「人間は悲しい生き物だよ。生理反応によってしたいと思ってない時でもそういう画像とか動画を見ると興奮してしまう」
「人間は悲しい生き物だよ。生理反応によってしたいと思ってない時でもそういう画像とか動画を見ると興奮してしまう」
「どうしたの急に?」
「これを見てくれ」
そう言ってソファに寝っ転がって、毛布を被っている彼女はスマホの画面を見せてきた。そのスマホにはある動画が流れていて、それは身体に布を纏っていない女性二人が組み合わさって、一人は仰向けになり足を上げていてもう一人はその上がっている足の間に顔を突っ込んでいる動画だった。(最大限アレに配慮)足を上げている方の女性は可愛い声を出している。まあ前の時の彼女の方が可愛いけどね!
「うん。最近知ったばかりだから区別がつかなかったのかもしれないけど、本来はこういう動画はそういう間柄の関係でも見せないんだよ」
「えっ、そうなのか……? すまない……」
「えっ、かわいっ。別にいいけどかわいっ」
わかるだろうが、この娘は最近そっち系に目覚めたばかりで判別がまだついていない状態なのだ。年齢で言うと赤ちゃんである。赤ちゃんな彼女を想像したらすっごく興奮してきたやめとこう。ちなみに、"そっち系"というのは、性嗜好的な意味も、下系の意味も含んでいる。
「それで、これをしてほしいの?」
「ち、違うぞっ。話を聞いてたか? そういう気分じゃなくても謎に興奮してしまう人間の身体を憂いてたんだ」
「なーに、別にいつ興奮しても良くない? タイミングが重要なの?」
「そうじゃない。お前がいないときに興奮してしまったら……その………ひ、一人でするしかないじゃないか……」
……ん、聞き間違えか? いや違うな、彼女は自分で言った言葉の意味をたった今理解したらしい。顔がみるみるうちに赤くなってく。みなさーん! 見てください、これが私の彼女ですよー! いややっぱ見ちゃだめだ、これは私だけのものだから。
「や、やっぱ今のは無しにしてくれ! 聞かなかったことに!」
「私の耳はボイスレコーダーつきだから一度言ったことは忘れませーん! リピートアフターミー、"ひ、一人でするしk"」
「うおお口を閉じろっ!」
彼女に無理やり口を抑えられてしまった。モゴモゴと喋ってみるが、やはり聞こえる音はモゴモゴと何か言ってそうな声しか出ない。ので、
「……ん? なんだその手は。手話か? 手話だな? なになに……一人、で、する、ことしか、できな喋らなければいいって話じゃないが??」
真っ赤な彼女の顔ほど可愛い。ふぅ、いい仕事をした。
「……なんだそのやりきった顔は。何も成し遂げてないんだぞ? なんでそんな顔が今できるんだ……」
「可愛いからね」
無言で顔を逸らされてしまった。多分、彼女はきっとこれ以上論争しても不利なことしか起きない、と思って諦めたのだろう。またスマホを触り始めたので、私も適当にゲームをする。
ピンポーン!
「誰か来たね、ちょっと出てくるから待ってて」
玄関に出て、ドアについてた覗き窓から覗くと、
「はろはろー! 遊びに来ちゃった!」
と、外で言ってる見慣れた顔があった。だいぶ距離が近くてほとんど目しか見えなかったが、まあ多分私の知ってる人だろうし入れちゃえ。
「はろはろー! 遊びに来ちゃった!」
「はろはろー! 遊びに来ちゃった!」
「わお、わたしの真似? 意外と似てるね!」
外で言ってたことを中に入っても繰り返したので適当に真似をしてそのまま部屋の中に案内する。この子は彼女とも面識があるから、彼女はチラリとその姿を見るとまた目をスマホに戻した。
「ねぇ、ひどくなーい? わたしが来たんだからもう少しいい感じの対応してもよくなーい?」
「……なんなら今から授業を始めてもいいぞ? 必要だろう?」
「それはちょっと遠慮しておこうかなーって!」
二人がぎゃいぎゃいと騒ぎ回る。おかげでいっきに部屋が騒がしくなった。まあ騒がしいくらいが一番か、二人とも可愛いしね!
「ん、そうだ。さっきの話をしてみたら?」
「さっきの話ってなんのことだ?」
「ほら、生理反応によってしたいと思ってない時でもそういう気になるとかなんちゃらってやつ」
「耳にボイスレコーダーがついてるんじゃなかったのか?」
「その時はつけてなかったの。さっきはつけてたよ? "ひ」
「天丼はいい!」
「何の話さー? わたしがいないときにイチャイチャしてたってことしかわかんないよ?」
彼女がメガネをどこからか取り出してつけようとしたがあの子が防いだ……ええいわかりにくい、"彼女"が弥生で"あの子"が五十嵐だ! 私が詩歌!
「やよいちゃん、それはやめよ? 休みじゃん、休みの日まで勉強する必要はないじゃん」
「こんな言葉を知ってるか? "一日に一字を記さば、一年にして三百六十字を得、一夜一時を怠らば、百歳の間三万六千時を失う"」
「知ってるけどさぁ! 勉強って気分じゃないじゃん!」
「むぅ、しょうがない。……しかし、詩歌はどうかな?!」
「しかし詩歌って面白いフレーズだね」
私から期待した答えを得られなかったのか、不貞腐れた顔をして弥生ちゃんはソファに座り直した。さっきまでは寝っ転がっていたが、五十嵐ちゃんがうちに来たので配慮したのだろう流石弥生ちゃん可愛い優しい。
立っていた五十嵐ちゃんがソファに座ると、おもむろに毛布を被った。
「やよいちゃんの匂いがするねこの毛布。ってことはつまり、今のわたしは実質やよいちゃんを羽織ってるのと同義?!」
「そんなわけないが」
「えぇっ?! 私にもちょうだい!」
五十嵐ちゃんと一緒に毛布を被る。そんな私たちの様子をバカを見る目で見ている弥生ちゃんは諦めてソファを立った、多分飲み物かお菓子を取りに行ったのだろう。流石弥生ちゃん可愛い。
五十嵐ちゃんに毛布の中に引っ張り込まれて毛布の中で彼女と顔を見つめ合わす。顔良っ。
「んふー、聞いたよ詩歌ー? ついにやよいちゃんとシたんだねー?」
「なっ……?! どこからそれを?!」
「ふんっ、さぁて、誰かなぁ……? 二人の雰囲気がね、まさにそれなんだよね」
「それじゃあ"聞いた"じゃなくて、感じた、だねー」
「確かに〜」
「なんの話をしてたんだ?」
弥生ちゃんが戻ってきた。毛布から顔を出して覗いてみると、やはり弥生ちゃんはお盆の上にコップに入ったジュースとみんなでつまめるスナック菓子を持ってきていた。
お菓子に目がない五十嵐ちゃんは毛布から飛び出て机の上に置かれたスナック菓子に飛びついた。飛びが二個使われるくらい勢いが凄かったって話ね。
「んー? 私と弥生の快楽のための非生産的生産行為の初夜の話」
「お前恥ずかしくないの?」
「弥生ちゃんとの体験に恥ずかしいところは何にもありません」
私がそう言うと、弥生ちゃんは持ってきたお盆を机に立てて仕切りを作った。恥ずかしがってる弥生ちゃん可愛い! けどバランスすごいな。
「んぐんぐ……やっぱり、そうみたいだねー! おめでとー! 何か特別なもの食べよー! お寿司とか!」
「もしかしてそれ目当てで来た?」
「い、いや? そんなことないよ?」
私がそう言うと、五十嵐は露骨に私から目を逸らして口笛を吹き始めた。いや、正確に言うと吹けてはいないが、多分吹こうとしている。本当にどこから聞きつけたんだろう? まあいいか、可愛いし、この子普段からこういうところあるし、可愛いしいっかぁ!
「……可愛いからまぁいっかって顔してるな?」
「バレた?」
「バレるだろう」
「詩歌のそういうところ好きだなー」
そう言って、五十嵐ちゃんは私に抱きついてきた。弥生ちゃんとは違うベクトルで柔らかいしいい匂いで可愛いです! あぁでも弥生ちゃんを裏切れない。
「……なんで僕の方を見る? 行かんぞ?」
「うーん残念。"あの日"はあんなにも素直だっt」
「バッカやめろ!」
そう言って弥生ちゃんは飛び込んできたので、結局みんなで一つの毛布に集まることになった。ぬくぬくしてますね。
「結局突っ込んでしまったな……」
「……わたしにやよいちゃんが飛び込んでくるのは初めてじゃなーい?」
「よかったじゃないか。初めての機会、存分に味わうといい」
「やったー!」
五十嵐が私の上を乗り越えて弥生ちゃんに抱きついた。するとどうなるかわかるか? 私は今五十嵐と弥生ちゃんの間にいるわけだからね、バランスを崩して私が二人の下敷きになる。
「……幸せだけど流石に重いかな」
「おっと、ごめんごめん」
五十嵐は弥生ちゃんを抱っこしたまま私の上から離れた。……私の弥生ちゃんは?! とられつちまつた悲しみに。
「いや、普通に抱っこして持ってくのやめないか? ぬいぐるみじゃないんだぞ?」
「えっ、違ったの?!」
「違うが?」
二人でイチャイチャしちゃって、私は寂しいぞ? まあしょうがないからゲームでもしよ。独占はいけないからね、寡占にしよう。市場的には独占も寡占もしてはいけないんだけどね。
◆◆
「……ん。あっれ、二人はどこ行ったの? ゲームしてたから話を適当に流しちゃってたかな?」
「「僕(わたし)はここだよ」」
「ひょわぁ!?」
耳元で声がした。私、自分でこういうのもなんだけど耳が弱いからすっごい反応してしまうんだよね。割と飛び跳ねそうになったけど、二人に押さえられてたからか何も起きなかった。いやそれよりなんで私の背後にいるのかな? 後ろを見てみると、二人は何かニヤニヤとしていて、やばいかもしれないと思った。
「さっきね、ASMRって動画をね、やよいちゃんと見てたの。わたしもやよいちゃんも初めて見た……うーん、聞いたの方がいいかな? 聞いてね、ビックリしちゃったの! "うわぁ、耳の音だけでここまでくるなんて!"ってね!」
「キリスト教の聖書にはこうある、"受けるよりは、与える方が幸いである"と」
「……えーっと、つまり?」
「人間は悲しい生き物だよ。生理反応によって、そういう気分じゃない時でもそういう目にあってしまうと自然と興奮してしまう」
……気づいたら手が縄で結ばれてるなぁ。これはつまり何があっても私は抵抗できないってことだよなぁ。心なしか、弥生ちゃんの笑顔は黒い笑顔に見えるなぁ。
「わたしたちも幸せになりたいからね! 非常に利己的な理由で詩歌ちゃんにリアルASMRを味わわせてあげるよ!」
「……ネコとタチとがあったな。お前から聞いたのは、可愛い方がネコという情報だった」
そう耳元で呟く弥生ちゃんは、私がゲームしていた間に五十嵐ちゃんのもとで急成長したのかもしれない。それを聞いて身体が震える。弥生ちゃんの言葉の先はきっと聞かなくてもわかるだろう。とにかく言えることは、この後の私はなきまくったとだけ。
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