第22話:新たな研究所
こうして、和也の新たな挑戦が始まった。「調和調合研究所」の設立準備が進み、研究チームのメンバー選定も行われた。
「佐藤さん、研究メンバーの候補リストです」
綾小路がタブレットを渡した。そこには田中や小林の名前もあった。
「彼らも...?」
「ええ。あなたと一緒に働きたいと希望しています」
和也は嬉しく思った。信頼できる仲間と共に、新たな挑戦ができる。
「それと、もう一人...」
綾小路は少し迷うように言った。
「調合師ギルドのメンバーだった松本さんが、協力を申し出ています」
「松本さん?」
「ええ。彼女は逮捕されましたが、積極的に情報提供をしてくれました。その功績と専門知識を買われ、監視付きでの研究参加が許可されています」
和也は考えた。松本は純粋な研究者だった。リーダーの狂信的な面に惹かれたというより、調合の可能性に魅了されていたのだろう。
「彼女の知識は貴重です。チームに迎え入れましょう」
研究所の準備が整い、いよいよ開所式の日を迎えた。東京タワーの近くに建てられた新しい研究所は、最新の設備が整っていた。
「本日、ダンジョンギルド公式研究機関『調和調合研究所』の開所式を執り行います」
山本の挨拶で式典が始まった。
「所長の佐藤和也より、一言ご挨拶をお願いします」
和也は緊張しながらも、壇上に立った。
「調合師として、私は常に可能性を追求してきました。ダンジョンの出現は脅威でしたが、同時に新たな知識と技術をもたらしました」
彼は集まった研究者や関係者を見渡した。
「我々の目標は『調和』です。ダンジョンの力と人間の知恵を調和させ、安全かつ有益な技術を開発すること。それが『調和調合』の理念です」
拍手が沸き起こる中、和也は決意を新たにした。
研究所の活動が始まり、和也たちは様々なプロジェクトに取り組んだ。「赤い薬」の安全版の開発、ダンジョン素材の新たな活用法の研究、そして何より「魔力調和技術」の確立。
特に注目されたのは、和也が中心となって開発した「調和ポーション」だった。これは一時的にダンジョンの魔力を安全に取り込み、能力を向上させる薬品だ。「赤い薬」と異なり、副作用がほとんどなく、使用後も体に悪影響を残さない。
「これは画期的な成果です」
山本は最初の臨床試験の結果を見て感嘆した。
「ダンジョン探索の安全性が飛躍的に向上するでしょう」
「ありがとうございます」
和也は謙虚に答えた。
「これも、チーム全員の努力の成果です」
研究が進む中、和也はひとつの謎に取り組んでいた。調合師ギルドが入手していたという「ダンジョンコア」の断片。それはどこにあるのか、そして本当に存在するのか。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます