第23話 ゴム
ゴムを安定させるためには、イオウを混ぜて加熱する必要がある。
カグラは桜島に飛んで、イオウを集めた。
最初に作ったのは、牛車用のタイヤである。
中を中空にする事で、クッション性が攻城するし、音もたたなくなった。
台湾に植えたゴムの木は、3割ほど枯れてしまったが無事に定着してくれそうだ。
そして、当然ゴムのタイヤは多くの政府高官から要望が集まってくる。
「じゃあ、アルミで車輪を作ってから、こうやってゴムを盛って中に空気を閉じ込めてください。」
「それで、加熱してやればいいのね。」
「でも、ゴムの作り方を教えて欲しいって要望はどうします?」
「東に1カ月ほど船で進めばゴムの木があるから、そこで樹液をとってくるように言ってください。」
「ムリでしょ、それ。龍で飛んで行ったら、どれくらいなんですか?」
「1日半くらい飛び続ける必要がありますよ。」
「……どう考えてもムリよね。」
「そういう事です。元々、船を作るためにゴムが必要なんですよ。タイヤはオマケみたいなものなんです。だから、これ以上の希望は断ってください。」
「でも、お兄様からも頼まれてしまって……」
「じゃあ、それで終わりにしてください。」
「……私のところにも、ワコクから何件か……」
「1件だけにしてください。」
「もっと沢山とってこれないの?」
「台湾の東側に、少しゴムの木を植えましたから、それが増えたら産業として考えますよ。」
「えっ、運んできたの!」
「内緒ですよ。バレたら騒ぎになりそうですから。」
「どれくらいで増やせるの?」
「タネから育てた場合で8年くらいみたいです。」
「そうなると、10年くらいは必要になりそうね。」
「そうですね。やっぱり、船の方が優先ですからね。」
「それで、カグラは淡路島で船づくりに入るわけね。」
「そうですね。筑紫から台湾までの流通は最優先で作らないといけませんから。」
「じゃあ、もう少し暖かくなったら、私はエゾに出かけるわ。」
「私は、ここに残って要請に対応すればいいのね。」
「はい。鉄器の要望も増えてきましたから、大変でしょうけどお願いします。」
「任せてください。カグラさんばかりに頼っている訳にはいきませんからね。」
「そうだ。多分、そろそろ唐から井戸の情報が伝わってくると思います。」
「井戸?」
「地面を深く掘ると、水が出てくる場所があるんですよ。」
「へえ、そうなんだ。」
「だから、水場の遠いところに井戸を掘って、生活用水を確保するっていう技術なんですよ、」
「唐から伝わる前に、知ってるのねカグラちゃんは。」
「実際に掘ってみましょうか。」
カグラは魔力で地中の様子を探った。
「この辺がよさそうですね。」
「そうね。6mくらい下よね。イッチに掘らせる?」
「いえ。土を圧縮して穴を開けましょう。」
カグラは魔力を使って直径1.5mの穴を開け、アルミで高さ1mの囲いを作った。
そこに櫓を組んで屋根をつけ、滑車を取り付けて縄を通す。
縄の先に桶をくくりつけて、反対側の縄の先に回し車と取っ手を取り付けて、歯車を抑えるストッパーも敷設した。
「このストッパーを外すと、桶が下に降りていきますから水面近くになったら、勢いをつけて落とします。」
「なぜなの?」
「桶の向きを崩して水を入れるためです。水が入れば重さで分かりますから、入ったと感じたらこの取っ手を回して縄を引きます。」
ストッパーがカタカタを音を立てて、やがて桶があがってくる。
「すごいわ。本当に水よ。」
「賄いの人たちに教えてあげれば、喜んで使ってくれますわ。」
「もう一つあるんだ。」
「何が?」
「井戸から簡単に水を汲み上げる方法……、あっ!」
水という単語から、カグラはある事を思い出した。
「禊……疫病……手水(ちょうず)……これは、できるだけ早く広めないと……」
「どうしたの?」
「……私たち巫女が神事を行う時には、身を清めますよね。」
「そうね。神宮でも神事の前には、水場で禊(みそぎ)を行っていたわ。」
「寺や神社でも、参拝するときにやってもらいますよね。」
「手水ね。」
「手水は口をすすぐだけですが、うがいを定着させましょう。」
「うがい?どういう事?」
「建前は、神前に詣でる時と同じように、穢れを祓うという事にするんですが、本当の目的は病気の予防です。」
「病気?」
「これから、外国との行き来が増えてきますが、それと一緒に色々な病気が入ってきます。」
「そういえば、50年くらい前にも裳瘡(もがさ)という病が南から広まったと聞いているわ。」
「そうやって、人から人へうつる病は、目に見えない毒が原因なんです。」
カグラは二人に理解してもらうために”毒”と表現した。
「そういう毒は、身体の中で増えて行って、病にかかった人の触ったものや話した時のツバで広がってしまうんですよ。」
「そんな……」
カグラは井戸から汲み上げた水で、ガラガラとうがいをしてみせた。
「あーっ、と声を出しながらうがいする事で、ノドの奥まで洗えるんです。手とノドについた毒を洗い流す事で、病になるのを防げるんですよ。だから、水をもっと手軽に使えるようにしないと。」
「でも、普通の人が井戸を掘るのって大変そうよね。」
「もう少しだけ簡単な方法もあるんですよ。」
カグラたちは天皇の居住する御所に行き、了解を得たうえで地下の水脈を探った。
「ここにしましょう。」
そう言ってカグラは地面に5cm程の穴をあけた。
そこに、同じ幅のアルミ管を通す。
そのうえに、ステンレスで手動のポンプを汲み上げる。
手動ポンプの構造は簡単なものだ。
弁と水玉部分にゴムを使って密閉できるようにすればいい。
数回試行錯誤して、手動ポンプを組み上げる。
「これで、このハンドルを上下させれば水を組み上げる事ができます。」
カグラは自分の手でハンドルを何度も操作する。
「何だ?何も出てこんぞ。」
「今、水を吸い上げているんです。焦らないでください。」
7度目で口の先からチョロチョロと流れ出し、8回目でそれなりの水が出た。
「おおっ!」
周囲から感嘆の声があがる。
「6才のボクでも使える道具です。これを大量に作って、手洗いとうがいを流行らせましょう。」
「先ほど言っておった、病を予防するためじゃな。」
「そういう事です。海外との接触が想定される台湾や筑紫から流行らせていきましょう。」
「お前たち巫女には苦労をかけるな。」
「民が幸せに暮らせる国を作るためです。陛下は役人が増長しないよう、平等な社会を作ってください。」
「無論だ。」
「それと、寺がボクたちに嫌がらせをしてきていますが、余計な関与はしないでください。」
「それでいいのか?」
「神仏習合によって、寺もボクたちを認めないわけにいかず、かといって受け入れてしまうと仏の立場が脅かされてしまう。それに、寺を庇護してきた藤原家が壊滅したいま、どこを取り込もうか必至なのでしょう。」
「確かに、思想としての仏教は良いのだが、力は持たぬからな。」
「まあ、これ以上勢力を広げさせない事です。」
カグラはポンプの構造をサクラとククリに教えて、二人にシリンダー部分を増設してもらいながら、淡路島へ飛んだ。
淡路島では、ヨットを真似た木造船が何隻も走り回っていた。
【あとがき】
さて、寺との対立をどう描いていこうか……
レンジで作る、油を使わないポップコーンですが、塩味は順調です。
600w3分で、あとは、10秒ずつ追加で破裂しなくなるまで続けます。
今日はキャラメル味に挑戦してみましょう。
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