第9話  宝の地図

「たぶん魔法ランドじゃないか。何て書かれてる?」と僕は後ろからのぞきこんで言った。

「解読できない。見たこともない文字だ」

 と、突然、「さあ、勇気ある子供たちよ」という甲高い声が聞こえた。かごの中のオウムがしゃべっていた。「伝説の空賊クーク船長の隠した宝物を探しに冒険の旅に出るんだ」

 僕らは思わず顔を見合わせた。

「お前、今、しゃべったな」

 そう言って、セブがかごのオウムを指でつついた。「こいつもロボットかな」

「魔法ランドにいるものは、動物も人間も、モンスターも全てロボットだ」とパズルは答えると、地図を船長のような顔付で眺め直した。それから「おそらく、この地図は宝の隠し場所を示している」と言って、地図をぴしゃりと叩いた。

「じゃあ、これは宝探しアトラクションってこと?」とセブが部屋の中を見回した。

「そうさ。魔法ランドの最も大きな売り物の一つだ。なにしろ、この宝物は数億は下らない本物の宝物だという触れ込みだからな。もちろん、アトラクションに参加して見つけた人には本当にその宝物が渡される」

「誰か見つけた人はいるの?」と僕は訊ねた。

「いいや、結局、魔法ランドが営業している間に宝物を見つけた客はいない。何しろクリアするのがとても難しいんだ。国内最高の難易度だ。でなきゃ、本物のお宝なんかくれないさ」とパズルが首をふった。

「もしかして、その宝物、まだ魔法ランドのどこかに隠されてるとか?」とセブが目を輝かせて言った。

「わからない。あったとしてもそう簡単には見つからないだろ」とパズルはタメ息交じりに言った。

 と、このとき、床がグラリと揺れた。鳥かごが倒れて、床に落ちた。オウムがかごから飛び出し、「勇者たちよ。さあ、冒険の始まりだ」と鳴きながら、船室の外へと消えていった。

 窓の外を眺めたセブが「船が上昇している」と叫んだ。

 僕らは、甲板へとかけ出ていった。船縁から下を眺めると、船が湖面からどんどんと離れていく。僕らの乗ってきた小舟が笹船のように見えた。

「飛んでいる」とパズルが空を眺めながら興奮して言った。

 サーカスの天幕や空賊の港が眼下に一望にできた。その先のレストランや駐車場も見えてきた。そして、彼方には魔法ランドの外に広がる空と雲の景色がはてしなく続いていた。魔法ランドはまるで大海原に浮かぶ孤島のようだった。

「あっ、あれ」とセブが広場の方を指した。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る