第2話

「なんだよ、誰この女?」

「やべ、服ボロボロじゃん。」

「誰かにヤラれたんじゃねぇ?」





次々に私の頭上で繰り広げられる会話。

どれも私が望んでいたものじゃない。


汗が頬を伝って、涙のように床に落ちた。










「……アンタ、どうしたの?」






ゆっくりと顔を上げると、私の前に影ができる。

うまく、声を出せるだろうか。




ちゃんと、話せるだろうか。


長い距離を駆けてきたせいか、ただの緊張か。

よくわからないけれど、呂律がうまく回ればと、なんとか心を落ち着かせる。






「あ、……ハッ……わたし……っ」






瞳を潤ませたまま、その影を見上げると、






「………わた、し…」






私を見下ろすやけに冷静な瞳とぶつかった。


薄暗い店内に、ぼんやりと浮かぶシルエット。




それなりに長身だけど、細身。


サラサラの茶髪で、長めの髪。






………この人は、






「アンタ、誰かにヤラレたの。」





ゆっくりと私の前にしゃがんだ男は、私の顔を覗き込む。


まるで品定めをするようにジロジロと全身を見られ、思わず自分の身体を自分で抱きしめた。

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