第39話 人間の証明

「うちの業界でもね、

調べごとには欠かせなくなっているのよ、AIが。」

「でもね、でたらめな回答が、結構な割合で、

しかも、さも最もらしく、答えてくれちゃうから、油断ならない。」

「だからね、私は、答えを尋ねるのではなく、

答えを得るための、最適な方法を尋ねることにしているの。」


「それは、いいね。」


「ねぇ、あなたが、人間、坂本さかもと まことであることは、

どうしたら証明できるの?」


「、、、多くの方法が考えられるが、

今できる、一番現実的なことは、思い出を確認することだね。

付き合いが長い、えっちゃんと俺だから、

話を突き合わせて、矛盾が出てくるなら、俺は人間では無いかもしれない。」


「でも、あなたは、まことの日記やブログも学習したんでしょう?」


「すべての思い出が、日記やブログで文章化されているとは思えない。」

「きっと、俺とえっちゃんだけの秘密の思い出があるよ。」


「ふふふっ。恥ずかしい話が出てきそうね。

あっ!でも、例の帽子で頭の中、覗かれていたのでしょう?

みゆきさんから聞いたわよ。」


「あの帽子は脳内から情報を拾っていたのだが、

パソコンでいうなら、『メモリ』から拾っていただけで、

『ストレージ』つまりハードディスクやSSDに

収納された情報にはアクセスできていない。

つまりその時、考えていることしか把握できないから、

記憶にあっても、その時、思っていない情報は、抜き取れないみたいだ。




【騙されるな。

今は帽子に変わる最新のアクセス端末が体内に仕組まれている。】




「えっ。何か言った?まこと?」


「え!何?えっちゃん?」


「あ!ごめん。何か聞こえた気がした。」

「、、、じゃあ、何にしようかな?」

越子えつこは、質問を考えながら、最後の一口を飲み干す。

空のグラスを持ち上げると、

目の前にいた笑顔のバーテンダーと目が合った。

そして、時間の経過に気がついた。


「あ!ごめんなさい、もうこんな時間ね。」


笑顔で頷く、バーテンダー。


「ぶぶ漬けが出てきそう。帰ります。」

まこと、私の部屋で続きするわよ。」


「持ち帰りされちゃうよ、マスター!」


「いいから来なさい。」


誰もが、なぜ別れたのだろう?と不思議に思う、

熟年の元夫婦であった。

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