



『さすキラ』


『かわいい』


『ジェスチャーのノリでパルクールしないで』



 ……フフフ。そうだろう、キララは可愛かろう。あとパルクールは今更だろ慣れろ。

 俺はコメントを眺めながら、次の話題のとっかかりになりそうなコメント達を拾っていく。



『探索配信面白そう』


『探索配信してほしい』


「あはは! 要望多かったら考えるかも? でも今は考えてないかなー。今シーズンも一位取りたいしねー。……わ、あのにまさんグレチャありがと~」


『\1,000 探索配信待ってます』


「グレチャで圧かけてくるのやめな~?」



 コメントを読みつつ、横目で画面ドローンに別ウインドウで表示させたSNS──ワイルウィンド、通称『旋風つむじ』のダイレクトメールを確認する。

 俺は企業に所属していない完全個人運営のダイバーなので、お仕事の依頼などはワイルウィンドのダイレクトメール機能とフリーメールで管理しているのだ。

 ダイレクトメールは基本的に開放しているので、厄介アンチからの嫌がらせや迷惑メールもわりと多く来るのだが、このへんはAIに選別されて自動的に排除されている。でもときたまそれを貫通してくるものもあり……。


 ……うわ、また来てるよ。『自称迷宮省からのスカウト』。フリーメールの方で来たからブロックしてやったのに、懲りないな~こいつ……。

 企業ならともかく政府直轄の迷宮省から個人に対してスカウトなんか来るわけないだろ。まして嘱託探索者として攻略最前線に参戦してみませんか? なんて胡散臭いにも程があるっての……。こんなのに引っかかるのなんてナツカレベルの情弱くらいのもんだろ。



『慣れない探索で分からせられるキララちゃんが見たい(願望)』


「わお、まだ生き残ってたのかキララ分からせ勢……。でも残念、さっきも言った通りキララは探索でも大活躍だからな~。探索配信でも無様は晒さないよ! キララちゃん、最強だから☆」



 『分からせ勢』に触れたことで、コメント欄の流れも変わっていく。



『分からせ勢を分からせるキララちゃんGOD』


『分からせ勢逆分からせチャレンジ配信また待ってます』


『それでも、人類は夢を諦めない』


『わか虐は闇の性癖』


『魔王キララ』


『歌配信待望勢もいるぞ此処にさ』



 ……探索配信もそうだけど、皆、結構キララにやってほしい配信色々あるっぽいんだよなぁ。歌配信はごくたま~にやるのだが。


 そんな風にコメントの相手をしつつ雑談をすること、およそ一〇分。

 コメントを表示させていた画面ドローンが、アラームを鳴り響かせる。あ、マッチング成立したか。



「マッチングしたっぽ~い。じゃ、皆行ってくるね~」


ってら~』


『やてら』


『ytr』




 ………………………………………………。




 結局、その日は八戦八勝だった。

 ランクマは一戦平均一〇分。最大でも三〇分程度──なのだが、今日の戦闘時間は配信時間二時間半のうちのべ一時間程度で、むしろ雑談の時間の方が長いくらいだった。今日の対戦相手は骨がなかったな。



「じゃ、今日の配信はここまで~。皆今日も来てくれてありがとね。せーの、おつきら~☆」



 配信開始時にいたカラオケ店内のロビーで締めの挨拶をして、俺は配信の枠を閉じた。

 撮影用ドローンと折り畳んで小さくなった画面用ドローンの電源を切って、衣装のポケットの中にしまい込む。小型なので衣装の中にしまっても衣装のラインを乱さないのが、ドローン機材のいいところだよな。

 いやー、にしても、やっぱりランクマも面白い。探索も良かったがやっぱり対人には対人の良さがある。こうやって配信をすることの充実感よ……。……決して美少女としてちやほやされることへの気持ちよさではないが……。


 いつまでもロビーにいるのもなんなので、店内の個室に入って数分ほど満ち足りた気分に浸っていると……不意に、個室のドアが開かれた。

 ドアを開けた少女は、ポカンとしている俺の方を見るなり、無表情のままこう言ってきた。



「おつきらですよ」


「やめてね☆」



 さっきまでの配信中からは想像もつかないほどドスの利いた声が、自分の口から飛び出した。




   ◆ ◆ ◆




「ん、ん、ん。……正直こうやって会うのもちょっと嫌だったんだから、感謝してよね。『ミカルダ生命街』には似たようなカラオケが幾つもあるからリスナーが突撃してくる可能性は現実的じゃないけど、それでもゼロじゃないんだし」



 そんなわけでナツカと合流した俺は、そう言って釘を刺す。

 合流したナツカは要領を得ない感じで眉を顰め、



「一旦戻って姿を変えればよかったんじゃないですか?」


「それだと往復で一時間くらいかかっちゃうじゃない」



 確かに、俺は複数の姿を使い分けることができる。異界迷宮ダンジョン基本法則の一つ──『異界迷宮ダンジョンの中に入った生物は、異界の物質によって肉体を置換される。風貌は当人の意志で設定することができる。』。一般的には『第三項』と呼ばれている。

 ただし、姿の変換というのはいつでもどこでも使える訳ではないのだ。

 現実から異界迷宮ダンジョンに移動する為に『門』を潜る瞬間。そのタイミングでしか、姿の変換は行えない。本当はいつでもできるのかもしれないが、異界物質に変換されるタイミングだからこそやれるという感覚があるので、少なくとも今の俺には無理だ。

 んで、『門』の性質上、一度異界迷宮ダンジョンの外に出てしまうと次に入る時にどこに戻ってくるか分からない。大空洞線があるのでそんなに時間はかからないが、学校が終わってから配信をしたので現在時刻は夜八時。ここから外を往復して姿を変えたら合流する頃には夜九時だ。

 ナツカの家は門限が夜一一時らしいので、そうするとあまりにも時間が足りない。仕方がないので、俺は配信後キララの姿のままナツカと合流しているのだ。



「じゃあ別にリアルの喫茶店とかで集まればいいと思いますけど……」


「それは! もっと! 駄目でしょ! おバカ!」



 お前なあ! 俺みたいな陰キャが女子と校外で一緒にいるのを見られるのが何を意味するか分かってるのか!? 絶対に翌日囃し立てられるに決まってる! お前だって友達から色々詮索されて面倒くさいことになるんだぞ!

 異界迷宮ダンジョン外の街中とかで会うのは論外! 俺の平穏なる陰キャ学校生活の為にもな!



「まぁ、いいですけど。ところでなんでその口調なんですか?」


「………………何かの拍子に誰かに聞かれてたら一巻の終わりでしょ~うがあ~……?」



 男口調で話しているキララが、誰かに目撃されてみろ!

 瞬く間にキララ荼毘説が浮上、ガチ恋が暴れ、炎上しキララの配信者生命は終わる──。そんな未来は断固回避せねばならない。


 最悪、ナツカとキララが一緒に行動しているところを見られてもぶっちゃけそこまで問題ではない。

 俺の個人的な信条では、駆け出しのダイバーはまず自分のコンテンツを確立してから、その後でコラボなりをした方が長い目で見た時に健全だと思うが、世の中には『人気ダイバーと実は意外な繋がりがあった駆け出しダイバー』みたいな感じで人気が出るダイバーもいないことはない。そういう人たちを否定するつもりもないし。

 だから(もちろん一緒にいるところを見られないように心がけはするが)そこまで厳密な目撃対策はしない。ただし、口調に関しては別だ。此処が疎かになっているところがもし一言でも聞かれれば、即死。そのくらいの覚悟で臨まなくてはなるまい。


 …………それに、美少女のキララが男口調なんて中途半端は、かなり嫌だしな。仮に身バレ云々が問題なかったとしても、俺の美意識が許さない。



「だからナツカちゃんも、危険なことは口走らないようにしてよね。マジで。本当に。頼んだよ」


「わ、分かりました」



 ナツカは俺の調子に気圧されながら頷いた。



「で、最初の議題。まず、ナツカちゃんの再デビューをどうするかだけど……」


「どうするって、まず迷宮で色んな人と交流するんですよね? 旋風つむじのアカウント作って。初対面の人と仲良くなるのは得意なので任せてもいいですよ」


「そうじゃないって。そもそもチャンネルをどうするかってこと」



 俺はそう言って、画面ドローンを操作してナツカの今のチャンネルを見せる。

 けっこうな数のアーカイブがあるが、そのどれもろくなサムネも設定せず、タイトルもホームビデオみたいな感じのあまりに雑な……『原生林』状態だ。



「流石に此処に新しくデビュー配信を追加するのは見栄えがよくないでしょ。かといって、せっかくのアーカイブを消すのもね」


「ああ、それなら別に消してもいいですけど」


「駄目!!」



 おま……お前は今までの自分の軌跡に思い入れとかそういうのないのか!? いや、なさそうな性格はしているが……。



「なんでキララちゃんが駄目って言うんです?」


「なんでって……だってほら、確かにナツカちゃんのアーカイブはブレブレホームビデオのカスみたいなクオリティだけどさ……」


「その顏と口調でボロクソに言われるの結構心にキますよ」


「でも、そこには試行錯誤や思い出が詰まってるでしょ? だったら消すのは違うと思うの」


「その顔と口調で優しく言われるのはなかなか嬉しいですよ」



 ナツカはこほんと咳払いを一つして、



「じゃあ、アカウントを作ればいいんですかね? なんかそれも、元のアカウントのことを捨てるみたいでいやですけど……」


「新しいチャンネルを作ればいいんだよ。Teller-Visionだと一つのアカウントで複数のチャンネルを作成できるから、そこに再デビュー用のチャンネルを作ればいいの」


「なるほど……」



 で、こっからが本題だ。



「そのチャンネル名をどうするかとか、そういうのを決めないといけないかなって。まぁこれはそこまで悩むことじゃないと思うけど」


「そうですねー……。やっぱり名前は今まで通り『ナツカch』がいいですね。キララちゃんもキララちゃんねるですもんね?」


「そうだねー」



 俺は頷いて、



「他のアイコンとか概要欄とかのチャンネル情報諸々は、別に今決めなくてもいい。ただ、重要なのは──チャンネルのコンセプトだね」



 そう言って、俺は真面目な表情でテーブルに両肘を突く。

 顔の前で手を組み、食い入るようにこちらを見ているナツカを見返して、



「チャンネルのコンセプトは大切だよ。もちろん、リスナーの反応を見て路線変更しても全然いいけど、それにしたって元となるコンセプトが明確じゃなければ変更の仕方もボヤけちゃうし」


「キララちゃんの場合は、ランクマ配信ですよね?」


「うん。でも、それしかやってない訳じゃないよ。『蜘蛛の巣ターミナル』近くのこういう個室を借りて雑談配信をすることもあるし、歌配信をすることもある。企業所属のダイバーは探索配信メインでもステージを借りてライブしたりするしね」



 ちなみに、俺もイベント運営会社からライブをしてみませんかとお誘いを受けたことはある。単純に度胸がなかったのと、ライブをするほど歌に自信がなかったのと、ランクマ勢の視聴者層がライブに来てくれるか不安だったので丁重にお断りさせていただいたが。

 それでも担当の人には『気が変わったらいつでも声をかけてください』と言ってもらえたのは、俺の密かな自慢である。



「キララも、リスナーからは探索配信してくれってよく言われるしね。どんなダイバーでも、あらゆる配信に一定の需要はある。かといってどれにも手を出していたら、よほど器用な人じゃない限りどれも中途半端になっちゃうと思うんだよね。キララは」



 あくまでこれは俺の個人的な意見だから、違うやり方で上手くやってる人もいるけどな。

 でも、俺はランクマという一つのジャンルに強烈な興味があって、それを伸ばして今に至っているから、俺の方法論でいえば、やっぱり活動の軸を決めるのは大切なことだと思う訳だ。



「ナツカちゃんは探索配信メインって言ってたけど、他に何か希望はある? 探索一本の硬派なスタイルがいいとか、企画も絡めてカジュアルな感じの探索がしたいとか、新経路発見をメインにしたいとか、歌やダンスもほどほどにやりたいとか……」


「んー……そうですね。まずナツカさんが目指すのは、誰もが憧れるスーパーダイバーです」



 相変わらず大きく出たな。



「とすると、ナツカさんがやるべき活動は、誰もが憧れるスーパーダイバーに相応しいジャンルは全部ということになると思うんですよね。真面目な探索配信もして、カジュアルな探索配信もして、歌やダンスもやって……手広くやりすぎですかね?」


「いや、そのくらいなら全然ある範囲だと思うよ」



 あくまでも探索をメインに活動しつつ、アイドル的な活動もしていきたいってことだもんな。全然問題ないと思う。まぁ、ナツカに真面目な探索配信ができるかと言われたら結構疑問だが……。



「じゃあ、一旦その路線で行こっか。さっきも言ったけど、路線変更なんか誰にでもよくある話だから、一度やってみて何か違うなって思ったら見直しても全然いいんだよ。むしろそれで成功した人いっぱい知ってるし」


「まぁ任せてくださいよ」



 その自信はどこから湧いてくるんだ……。……まぁいいか。



「あとは、旋風つむじだね。明日は配信の予定ないから放課後ずっと付き合えるし、今日の内にアカウント開設までやっちゃう?」


「フッ……あまりナツカさんをナメない方がいいですよ。実は待っている間に既に、アカウントの開設は完了しているのです」



 そう言って、ナツカはおもむろに携帯端末を取り出し、画面を俺に見せて来る。

 確かに解説されたアカウントのホーム、その中には丸い写真が載っていた。いつの間に撮影したのか、昨日の『ハロルド森林』をバックにした自撮り画像だ。ナツカの顏がアップで映し出されている。

 しかし、その背景。

 そこに俺は、一つの異常を見た。


 即ち──



「キララの後頭部がバッチリ映っちゃってるんだけどこの野郎☆」


「キララちゃん本人ではないのでセー……ひえっその顏でその表情は恐ろしすぎますよ!!」



 この後めちゃくちゃ違う写真に変えさせたのだが、その際コイツが意外と探索中に自撮りしまくっていたことが発覚したのは別の話。

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