第25話 梅田ダンジョンの最奥でレアなスキルを得た

 梅田ダンジョン18階層――。


 ここは中級者でもパーティーを組んで挑むレベルの深層域。ソロで踏み入るのは、無謀か狂気か……あるいは、俺みたいなバカだけ。


「ここ、空気が違うな……」


 空気が重たい。ひんやりとして、鉄のような匂いが漂っていた。


 ユキが俺の隣にぴたりと寄り添ってくる。


「……気配が違う。さっきまでの階層とは、格が違う」


「だよな」


 進むごとに、岩の壁に妙な痕跡が増えていた。剣で斬られたような裂け目、焦げたような黒い跡……そして、獣臭。


 そんなときだった。


 グオオオォォォ――!


 地鳴りのような咆哮が、階層全体に響きわたった。


「来るぞ、ユキ!」


 前方の霧の奥から、巨体がぬうっと姿を現す。


 ――それは、白銀の毛皮を纏った獣だった。


 見た目はオオカミ系だが、異常なほどの筋肉量と、氷のように冷たい瞳。しかもその体から立ち上る魔力の密度が、明らかに常識外れだった。


【出現モンスター】

レアモンスター:白狼王(はくろうおう)

ランク:A

特殊能力:氷牙、空間加速、連撃


「Aランク……だと?」


 ユキが前に出る。


「私が行く。あれは……“狼の王”」


「……分かった。でも、無茶するなよ」


 ユキが頷き、疾風のように駆け出した。


 ――白狼王の動きは速い。だが、ユキはそれを上回る。


「はぁッ!」


 疾風爪が一閃。だが、白狼王はわずかに身を引いて回避。


 その瞬間、口から放たれた氷のブレスがユキを襲う。


「くっ……!」


 俺は即座に【剛壁】を発動。氷の弾幕が迫る中、前に出て防ぐ。


 ダンッ!


 氷が砕け、足元が凍結していく。


「……速攻で決めるしかないな」


「なら、私も“あれ”を使う」


 ユキの瞳が、一瞬だけ青白く輝いた。


「――重圧爪、発動」


 空気が歪む。白狼王の動きが鈍くなり、そこにユキの連撃が叩き込まれる。


「せいっ、せいっ、せいっ!!」


 裂けるような斬撃の嵐が白狼王を切り刻み、ついには巨体が崩れ落ちた。


 ドサァッ……!


 静寂が戻った。


「……やったな、ユキ」


「うん……ふぅ。強かったけど、倒せた」


 そして、その場に何かが落ちているのに気づく。


「これは……スキルカード?」


 地面に、青と銀の模様が混じった特殊なカードが落ちていた。


 拾い上げ、確認する。


【新スキルを入手しました】


《氷華牙(ひょうかが)》

発動時、一時的に牙を氷属性に変化させ、凍結効果を付与。対象の行動を著しく低下させる。

※狼系スキルとシンクロ率が高い。


「氷華牙……ユキ向きのスキルだな」


 彼女の目が、すっと細くなる。


「くれるの?」


「当然だろ。これはお前の手柄だ」


 ユキは一瞬きょとんとした後、そっと俺の袖を掴んだ。


「……ありがとう、天都」


 その声が、少しだけ震えていた。


(――いい流れだ。次は……“融合”か?)


 脳裏に浮かぶ、“融合スキル”の可能性。


 【疾風爪】×【氷華牙】――。

 攻撃速度と凍結の融合。もしそれが叶えば、戦術の幅は格段に広がる。


 だが、それは次の話だ。


「よし。じゃあ、帰るか」


「……うん」


 俺たちは、静かに18階層を後にした。

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