修行開始~突然のキスを添えて~
「ご主人様。泣き止みましたか?」
「すまないトラン。思いっきり泣いてしまって」
涙で赤く腫れた目を軽くこする。
「フフフ。いいですよ。じゃあご主人様早速修行を始めましょうか」
「修行・・・分かった頼むトラン、いや師匠」
「はい。頼まれました。それじゃあ一旦お外に出ましょうか」
「分かった」
家から出るのを少し名残惜しいと思いながらも外に出る。
「さて、まずご主人様は天才の中の天才の中の天才です。ですが、その才能は特定の分野に偏っています」
「特定の分野?」
「はいそうです。具体的には闇属性の魔法の才能と敵と戦うことを想定した実践的な武術全般です」
「闇属性ってあの不吉だと恐れられている闇属性の事。というか人間で闇属性を使うためには悪魔や魔族と契約をする必要があるんじゃ」
授業で習った知識の一つだ。
「そういう場合もありますが、ご主人様の場合はそんな事をしなくても問題ありません。むしろご主人様は悪魔や魔族を使役する方です。
という訳で魔力回路を目覚めさせますから耐えてくださいね。少し痛いですよ」
「え?」
有無も言わさずトランが僕にキスをした。
一瞬赤面するが、その瞬間訪れるのは今まで感じたことのない激痛。
身体が根本から作り替わるような痛み。
余りの痛みで声も出ず発狂して死んでしまいそうな痛み。
痛み痛み痛み。
「ご主人様。耐えて耐えて耐えてください」
トランの声が聞こえる。
ああ。そうだ。耐えて見せよう。僕は耐えるんだ。
それに今まで僕がされてきた仕打ちを考えればこの程度・・・
「全然余裕だぁぁぁぁぁぁ。ハア、ハア、ハア、ハア、痛みが消えた」
「よく頑張りましたご主人様。これで今ご主人様の魔力回路が完全開放されました」
僕を褒めた後一呼吸おいてトランが地面に頭をつけて僕に謝罪する。
「突然魔力回路を解放した事は心よりお詫び申し上げます。しかし、説明をして余計に怖がらせるよりもこっちの方がご主人様もいいと勝手ながら判断をさせていただきました」
「それはそうだな。そもそも僕のことを考えての行動だ。何も怒らないから顔をあげてくれ」
今日1日訳の分からないことも多いけどトランが僕の為を想って行動をしてくれているのは疑いようのない事実だ。
「ありがとうございます。ご主人様」
「それで魔力回路が開いたって言ってたけど、これで僕は闇魔法が使えるの?」
「はい。もちろんです。試しに闇の弾が飛ぶ様子を想像して闇弾と唱えてみてください」
「こう?闇弾」
バン
僕の指から指一本ぶんくらいの小さな闇の塊が物凄い勢いで射出される。
その闇の塊は木々に当たると丸く穴をあけてそのまま数十本の木を貫き最後は見えなくなる距離まで飛んでいった。
「今のが闇弾・・・僕、今魔法をそれも攻撃魔法を使ったってこと。ハハハ。ハハハ。ハハハハハハ。散々散々ゴースと馬鹿にされて才能がないと罵られた僕がこんな威力のある魔法を一回で成功させるなんて。ハハハハハハ。ざまぁみろ貴族共。僕は凄いだんぞ。ハハハ。ありがとうありがとうトラン。本当にありがとう」
「いいえ。これはご主人様の力です。さあ、まだまだ特訓は続きますよ。今のご主人様が扱える魔法を教えていきますね」
「はい。お願いします。ト、師匠」
―――――――――――
カエルロッド王国歴473年6月13日
幼少期から平民としてろくな教育を受けなかった結果、魔力回路が詰まっていたタイトの魔力回路が修復され、今まで知らなかった闇魔法の才能を知り始めて闇魔法を行使した。
タイトは理解していないが闇弾という初級魔法は本来の威力としは木に当たって少し傷をつける程度、速度もゆっくりである。
それを超スピードで何十を超える木々を貫通させるスピードと威力に持っていったのは圧倒的な魔力量と才能があってのこと。
初級魔法でありながら上級魔法にすら匹敵する力を見せたタイトはトランというこの世界においては最高の闇魔法の使い手の指導の元更なる闇魔法を習得していく。
修行1日目にして上級魔法使いに迫る力を手に入れたタイトはこれから更に強くなっていく。
そして行く行くは・・・その結末は神のみぞ知る。
―――――――――――
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